「一体感があった」「みんな同じ絵を描いていた」......北中米ワールドカップを戦った森保ジャパンの周辺からは、「結束」が漏れ伝わってくる。
確かにチームとしてのまとまりはあった。
では、「ワールドカップ優勝」に向かって束ねられた集団が、ベスト32で力尽きたのはなぜだろうか?
ワールドカップのベスト8を巡る戦いは、「一体感」の正体を示していた。
たとえば、パラグアイはラウンド16でフランスと戦い、5バックで守りを固めて相手を苦しめ、「ひとつの岩」のような結束を見せていた。しかし、最後はこじ開けられてしまい、反則まがいのラフプレーの印象を残して大会を去った。ボールを持つことを捨てたことの報いを受けたのだ。フランスなど、ベスト8に勝ち残った国々に共通する「一体感」は、「献身」でも「仲のよさ」でもない。それは攻防のなか、「ゴールに向かう姿勢」に尽きるのではないか。
サッカーの原点とも言えるゴールの意識こそ、彼らの活力になっている。言うまでもなく、試合のなかで相手の流れになる時間帯はあるわけだが、守りに入っても腰が引けていない。むしろ逆境を楽しむような不敵さで、反撃にも転じられるのだ。
モロッコはノックアウトステージに入ると、日本が引き分けたオランダを退け、開催国のカナダも破った。その点でベスト8にふさわしい。
今回のモロッコ代表に、実は同国内で生まれ育った選手は少ない。多くが欧州への移民の末裔である。アクラフ・ハキミ、ブラヒム・ディアス、シャディ・リアドはスペイン生まれ。ニール・エル・アイナウイ、イッサ・ディオプ、アユブ・ブアディはフランス、ヌサイル・マズラウィはオランダで生まれた。代表選手のなかにはボートピープルで夢をつないだ移民の子孫もいた。そうして散らばっていた個人が、野心をむき出しに「前に進むこと」で結束したのだ。
【能動的だからこそ生まれる「一体感」】
ラウンド32のオランダ戦で、モロッコは1-1と日本と同様引き分けており、記録上は勝利ではなく、PK戦での勝ち上がりに過ぎなかった。しかし、モロッコのボール支配率は7割近く、勝ち上がるべくして勝ち上がっている。試合を通じてイニシアチブを握り、12本対6本と2倍のシュート数で常にゴールに向かい、結果につなげたのだ(GKヤシン・ブノがいることで、最後はPK戦での勝利も確信していた)。
ラウンド16のカナダ戦では、モロッコの選手はオランダ戦の激闘の影響で体が重かった。
レアル・マドリードに所属するディアスは、アフリカ最高のファンタジスタだろう。際立つのは両利きであることと攻撃センス。これは鍛えたものではなく、ほぼ先天的な特異性で、バロンドールを受賞したウスマン・デンベレとも同じである。両足のキックに優れているだけでなく、ビジョンにも秀で、どちらの足でボールを持っても、反転しても利き足のようにプレーできる。そのせいで敵はマークを絞れない。
モロッコには、そのディアスが力を発揮できる仕組みがあった。ハキミ、ブノだけでなく、前線で起点になれるイスマエル・サイバリ、キックがうまく得点力もあるウナヒ、18歳で目覚ましいビジョンと技術を誇るブアディ、バルサの薫陶を受けたリアドなど、攻撃的、能動的なサッカーを実践できるだけの選手を擁していた。
ひとりの選手が他の選手に感化されながら、ボールを持ってゴールに向かう。
ラウンド16でノルウェーが、日本が敗れたブラジルに勝利できたのも、「ボールを保持する」という姿勢を崩さなかったからだろう。一進一退の攻防のなか、真っ向勝負の矜持(きょうじ)が流れを引き寄せた。勝因は「アーリング・ハーランドという怪物がいたから」という見解もあるだろうが、彼を最大限に生かすため、ゴールへ向かう姿勢を堅持したことが幸いしたのだ。
森保ジャパンはグループステージの初戦、オランダ戦でも主導権を握れなかった。6割近くボールを持たれていた。ラウンド32のブラジル戦はさらに顕著だった。辛抱強く戦い、佐野海舟のゴールは見事のひと言に尽きるが、最後は籠城戦になり全滅した。守ることに活路を求めるだけでは、どれだけひとつになっても栄光はつかめない。
それが、森保ジャパンの8年間の答えだった。
森保ジャパンは親善試合も含めて、強豪相手に一心同体となって勝利をつかみとってきた。
その虚像こそ、世界のベスト8との差だった。今大会を「惜しかった、もうひと息だった」と総括するなど、とんでもない捻じ曲げである。そこに興じている以上、ワールドカップ優勝などあり得ない。
森保ジャパンは「一体感」をはき違えていた。長友のように純粋な戦力とは言えない選手を入れて「雰囲気がよくなった」と安堵している時点で、すでに競争力を失っていた。修羅たちが集う戦場で、勝ち残れるはずはなかったのである。

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