「今日は自分の責任だと思っています。プレーの質もかなり悪かったですし、チームのリーダーとしてやるべきことが全然できていなかったと思うので、負けるべくして負けた試合です」

 7月6日に行なわれたFIBAワールドカップ2027アジア地区予選1次ラウンドWindow3の韓国戦。

日本は79-81で敗れた。

 世界ランキング(日本22位・韓国56位)を見ても、また韓国はNBAサマーリーグ参加のためエースのイ・ヒョンジュンを欠き、さらにイ・ジョンヒョンら主力にも故障者を抱えていたことを考えても、日本としては勝っておくべき試合だった。

 そのことは、渡邊雄太(千葉ジェッツ)も感じていたはずだ。だから、冒頭の言葉が出てきた。

【男子バスケ】渡邊雄太ひとりに責任は負わせない 日韓戦の敗北...の画像はこちら >>
 一方で、自身に責任を負わせる渡邊のそうした言葉は、初めてではない。これまでの敗戦においても、幾度か似た言葉を耳にしてきたからだ。

 渡邊は元NBA選手だ。恵まれた体躯と技量がある。日本代表でのプレー歴も長い。リーダーとしての自覚もある。必然的に周囲の期待は膨れ、高いパフォーマンスを常に求められる。

 渡邊はそんな期待と責任を、なかば一身に引き受ける。

だからこそチームが敗れれば、同じような言葉で自身が責任を負う。

 Window3に向けての合宿から、桶谷大ヘッドコーチ(HC)は日本代表チームに主将を置かなかった。ただ、中国戦、韓国戦のいずれにおいても「ゲームキャプテン」を渡邊が務めたのは、彼の年齢や経験、リーダーシップに非の打ち所がなかったからだ。

 もっとも、「日本代表チームとして、それでいいのだろうか?」とは思う。もっと技術的にも精神的にも、チームを牽引する者が出てきてもいいのではないか。

 現状の日本代表において、渡邊は主力中の主力であり、代えの利かない存在であることは紛れもない事実だ。7月3日に中国・瀋陽(シェンヤン)で行なわれたWindow3の初戦、中国と対戦した日本は、それまで長らく苦しめられてきた相手に対して92-73と、完勝と評しても遜色のない内容だった。

 そのなかで渡邊は、リバウンドからドリブル、パス、ブロックと、攻守の要としてインサイド、アウトサイドの両方で躍動。合計16得点を記録して勝利に貢献した。

【17ものターンオーバーを記録】

 渡邊は、最大の武器のひとつである機動力を生かしていた。タイミングよく中へ切り込み、センターながらアウトサイドでもプレーできるジョシュ・ホーキンソン(東京サンロッカーズ)からのパスを受けて得点する場面が2度ほどあったのは、彼のよさが出ていた証左だ。

 敗退した韓国戦においても、序盤に齋藤拓実(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)からのパスを受けてアリウープダンクを叩き込み、続けて速攻からレイアップを決めるなど、日本が志向する展開の速い攻撃において欠かせない存在であることもあらためて印象づけた。

 渡邊本人が言うように、韓国戦では4つのターンオーバーをし、中にはひどいパスミスもあった。

しかし、中国戦と同じくこの試合でもホーキンソンに次ぐ18得点を挙げた。また、リバウンドは11本、ブロックショットとスティールはそれぞれ2本ずつ記録している。

 敗戦濃厚で万事休すと思われた最終盤には、3Pシュートのバスケットカウントを決めて勝敗の行方を再びわからなくした。彼がコートに立っている時の得失点差はチーム3位のプラス7を記録するなど、攻守において本分を尽くしたと言える。

 だが、そうした数字を並べても、この試合に敗れれば予選1次ラウンド敗退が決まっていた韓国は決死の覚悟で日本に相対し、攻守両面においてフィジカルの強さを生かして圧をかけてきた。それに対して日本は、17ものターンオーバーを記録してしまった。

 ただ、戦前から韓国が「死に物狂いでプレーしてくるのは間違いない」(渡邊)ことはわかっていたわけで、彼らの圧をさばく的確な指示や声かけができなかったことを悔いたのだろう。

「個の力」は、日本のあらゆるチーム競技が世界の強豪と伍して戦う時のキーワードであり、それは今も変わらない。

 バスケットボールにおいては、サイズに劣る日本が個人技で世界を相手に凌駕するのは容易ではなく、戦術や戦略を入念に立て、練習や試合を重ねて培った阿吽の呼吸を養うことで、集団として立ち向かうことが大前提だ。

