雨の強さに応じて、ワイパーレバーを「LO」や「HI」に切り替えて使っているドライバーは多いでしょう。しかし、その手前にある「INT」、いわゆる間欠ワイパーの存在感は、意外と地味かもしれません。
INTとは「Intermittent(インターミッテント)」の略で、日本語で「間欠=断続的」を意味します。レバーをINTに合わせると、ワイパーは数秒に1回というゆっくりとしたペースで動き、小雨や霧雨のときに重宝する機能です。
ワイパーに「休み」を入れる発想には、発明の経緯が関係しています。
発明したのは、アメリカのエンジニアで教育者でもあったロバート・カーンズ氏です。カーンズ氏は1964年に間欠ワイパーに関する特許を出願しました。
興味深いのは、その発想のきっかけとされるエピソードです。カーンズ氏は1953年の新婚旅行の夜、シャンパンの栓(コルク)が左目に当たり、左目の視力をほぼ失うという事故に遭ったと伝えられています。その後、雨の日に運転していて、ワイパーが絶え間なく動く様子が傷ついた目に煩わしく感じられたことから、人間の目が数秒おきにまばたきすることに着目した発想が生まれたとされています。
目は乾けばまばたきし、必要なときだけ閉じる…その“理にかなった動き”を機械で再現しようとしたわけです。
その後、1969年にフォードの一部車種(マーキュリー系列)で採用された後、他メーカーにも広がっていきました。なお、カーンズ氏はその後、自身の特許がメーカーに無断で使われたとして長期にわたる訴訟を起こし、フォードやクライスラーから賠償を勝ち取りました。この実話は2008年に映画「フラッシュ・オブ・ジーニアス」として公開されています。
ただ、この「休みを入れる」という発想、実は雨の日だけでなく、思わぬ場面でクルマを救ってくれる可能性があります。
雪の日にこそ効く!? モーターを"焼き切れ"から守る役割ワイパーは見た目こそシンプルですが、ガラス面のゴムを往復させるためにモーターが回転運動を繰り返しており、それなりの負荷がかかる装置です。
フロントガラスにワイパーが凍りついたまま、あるいは重い湿雪が積もったままワイパーを動かそうとすると、モーターに過大な負荷がかかります。最悪の場合、モーターそのものが焼き付いて動かなくなる、という重大な故障につながるのです。
雪の日、フロントガラスの雪をワイパーで払おうとして「カチカチ」と異音を立てた経験のある方もいるでしょう。あれは、モーターに大きな負荷がかかっている状態と考えられます。
ここで参考になるのが、INTモードのように「間隔を空けて動かす」という使い方です。連続でモーターを回し続けるのではなく、1往復ごとに数秒の小休止を挟むことで、モーター自体の温度上昇を抑え、過熱や焼き付きのリスクを下げる効果が期待できます。
もちろん、ガラスがガッチリ凍結している状態でINTを使えば安心、というわけではありません。凍結時はそもそもワイパーを動かさず、デフロスターや解氷スプレーで氷を溶かしてから使うのが鉄則です。
ただ、湿った雪がうっすらと積もる程度の状況や、シャーベット状の雪を払いたいときなどは、いきなり「LO」や「HI」で連続運転させるよりも、INTでゆっくり様子を見ながら動かすほうが、モーターへの負担はぐっと軽くなります。
実際、雪国向けの「スノーワイパー」は、雪や氷への対応を考えた構造になっている製品もあります。
「必要なときだけ動く」という考え方は、雨の日の視界確保だけでなく、雪の日にワイパーを無理に動かさないという基本にもつながっています。

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