ディーゼルエンジンを積む乗用車はヨーロッパが主力だ
環境性能値の相次ぐ偽装で世界的に問題が噴出したディーゼルエンジンだが、結局、実用車の内燃機関としてしか普及しなかった。レース用ではディーゼルエンジン車もあったのに、市販高性能車(=スポーツカー)で採用されなかったのはなぜなのか、という疑問をお持ちの方もいるだろう。ディーゼルエンジンについて、いま1度振り返ってみよう。
ディーゼルエンジンの特徴は、混合気の点火にスパークプラグ(ガソリン機関)を用いず、高圧縮比によって得られる圧縮着火の方式のため、発火点の設定さえすれば精製度の低い(=廉価な)燃料が使える点にある。また、高圧縮設計となるため熱効率が高くなる側面を持つが、今度は摩擦損失、慣性損失(頑丈な構造とすることによる重量増)が大きくなり、実用化にあたって圧縮比上限が自ずと制約される特徴がある。
さらに、拡散燃焼のため1気筒当たりの出力はそれほど高くないが、反面、気筒容積にほぼ制限がなく排気量の拡大に自由度があるため、必要な出力が得られるまでエンジン排気量を上げるエンジン設計が可能だ。この場合、排気量が上がるほど低回転になるが、大型船舶用の機関と考えた場合、実用回転域が低回転となるのはむしろ好都合で、ガソリン機関では実用不可能な排気量、回転域で機能するエンジンとなっている。
さて、ディーゼルエンジンを積む乗用車だが、主力はヨーロッパで、戦後からいくつかのメーカーが実用化に取り組み、ロングライフ性、燃費性能のよさなどから特定層に高く支持されてきた歴史を持っている。ただ、乗用車用の内燃機関として注目が集まったのは2000年代に入ってからのことで、二酸化炭素の排出削減に向いた機関であることを自動車メーカーが提唱したからだ。実際、コモンレールディーゼル(電制ディーゼル)に代表されるメカニズムの進歩により、小型コンパクトで高性能なエンジンが実用化されるようになっていた。
現行の乗用ディーゼルは日常使いに長けている
レースでディーゼルエンジンが採用となったのは、2000年代中盤のル・マン・シリーズだが、これもディーゼル乗用車の普及を図るヨーロッパメーカーの思惑をACO(西部自動車クラブ、ル・マン24時間の主催団体)が汲んだもので、決してレース用の内燃機関として優秀だったからというわけではない。
むしろ、レースカーの内燃機関として適正があるのはガソリン機関で、たとえば出力面だけを見ても、進化によってリッター当たり100馬力も可能になったと言われるディーゼルに対し、ガソリン機関は1980年代中盤にリッター当たり1500馬力を可能にしていた。いずれも過給機付きだが、乗用車レベルで考える排気量枠であれば、圧倒的にガソリン機関のほうが高性能である。
ガソリン機関とディーゼル機関の優劣を比べるのであれば、それぞれが持つ特徴を車両の性格、特徴に当てはめるとわかりやすい。高回転、高出力、エンジン回転の上下が素早く、スロットルレスポンスに優れたガソリン機関はスポーツカー向き、回転上限が低く、低中速トルク特性が厚く、熱効率(燃費)に優れるディーゼル機関は、実用車(=乗用車)に向く内燃機関と区別することができるだろう。
また、日本の場合、ガソリンと軽油では燃料の単価に開きがあり(ヨーロッパではほぼ同価格)、軽油を使うディーゼル乗用車は、燃費性能のよさと合わせランニングコストで大きく有利になる長所がある。二酸化炭素の排出ゼロを目指し、内燃機関の有効期限(新車搭載時)は早くてあと10年程度と見られているが、かつて指摘されていた振動、騒音、低出力性、有害排出ガス成分などを解消した現行の乗用ディーゼルは、クルマを日常の足として多用する人には、使い勝手がよく経済性に優れたおすすめのエンジン選択肢である。

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