【日本を上回った韓国の執念】

 今回のWindow3でいえば、中国戦の日本はチームとして、ゲームの歯車がよく噛み合った。攻守の切り替えを速くしつつ、ペースを上げた展開を志向する日本は、ファストブレークから23もの得点を獲得。ボールも人もよく動くことで、相手に守備の的を絞らせなかった。そのことは、27ものアシスト数や40パーセントという高い3Pシュート成功率にも表れている。

 一方、日本が韓国の後塵を拝したのは、ターンオーバーから22もの失点を喫してしまったことが要因とも言える。また、やろうとしているゲームが展開できない時、つまり手詰まりになった時の打開策という点では、課題が残っているようにも感じられた。

 対して韓国の選手たちは、より積極的にリングをアタックし、ポストアップからのフェイダウェイや中距離のシュートから得点を決めた。

 こうしたミドルレンジの2Pシュートは成功率が高くないため、もっとリングの近くから打つか、3Pシュートを打ったほうが得点効率が高くなるといった考え方がある。近年では「打つべきではないシュート」とされ、守る側からしてもなかば「捨ててもいいシュート」だとされてきた。

 だが、執念で日本を上回った韓国は、そうした「捨ててもいいシュート」をねじ込むことで、試合を制することができた。あらためて「個人の技量」というものを考えさせられた。

 西田優大(シーホース三河)は韓国戦後、彼よりひと回り体躯の大きいイ・ウソク(身長196cm)にミスマッチを突かれていたことについて問われると、「ミドルジャンパー(中距離シュート)を打たれるぶんには日本(Bリーグ)だったら、ある程度オッケーな部分ではあった」としつつも、そうしたシュートを決めきる力を「世界基準」であると述べ、「日本のフィジカルレベルをもう一段階、上げないといけない」と語った。

 個の力の定義には、あいまいなところがある。アジア予選6試合において、渡邊とホーキンソンが個人の技量を生かして日本を牽引したことに異論はないが、そのふたりであっても簡単にシュート機会をクリエイトできるわけではない。

 日本にすぐさまそうした存在が現れると期待するのは、いささか酷だろう。だが、その定義を「難しい体勢でも、強引にでも、シュートを決めきる能力」とすれば、わかりやすいかもしれない。

【八村と河村が合流する可能性】

 もちろん、日本は「チームとして戦う」のが是だ。攻守の切り替えを速くしながら、ボールと人を動かして効果的に得点を重ねることが日本のアイデンティティのひとつと言っていい。

 ただ、相手を崩しきれない時、攻撃が停滞する時に、多少強引にでも得点を取りにいける、あるいはチャンスをクリエイトできる選手が増えると、日本代表のさらなる強さにつながるはずだ。

「後半にどうやって打開できるか、と考えていたんですけど、なかなかうまくいかなかった。韓国のプレッシャーがかなりよく、ペイントタッチもできなくて、ちょっとイージーな攻略ができなかった」

 桶谷HCは試合直後のテレビインタビューで、このように敗戦を振り返った。「セカンドユニット(控え)でズレを作れなかったところが試合を難しくした」とも語っている。

 こうした発言を聞いても、個の技量や選手層の薄さには、これまでと同様に課題を残したと言える。

 渡邊やホーキンソンは、たしかに頼もしい存在だ。渡邊は「僕もジョシュも『40分出ろ』と言われたら、出られる準備は常にしている」とはしつつも、「40分出続けると、自分たちが気づいていないところで強度が落ちている部分はある」と話している。

 8月末に行なわれるワールドカップアジア予選2次ラウンドWindow4で日本は、アウェーでサウジアラビアと、ホームでカタールと対戦する。八村塁(ロサンゼルス・クリッパーズ)と河村勇輝(今夏のNBAサマーリーグではインディアナ・ペイサーズに所属)がWindow4で日本代表チームに加わる可能性は皆無ではない。

 NBAのコートに立つふたりが入ることで、チームは「個」の部分において大きなアドバンテージを得る。

ただ、NBAシーズンに突入すれば、彼らが日本代表でプレーをする機会はなくなる。「個の力」は日本代表の伸びしろとして、まだしばらく議題となりそうだ。

 中国に快勝した試合後、渡邊は「ようやく世界を相手に戦えるようになってきたという自覚はあります。そういう意味ではアジアの大会で、自分たちは1位で通過しなきゃいけない。そういう自信を持ってプレーしている」と声を大にした。

 一方、主力数人を欠いた韓国に負けた試合では、日本の現在地がまだ心もとないものであることを示した。

「ターンオーバーからの失点が今日はすごく多かった。こういうプレーをしているようでは、日本も僕自身もまだまだだと思います」

 韓国戦後、渡邊はこう語った。その自責の言葉は、その場にいたすべてのメディアの面々の耳に、確実に響いていた。

編集部おすすめ