世界最大の航空戦力を保有する軍隊と聞けば、多くの人はアメリカ空軍を思い浮かべ、戦闘機や爆撃機、輸送機の姿を連想することでしょう。実際、大小合わせて約5000機にも及ぶ航空機を運用し、規模・能力ともに世界最大の航空戦力として君臨しています。
特殊戦術部隊は、陸上で戦う部隊です。航空機を運用するはずの空軍がなぜこのようなチームを抱えているのでしょうか。その理由は、航空戦が「飛行機だけでは完結しない戦い」だからです。
いかに優れた戦闘機や爆撃機を投入しても、敵地深くにおいて航空戦力を支える人員がいなければ、その能力を十分に発揮することはできません。そこでAFSOCは、航空作戦と地上作戦を結びつける専門家集団として特殊戦術部隊を育成してきました。
特殊戦術隊員が担う様々な役割特殊戦術部隊の最大の特徴は、少数精鋭で航空機動力を最大限に活用する点にあります。CV-22BオスプレイやMC-130Jといった特殊作戦に特化した輸送機からパラシュート降下し、敵勢力圏の奥深くへ潜入して作戦を遂行することを得意とします。その任務は救難、偵察、航空管制、通信支援など極めて多岐にわたります。戦闘そのものよりも、航空戦力が本来の能力を発揮できる環境を最前線で整えることこそが彼らの使命なのです。
その代表的な職種が「パラレスキュー(Pararescuemen:PJ)」です。
単なる救急隊員ではなく、潜水、登山、降下、戦闘技術まで修得し、あらゆる環境で救助活動を遂行できる能力を備えています。救出対象がどれほど危険な場所にいても、生還させるために最前線へ飛び込むことが彼らの存在意義です。
また、戦場における航空戦力の「交通整理役」とも言えるのが「戦闘管制員(Combat Controllers:CCT)」です。敵地に最初に降下し、滑走路や臨時着陸帯を確保するとともに、輸送機やヘリコプターの離着陸を管制します。さらに爆撃機や戦闘機への目標指示も担当し、陸・海・空の各部隊を統合する航空管制官として行動します。敵地のど真ん中で航空交通管制を行うという極めて特殊な任務は、世界でも他に類を見ない存在です。
グリーンベレーやSEALsに匹敵する空軍版特殊部隊空軍特殊作戦において、敵情を把握するための「目」や「耳」となるのが「特殊偵察隊員(Special Reconnaissance Airmen:SR)」です。敵部隊の動向やレーダー配置、気象、電磁波などを秘密裏に情報収集し、航空作戦に必要な情報をリアルタイムで提供します。衛星や無人機だけでは得られない情報を、人間が現場で直接収集するからこそ、その価値は極めて高いものとなります。
そして、陸軍などの地上部隊とともに行動し、戦闘機や攻撃機による近接航空支援を統制する専門家が「戦術航空管制班(Tactical Air Control Party:TACP)」です。敵と味方が入り乱れる最前線では、爆撃位置がわずかにずれるだけでも味方を危険にさらしかねません。
これらの特殊戦術隊員になるための道は極めて険しく、養成課程では志願者の8~9割が途中で脱落するとされています。過酷な体力試験だけではなく、水中訓練、長距離行軍、降下訓練、戦術射撃、語学、医療、通信、航空管制など、幅広い技能を長期間にわたって修得しなければならないからです。求められるのは単なる身体能力ではなく、極限状態でも冷静な判断を下せる精神力と、多様な専門技能を統合できる知性でもあります。
陸軍にはグリーンベレー、海軍にはSEALsという著名な特殊部隊があります。それに対し、アメリカ空軍の特殊戦術部隊こそが、まさに「空軍版特殊部隊」と呼ぶべき存在なのです。彼らは航空戦力を成立させるための基盤を築く専門家集団です。航空優勢を支えるのは空を飛ぶ戦闘機だけではありません。地上から航空機を導き、負傷者を救い、情報を集め、精密攻撃を成功へ導く彼らの存在があってこそ、アメリカ空軍は世界最強の航空戦力として機能しているのです。

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