施主(オーナー)を守らないと大変なことになる――。
 アエラホーム(株)(TSRコード:340124466、千代田区)が7月16日に民事再生法の適用を申請する数カ月前、こんな言葉を複数で聞いた。

もともと金融支援で経営が維持されていたが、冒頭の「呟き」以降、再生実務家や金融機関、コンサルタントなど「倒産村」の面々を巻き込んだプロジェクトに発展する。最終的に、金融や商取引債権は再生債権となるものの、施主のマイホームの夢は繋がれた。
 最盛期は年商200億円を超えるハウスメーカーに何が起き、法的申請の大義は何だったのか。東京商工リサーチ(TSR)が追った。


 アエラホームは1963年、山梨県甲斐市で創業した。当初、大手注文住宅のFC会社として実績を重ね、独立後に「アエラホーム」ブランドを全国展開した。東北から九州まで営業エリアを広げ、知名度の向上とともに事業は拡大した。
 2006年3月期に126億1,738万円だった売上高は、2013年3月期にピークとなる210億2,250万円に達した。ただ、最終利益は2億円に届かない状況が続き、純資産合計は2010年3月期の10億5,534万円(総資産80億1,040万円)を最後に10億円未満が続いた。

東日本大震災の影響

 業容拡大が続くアエラホームを東日本大震災が襲った。資材納入の遅れなどから期中の引き渡しができず、2011年3月期は売上高156億2,579万円に対し、4億5,658万円の最終赤字に沈んだ。内部留保の半分近くを喪失し、財務内容が大きく後退した。
 次の試練は2014年3月期だった。

同年4月1日の5%→8%への消費税引き上げを前に、駆け込み需要を狙い営業を強化したが、販売は伸び悩んだ。2014年3月期は売上高194億4,629万円に対し、営業費用や資材価格の高騰、人件費上昇などが重なり、6億7,560万円の最終赤字を計上、財務は債務超過寸前まで悪化した。
 
 2013年4月、創業者の息子で支社長などを歴任した人物が代表取締役社長へ就任した。だが、業績低迷から抜け出せないまま、2016年4月に会長に引いていた創業者が再び社長に復帰した。
 2015年3月期は、モデルルームや店舗網の縮小、本社移転などを進め、2期ぶりの最終黒字(1億2,546万円)を計上した。その後もコスト削減を進めたが、2018年に「事業承継を視野に入れた業務の適正を確保する」(アエラホームの担当者)として社内体制の整備を敢行した。関係者によると、長期未収金の処理などに不適切な状態が見つかったため、2016年3月期~2018年3月期までの決算を修正したという。
 決算期を変更した2019年5月期は売上高125億5,234万円に落ち込んだが、5,028万円の最終黒字を確保。しかし、コロナ禍はモデルルームへの来客数が減少し、2021年5月期の売上高は103億4,053万円と100億円割れが目前にまで落ち込んだ。コロナ関連の資金繰り支援を利用して必要資金を調達したものの、営業キャッシュフローは厳しい状態が続いた。


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ウッドショックの影響

 その後も外部環境は悪化の一途を辿る。コロナ禍を契機に2021年には、世界的な木材価格の上昇(ウッドショック)が巻き起こった。この影響で、資材価格や建築コストが上昇。

2022年5月期には最終利益は1億5,395万円の赤字に転落した。その後も、最終赤字は続く。2023年5月期1億9,442万円、2024年5月期2億7,996万円と3期連続で水面下に沈み、債務超過に転落した。
 売上高も、2024年5月期に100億円を下回り、2025年5月期は85億5,964万円とさらに縮小、歯止めが掛からなくなった。
 財務状況も後退した。自己資本比率は、2023年5月期0.2%、2024年5月期▲8.0%、2025年5月期▲11.5%と悪化の一途を辿る。
 短期的な支払能力を示す流動比率は、業界標準が170.8%に対し、2023年5月期131.9%、2024年5月期113.7%と推移し、2025年5月期は109.4%まで低下した。
 さらに、総資本に占める有利子負債の構成比率は、標準が31.3%なのに対し、2023年5月期50.3%、2024年5月期55.3%、2025年5月期56.8%と悪化した。
 仕入先や外注先への支払サイトを示す支払債務回転日数は、標準が44日なのに対し、2023年5月期26日、2024年5月期27日と推移し、2025年5月期は53日へ長期化した。サイトや期日変更などの確認が必要な伸び方だ。

