ん、空飛ぶクルマ? 違います!

 NASA(アメリカ航空宇宙局)やアメリカのエンジンメーカー、GEエアロスペースなどが共同開発したメガワット級ハイブリッド電気エンジンを搭載した実験航空機は、左右のエンジンが異なる特徴的な姿をしています。その片方は、「革新的」な技術が用いられたものです。

その飛びっぷりはどのようなものだったのでしょうか。

右エンジンだけゴツい! 旅客機ベースの“静かなる魔改造機”の...の画像はこちら >>

 実験機がデモ飛行を行ったのは、2026年7月にイギリスで開かれたファンボロー航空ショーでのことでした。ショーでは最近、eVTOL(空飛ぶクルマ)もデモ飛行に参加します。

 そのeVTOLのデモ飛行が終わり、次に滑走路の遠くに見えた機体は、離陸滑走を始めてもまったくエンジン音が聞こえてきません。離陸して目の前を通り過ぎていく姿を見て、初めてそれが往年のJAL(日本航空)グループでも採用されていたターボプロップ機「サーブ340B」をベースにした機体だと気づいたほどでした。

 上空で旋回を繰り返す姿は、かつて日本の地方空港でも見られたサーブ340Bそのものです。しかし、目の前を通過しても飛行音は格段に小さく、空気を切るプロペラの「ブーン」という音がわずかに聞こえるだけ。いかつい外観と大人しい飛行音のギャップは、懐かしさ以上に新しいエンジンへの驚きを感じさせるものでした。

 この実験機は、GEエアロスペースやNASA、電動推進システムを扱うアメリカのベータ・テクロジーズが共同開発したハイブリッド電気エンジンを搭載しています。

ただ静かなだけじゃない! 大西洋も横断

 改造後の実験機は左右でエンジンカバーの形が違い、どちらにハイブリッドエンジンが載せられているか一目瞭然です。ハイブリッドエンジンが付けられているのは右側。元々搭載されている左のCT7エンジンは、カバー下側に大小の空気流入口があるだけのすっきりした姿をしています。

 対する右のカバーは、下部の空気流入口が1つになった反面、左右と上部にも大きな流入口が取り付けられ、ゴツゴツ感があります。このいかにも“魔改造”されたように見える空気流入口は、海外報道によると「ベンチレーション(換気)」のためとされ、電動モーターなどが加えられたハイブリッドエンジンの排熱を効率よく行うために増やされたと考えられます。

 このエンジンは静かなだけでなく、その性能も注目されています。実験では、一般のジェット旅客機が飛ぶのとほぼ同じ高度3万フィート(約9000m)での飛行に成功し、NASAなどは「革新的な技術を実証した」とアピールしています。

 さらに、アメリカからイギリスへの大西洋横断も、中継地を経由しつつ達成しました。このフライトは、ハイブリッド電気エンジンの耐久性を示すとともに、3万フィートから降下する間にバッテリーを充電しながら飛行できることも示しました。

 サーブ340Bのようなターボプロップ機の巡航高度は、一般に2万から2万7000フィート(約6000~8000m)とされています。このため、ハイブリッド電気エンジンが実用化されても、即座に3万フィートを飛行するわけではありません。しかし、それだけ気圧や気温の低い高々度でも飛行できたという証明は、未来のエンジン実用化へ向けた大きな前進といえるでしょう。

【写真】えっ…これが「プロペラ旅客機に取り付けられた異端のエンジン」ドアップです

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