「あの交差点、前は歩道橋があったよね?」。最近、そんな会話が増えています。
国土交通省の道路統計年報によると、全国には1万を超える横断歩道橋があります。こうした歩道橋の多くは、1960~70年代の高度経済成長期に集中的に整備されたもので、いまから半世紀以上前に造られたものが少なくありません。
なぜ当時、全国にこれだけの歩道橋が作られたのでしょうか。
背景にあるのは、いわゆる「交通戦争」と呼ばれた時代です。高度経済成長とモータリゼーションでクルマが急速に普及した結果、1970(昭和45)年には交通事故による死者数が年間1万6765人と過去最多を記録。歩行者と自動車を立体的に分けて事故を防ぐ交通安全対策のひとつとして、駅前や通学路の交差点などに歩道橋が次々と架けられていったのです。
ところがそれから半世紀。交通事故対策として整備された歩道橋のなかには、いま静かに役目を終えつつあるものが増えています。東京都が管理する歩道橋を見ても、その多くが当時の産物です。築50年を超える施設が増えるなか、補修や点検などの維持管理コストは自治体にとって大きな負担になっています。
京都市は管理する歩道橋40橋のうち18橋を撤去対象に選定(2015年時点)するなど、全国の自治体で同様の見直しが進行中です。国土交通省も、道路施設の維持管理を効率化する考え方のなかで、必要に応じて施設の集約や撤去を検討することを示しています。
もう1つ、見逃せないのがバリアフリーの観点です。
老朽化+バリアフリーで撤去進む 一方で生まれ変わる例も「階段を上って下りるだけ」のシンプルな構造は、健康な大人にはなんでもありませんが、ベビーカーを押す人、車椅子を使う人、足腰の弱った高齢者にとっては、それ自体が大きな「バリア」になります。少子高齢化やバリアフリーの考え方が広がるなか、こうした人たちが安心して横断できるかどうかは、いまや街づくりの大きな評価軸になっています。
近くに横断歩道を確保でき、利用者が少ない場所では、歩道橋を残すよりも地上横断に切り替えたほうが、より多くの人にとって使いやすいと判断されるようになりました。
とはいえ、すべての歩道橋が消えるわけではありません。東京都の事例では、撤去の判断にあたって「近くに横断歩道を設置できるか」「利用者が少ないか」「通学路に指定されていないか」などの条件が確認されています。逆にいえば、通学路として使われていたり、交通量が多く地上横断が難しかったりする場所では、いまも歩道橋が重要な役割を担っています。
さらに、エレベーター付きでバリアフリー化を施した歩道橋や、静岡県吉田町のように津波避難施設を兼ねた歩道橋など、新しい役割を背負って使われる例もあります。「昭和の歩道橋」の単純な復活ではなく、街と時代に合わせた形へと進化しているのです。
クルマ優先の時代に歩行者を守ってきた構造物は、いまバリアフリーや維持管理の視点から見直され、「なくなる」のではなく、「必要な場所に残り、役割を変えていく」と言えるでしょう。

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