民事再生のアエラホーム、「施主保護」への数カ月 ~ 難しい抜本再生への導線、倒産村の矜持 ~
アエラホーム業績推移


工事件数が大幅減

 アエラホームは不動産業も併営している。ただ、あくまで注文住宅が本業で、不動産業は文字通りサブだ。2025年12月には、宅地建物取引業の免許について、大臣(複数の都道府県で展開)から都知事に変更している。

2025年5月期の売上高85億円のうち、不動産売上はわずか830万円、2件の売買・交換のみだった。
 建設業許可の申請資料によると、売上高の約9割を占める注文住宅に関連する建築一式工事は、2023年5月期が415件だったが、2024年5月期は284件、2025年5月期は255件まで減少。また、内装仕上げ工事は、2023年5月期は1,504件だったものの、2024年5月期1,498件、2025年5月期1,082件と減少を辿っている。
 2025年5月期の工事履歴によると、個人邸新築工事では最も高額だったのは約9,000万円。だが4,000万円以上は多くなく、コスト高のなか、厳しい単価競争が伺われる。

ネガティブ情報が頻発

 TSRには、アエラホームに対する情報が多く寄せられていた。蓄積データを遡るとここ数年は断続的に登録され、数十件に達する。
 支払い遅延や訴訟、業績悪化など、内容は様々で、あらゆる信用不安が日を追うごとに蓄積されていった。
 アエラホームの周辺を取材すると、数年前からメインバンクを中心として支援体制が整備され、金融支援を受けながら事業再生を進めていた。だが、ことし春、金融機関とアエラホームの関係に変化が生じる。この時期より、「資材発注を調整している」、「営業店を閉鎖準備している」、「取引商社との関係に変化が生じている」などの情報が駆け巡るようになった。

民事再生のアエラホーム、「施主保護」への数カ月 ~ 難しい抜本再生への導線、倒産村の矜持 ~
アエラホームの看板(TSR撮影)

アエラホームの看板(TSR撮影)

事業再生の行方

 アエラホームの事業再生では何が起こっていたのか。減収に歯止めがかからず、赤字が常態化しており、決算書を見る限り、金融支援がなければ、すでに資金ショートしている状況にも見える。


 金融支援の体制について、「業績回復の遅れからこれまで支援を受けていた取引金融機関との関係が徐々に悪化した」との見方がある。一方で、「担保でカバーされている分を超えて支えており、(ことし春までの)最後の方は漢気ファイナンスに近かった」とする見方もある。金融支援の現場では、支援側も振舞い方次第ではレピュテーションリスクに晒される。多面的な情報の入手が欠かせない。
 いずれにせよ、手元資金が不十分なアエラホームは運転資金の確保が緊急の課題だ。コスト削減策も進めていたが、効果が表れるまでには一定の時間が必要で、アエラホームは5月末に2億~3億円の資金不足に陥るとの見方が優勢となった。
 資金調達ができなければ、最悪の事態も起こり得る――。TSRは水面下で取材体制を強化した。資金ショートが目前に迫るなか、断続的に金融機関の間でコミュニケーションが図られ、メインバンク以外の金融機関から超短期のつなぎ資金が供給された。資金繰りを精査した結果、向こう1カ月程度の急場を凌げば、既成案件の代金回収などでスポンサー選定までの綱渡りは可能との判断だ。超短期の供給後も既存行の枠組みで支援が継続された。この間、スポンサー探索も断続的に続いた。
こうした事態になる前にも探索していたが、今回は力の入れ方が違った。ある関係者は「倒産村の底力を見た。関係する全員が施主のためを想い取り組んできた」と呟いた。
 
 7月16日、スポンサー候補は、(株)ロゴスホールディングス(TSRコード:136210627、札幌市)の子会社と開示された。リリースには、支援する理由について「商品力や営業ネットワークは、依然として高い潜在価値を持つ」と記載されている。


 関係者の努力が功を奏するのかは、これから証明されることになる。アエラホームが施主に何を語り、債権者にどのように向き合うのか。スポンサーの一挙手一投足にも注目が集まる。
 売上高の約9割を占める注文住宅だが、住宅ローン利用者から着手時3割、中間時4割、引渡時3割の3分割が基本だ。資金繰り悪化で、こうした資金に頼った経営になっていた。過去の経営のツケを倒産村でカバーしたようにみえる。オーナーチェンジと債権カットを含む抜本再生の早期着手の難しさを露呈しつつも、再生実務家の連携により最悪の事態は回避された。

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