なぜレオナルドがトルコのUASを?

 イタリアの防衛大手レオナルドが、2026年7月20日から24日までイギリスのファンボロー飛行場で開催されたファンボロー・エアショーのブースで、UAS(無人航空機システム)「アストアレバンテ」を公開しました。

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 アストアレバンテは、トルコのバイカルが開発し、ウクライナ戦争で大きな戦果を挙げたUAS「バイラクタルTB2」と艦載機型「バイラクタルTB3」と一見する限り区別がつきません。

筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は一瞬、「なぜバイカルのUASが?」と思ってしまったほどです。

じつはレオナルドとバイカルは、2025年にUASの共同開発などを手がける合弁企業「LBAシステムズ」の設立で合意しており、アストアレバンテはバイラクタルTB3をベースに開発された、イタリア海軍向けのUASなのだそうです。

F-35を補完するイタリア海軍の“切り札”

 このアストアレバンテ開発の背景に、イタリア海軍の空母「カブール」がありそうです。というのも、イタリア海軍は2026年3月に、バイラクタルTB3を導入して「カブール」で運用する方針を表明していました。

「カブール」はイギリス海軍のクイーン・エリザベス級空母などと同様、最新の第6世代戦闘機であるF-35Bの運用能力を備えた空母です。

 イタリアは当初、海軍と空軍合わせて62機以上のF-35Bの導入を計画していましたが、イタリアの財政状況やF-35の価格高騰により、発注数は段階的に削減され、2026年4月の時点では空軍と海軍あわせて30機程度の導入が見込まれています。

「カブール」には最大12機のF-35Bが搭載できます。同艦がドッグ入りなどで活動できない場合、臨時にF-35Bを運用する空母としての役割を果たす強襲揚陸艦「トリエステ」も、「カブール」よりやや少ない程度のF-35Bの運用が可能できますが、修理などで飛べない機体が生じることを考えれば、30機程度という機数はやや心もとないと言えます。

 また、F-35Bのウェポンベイ(胴体内兵器倉)には、航空自衛隊も導入した長射程対艦ミサイル「JSM」を搭載することができません。このため現時点ではF-35Bに搭載可能な長射程兵器はありません。

 そこで注目されたのが、アストラレバンテの原型機であるバイラクタルTB3でした。

さらに機能をモリモリにしたイタリア仕様のバイラクタル?

 バイラクタルTB3は、最大射程55kmの超音速空対地ミサイル「UAV-122」の発射試験にも成功しています。

JSM(最大射程280km以上)には及びませんが、イタリア海軍が望むのであれば、バイラクタルTB3にUAV-122を組み合わせることで、艦上機から運用する長射程攻撃兵器を手にすることができると考えられます。

 ただ、イタリア海軍はバイラクタルTB3をそのまま導入するつもりはないようで、アストラレバンテには電気光学/赤外線目標ターレット「LEOSS-T」、360度監視レーダー「ガビアノT-80UL」、多機能AESA監視レーダー「オスプレイ20/30」など、レオナルドが開発した情報収集器材が満載されていました。

 元々レオナルドは情報収集機器や電子機器を得意としており、LBAシステムズにとって1作目のUASであるアストラレバンテを、バイカルとレオナルドの「良いとこ取り」で開発するのは、合理的だと筆者は思います。

日本の自衛隊にも影響大か!?

 実のところアストラレバンテの開発手法、さらに言えばLBAシステムズという企業そのものが、日本の防衛にも大きく関わってくると筆者は思います。

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2025年5月に千葉市で開催された防衛総合イベント「DSEI2025」で展示されたM-346の最新仕様「ブロック20」のシミュレーター(竹内 修撮影)

 防衛省・陸上自衛隊はOH-1観測ヘリコプターの後継機にUASを充てる方針で、現在機種選定を進めており、バイラクタルTB2に衛星通信機能を追加した「バイラクタルTB2S」が、その有力候補となっています。

 バイラクタルTB2Sの実績は申し分ないのですが、防衛省・自衛隊はトルコ製の情報収集機器やミッションシステムに馴染みがなく、その点がネックになると筆者は思っていました。しかし陸上自衛隊への提案は、実績のあるバイラクタルTB2Sに、レオナルド製の情報収集機器やミッションシステムなどを組み合わせたもので、提案は陸上自衛隊からも高く評価されていると聞き及んでいます。

 他方、LBAシステムズは2025年6月に、レオナルドのジェット練習/軽戦闘機「M-346」から、バイカルが開発を進めているジェット推進の戦闘用UAS「クズルエルマ」の制御試験に成功しています。このM-346は航空自衛隊のT-4練習機後継の有力候補にもなっています。

「トルコの装備品いかがですか?」の援軍になるイタリア

 航空自衛隊では中国軍機などに対する戦闘機の緊急発進が増加しています。これに対処するため、UASや哨戒機などの脅威度の低い対象への緊急発進に、UASを使用できないか調査を開始しています。

 航空自衛隊は当面、海上自衛隊が導入する「シーガーディアン」を借用して調査を行うようですが、本格導入になった場合、緊急発進に適したジェット推進のUASを導入する可能性が高く、バイカルのクズルエルマも候補になり得るでしょう。

ひいては、それを制御するM-346もT-4の後継機とするメリットになり得ます。

 日本とトルコは2026年5月に、両国間の防衛装備品分野での協力を加速させることを確認する文書を取り交わしており、両国の防衛協力関係は強化されていますが、前出のとおり自衛隊はトルコ製の防衛装備品を導入したことはなく、なじみ深いと言えないのも事実です。

 その一方でレオナルドの製品はヘリコプターを中心に自衛隊や民間で広く使用されており、近年では日本、イギリス、イタリアの新戦闘機開発プロジェクト「GCAP」の開発でもレオナルドが大きな役割を果たしています。

 バイカル、さらに言えばLBAシステムズが日本とレオナルドの緊密な関係を全面に押し出してくるとすれば、レオナルドはバイカルにとって、セールスの強力な「援軍」になるのかもしれません。

【そっくりだ!!】自衛隊も選定候補にしているトルコの「バイラクタルTB3」(写真で見る)

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