高木豊の交流戦総括 セ・リーグ編
今シーズンの交流戦は、パ・リーグが65勝39敗4分けとセ・リーグを圧倒。5チームが勝ち越し、再開されるリーグ戦に向けて弾みをつけた。
一方のセ・リーグで勝ち越したのは巨人のみ。そんなセ・リーグ各球団の交流戦の戦いについて、かつて大洋ホエールズ(現横浜DeNAベイスターズ)で活躍し、現在は野球解説者やYouTubeでも活動する高木豊氏に総括してもらった。
【巨人は監督の辞任で一丸】
――セ・リーグは巨人(10勝6敗2分け)以外の5チームが負け越し。昨シーズンと同じくパ・リーグに圧倒されました。
高木豊(以下:高木) パ・リーグはDH制なので、ピッチャーがコントロールもパワーも持ちあわせていないと、バッターをなかなか抑えられません。普段からそういった環境で投げているので、必然的にレベルが高くなりますよね。それと、特殊なボールを持っているピッチャーが多いような感じがします。
セ・リーグは技術でかわしたり、全体的にまとまっているピッチャーが多いのですが、パ・リーグのバッターにパワーでねじ伏せられていました。それとセ・リーグのチームは戦力が代わり映えしません。たとえば阪神や広島、中日の中継ぎは新戦力が出てきませんよね。中日に関しては、立浪和義元監督の時代からチームがほとんど変わっていない。結局、選手を育てられていないんです。
――確かにパ・リーグのほうが、新戦力が多く出てきている印象があります。
高木 西武でいうと、黒田将矢や篠原響、ルーキーの岩城颯空といったリリーフ陣の新戦力が出てきて、首位を走るチームを支えています。オリックスでは寺西成騎、ロッテでは八木彬といったセットアッパーが出てきました。やはりDH制がある分だけ、ピッチャーを育てなければいけない環境ができているんだと思います。セ・リーグはほかのチームから探す傾向がありますし、そういった部分で後手を踏んでいる気がします。
パ・リーグはここ数年、ソフトバンクが強かったので、それに追いつけ追い越せとほかのチームも力がついた。セ・リーグも、巨人が覇権を握っていた時は同じような感じでしたが、今は目標がなくなっている感じがします。
――巨人が交流戦で勝ち越せた要因は?
高木 監督は、いわば"大黒柱"みたいなものですが、阿部慎之助監督がシーズン途中で辞任してそれを失った。みんなが「まとまらないと勝てない」という危機感を持ち、それがいい方向に作用したと思います。「一本の矢は簡単に折れるが、三本束ねれば容易に折れない」「ひとりの知恵より十人の知恵」などと言いますが、そういう野球に変わりましたよね。
【リーグ上位のヤクルト、阪神も負け越し。DeNAは先発で苦労】
―― 一方、ヤクルト(6勝11敗1分け)は7連敗を喫するなど、勢いに陰りが見られます。
高木 これまでが出来すぎていた部分もありますし、踏ん張りどころですよね。
あと、今年の強みはピッチャーなのですが、5勝(2敗)を挙げていた高梨裕稔が故障して離脱してしまいました。野手は塩見泰隆が戦列に戻ってきましたが、あとは山田哲人ですね。ベテランが雰囲気を変えてくれる働きをすれば、若手が躍動し始めるという好循環がまた生まれるはずです。
――阪神も6勝12敗と、大きく負け越しました。
高木 阪神の場合は当然パ・リーグ各チームからマークされ、いいピッチャーを当てられた、というのがひとつ。あとは、リリーフ陣がほとんど機能していないので、先発ピッチャーがある程度試合を作っても、継投した時にやられるケースも多かったです。
勝ち星を挙げたのはロッテや楽天など下位チームで、西武やソフトバンクなど上位チームに力負けして勝てていないのも寂しい。リリーフ陣が今のような状態だと、夏場は相当苦しくなると思いますよ。昨シーズンのように石井大智や及川雅貴がやってくれるだろう、と安易に考えていたわけではないと思いますが......救世主になりそうなピッチャーはいませんし、油断していたんじゃないかと思います。
――5勝13敗に終わったDeNAはどう見ていますか?
高木 先発ピッチャーが、なかなか長いイニングを投げられません。リリーフ陣の防御率はそこそこいいのですが、それも崩れかかっていますし、ギリギリのところでやっている感じです。頼りになるのは東克樹と石田裕太郎、尾形崇斗くらいで、この3人がやられると勝てなくなる。
打線も、度会隆輝が4番を打つこともありましたが、それでは苦しいですよ。牧秀悟がケガから復帰した時は打線が活性化したので、少し状態が上がったかなと思いきや、牧が打てないと全体が止まってしまう印象です。
山本祐大をトレードで出した時点で、チームが苦しくなるのはわかっていましたよね。松尾汐恩も一生懸命にやっていますし、将来は日本を代表するようなキャッチャーになれる素材だとは思いますが、まだ山本は必要だったと思います。キャッチャーの選択肢が少なくなり、先発ピッチャー陣も調子がよくない。松尾には相当な負担がかかっているはずです。
【中日、広島は采配に疑問】
――4連勝で交流戦をスタートした中日も、結局は7勝11敗でした。
高木 選手起用にしても采配にしても、行き当たりばったりの印象です。たとえば、6月7日の西武戦は1-4で敗れましたが、延長11回裏の2死満塁のチャンスで細川成也がけん制でアウトになった。
延長11回で、もう打順が回ってくることはなかったでしょうし、次の回には守備固めの選手に交代していましたよね。そうであれば、代走を使うべきです。一事が万事、そういう細かい部分ができてないんです。
――広島は6連敗スタートで、5勝12敗1分けと苦しい戦いが続きました。
高木 選手起用がつぎはぎだらけで一貫性がないです。坂倉将吾をキャッチャーから外してファーストで起用したかと思えば、エレフリス・モンテロの調子が上向いたら坂倉をサードで起用し、サードを守っていた佐々木泰を外野へ。サンドロ・ファビアンが戻ってきたら佐々木をサードに戻すとか、選手をどのポジションでどう育てたいのかがわかりません。選手も何をしたいのかまったくわからないと思いますし、将来のビジョンがなければチームが乗っていけません。
――若手の起用が増えていると思いますが、まだ主力と言える選手は少ないでしょうか。
高木 素質のある選手はたくさんいるんですが......昨シーズンに活躍した中村奨成をはじめ、田村俊介や佐藤啓介はどうしているのか。平川蓮や勝田成らはどう使っていくのか。
その場しのぎで勝てる試合はたまにありますが、長続きはしません。キャッチャーでは持丸泰輝も活躍していますけど、とにかく若手には思いきってやらせて、あとは我慢すればいいと思うんです。
勝つにしても負けるにしても、チームがひとつの形を持っていないといけない。阪神の強みもそこにあると思います。森下翔太、佐藤輝明、大山悠輔のクリーンアップに回れば、必ず誰かが何かを起こしてくれる。若手の育成同様、チームの強みとなる形を作っていくべきです。
――リーグが再開されますが、各チームに期待することは?
高木 どのチームも、パ・リーグの各チームとの力の差をあらためて感じたと思いますし、いろいろな課題が出てきたと思います。今後どう改善してチームを立て直していくか、どのチームが抜け出していくのか注目しています。
(パ・リーグ編:パ・リーグの交流戦を総括 5チームが勝ち越したが、その状態には差もある>>)
【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)
1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。










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