日本カーリング選手権大会 横浜2026はSC軽井沢クラブの2年ぶり2回目の優勝で幕を閉じた。

 昨年に続き首都圏で、しかも初の6月開催となったため、アイスは高温、高湿度の影響を受けた。

初日から霜が付着する氷に苦慮するチームが多かった。そんななか、SC軽井沢クラブのスキップ上野美優は出場全10チームの選手のなかで唯一というくらい、ドローウエイトに苦しむ様子が見られなかった。

 その上野美の活躍もあり、SC軽井沢クラブは1次予選リーグでロコ・ソラーレや中部電力、2次予選リーグではフォルティウスといった優勝候補から次々と白星を奪っていった。北海道銀行には2次予選リーグで一度は敗れたものの、プレーオフの準決勝、決勝と勝利してその借りを倍にして返した。

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 開幕からキーワードに「情報の共有」を掲げてアイスの変化に集中し、試合後のミックスゾーンでは「自分たちにフォーカスして、相手というよりも自分たちが何をしたいか(が重要)」と、上野美は繰り返し発言していた。

 象徴的なのが、決勝の北海道銀行戦を前にして下した決断だった。

 ひと足先に決勝行きを決めたSC軽井沢クラブにはハンマー(※後攻)を選択する権利があったが、それを放棄してまで使用するストーンの色を優先した。有利な後攻を、それも難しいアイスにあって、その権利を相手に譲る決断は相当難しかったはずだが、SC軽井沢クラブは多大なメリットよりも「自分たちが何をしたいか」を重視し、赤の石を選択した。

 その理由について、1次予選リーグ終了時のサンディング(※ストーンの接氷面を研磨して曲がりやすくするアイスメーカーが行なう作業)後から、「黄色の石はあまり情報がなかったので」と西室雄二コーチ。セカンドでバイススキップの金井亜翠香は、「準決勝(プレーオフの北海道銀行戦)で赤を使って、試合前練習の時点で『(投げと)マッチしているな』と感じたので、(ハンマーではなく赤の)石を選択しました」と語った。

 その決勝戦、後攻を譲ったSC軽井沢クラブは第1エンドで2点を失った。

 だが、ゲーム序盤で「相手より先に多くのドローを投げたいと思っていた」と金井は振り返る。

スコアこそ常に追う展開でありながらも、リードの川田亜依が多くのドローを投げ、そこから得られる情報をチームで共有した。同時に、ひとつのシートだけで行なわれる決勝独特のアイスの重さや曲がり具合、スイープの強さなどを確認。劣勢に耐えながら、逆転の機会をうかがっていた。

 それがようやく実ったのが、2点ビハインドで迎えた最終10エンドだ。

 川田と金井、フロントエンドの4投で複数得点の土台を作りながら、北海道銀行のサード田畑百葉のダブルテイクアウトでSC軽井沢クラブの赤石はハウスからなくなってしまったが、「ガードが残っていたから、まだいけると思っていました」と金井。その言葉どおり、サードの上野結生がセンターへの渾身のカムアラウンド(※ガードなど他の石の後ろに回り込むショット)を2本そろえてチャンスをリメイクした。

 川田が丁寧に投げ続けたドローで得たウエイトと曲がり幅を、デリバリーとスイープとラインとで結びつけた渾身の2本。大一番の土壇場で、この1週間の集大成とも言えるチームショットを見せつけた。

 対する北海道銀行は、田畑とスキップ仁平美来の残り3投を費やして上野結が置いた危険な赤石の処理を試みた。しかし、いずれのショットも局面を変えるまでには至らなかった。無論、3投とも簡単なショットではなかったが、9エンドまでは田畑も仁平もソフトテイクを決めてきたからこそ、選択した3投だった。

「ドローで(相手の通り道を)つぶしにいくか、ランバック(※ガードの石などを使ってハウス内の石を弾き出すショット)で仕留めるか、迷いはあったのですが、チームで『これでいこう』と決めたショットでした。

でも、その少しの迷いがショットに出ちゃったかもしれません」

 試合後、田畑はそう言って悔やんだ。

 結果的に、ラストロックを投げる前に2点を確保したSC軽井沢クラブ。上野美の放った3点目を狙うドローは、会場の横浜BUNTAIに集った2000人を超える観客の手拍子に合わせるように進んで見事にハウスにとどまった。大逆転のウィニングショットであり、最後まで身上としていた"センター戦で投げ負けない"彼女たちの強さが凝縮されたフィニッシュでもあった。

 優勝後の記者会見では、「世界で戦っていくにはまだまだ足りない部分がある」と上野美。金井も「私たちはまだ世界で結果が出せていないので、またみんなで挑戦して成長していきたい」と世界を見据えた。

 一方、敗れた北海道銀行も3年連続でファイナル進出というすばらしい成績を残した。「アベレージとして強くなっている実感はある」とリードの中島未琴。さらに、田畑が「どんな状況でも勝ちきれるチームになりたい」と意気込めば、仁平も頬を涙で濡らしながら「2030年に向けて常に勝ち続けるチームに」という決意を固めて前を向いた。

「2030年」とは、もちろんフランス五輪のことだ。今年の世界選手権出場のロコ・ソラーレに続き、この優勝でSC軽井沢クラブも五輪代表候補決定戦の出場権を得た(※それぞれの大会時点でのメンバーでチームを組んだ場合に限る)。大舞台への戦いはすでに始まっている。

 チーム最年少の小林未奈を軸にして3位入賞を果たしたミラノ・コルティナ五輪代表のフォルティウス、ミックスダブルスで世界トップカーラーとなった松村千秋を加えて新たな形を模索し始めた中部電力ら、各チームが目指すところは同じだ。

 フランスへの道のりは長いが、SC軽井沢クラブが大きな一歩を、横浜の地で力強く踏み出した。

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