【モスフードサービス】M&Aで「和食」業態に進出、ハンバーガー事業に続く第2 の柱に

日本生まれのハンバーガーチェーンとして、「モスバーガー」の右に出る者はいない。国内に1300店超、海外でも台湾を中心に約400店舗を展開する。

米国発祥の「マクドナルド」との開きは大きいものの、国内2位の座を確固とする。その「モスバーガー」が新たな外食業態の取り込みに動いた。

和食業態のビー・ワイ・オーを112億円買収

「モスバーガー」を運営するモスフードサービスは7月31日、和食を軸に飲食事業を手がけるビー・ワイ・オー(東京都豊島区)を子会社化した。取得金額は約112億円。同社として過去最大のM&Aで、外食ポートフォリオの拡充が狙いだ。

モスフードサービスはどちらかというと、これまでM&Aに距離を置いてきた。過去に買収は数例あるが、いずれもごく小規模。社運を左右しかねない大型案件は今回が初めで、その意味でエポックといえる。

ビー・ワイ・オーは「和食・酒・えん」、「おぼんdeごはん」、「だし茶漬け+肉うどん えん」など、本格的な和食ダイニングからファストフードまで多様なブランド(現在13)を展開する。2026年3月期業績は売上高183億円、営業利益5億3400万円。店舗数は国内125、台湾5の合計130店(6月末)。

モスフードサービスは現行の中期経営計画(2025年4月~28年3月)で、モスバーガー事業に続く新たな柱の育成を重点課題に掲げ、手立てとして積極的なM&Aを打ち出していた。200億円のM&A枠を設定しているが、今回、その半分以上を投入した。

投資会社のクレアシオン・キャピタル(東京都港区)の傘下ファンドや日本ケンタッキー・フライド・チキン(横浜市)などからビー・ワイ・オーの全株式を取得した。

【モスフードサービス】M&Aで「和食」業態に進出、ハンバーガー事業に続く第2 の柱に
ビー・ワー・オーが展開する店舗

2026年3月期、初の売上高1000億円突破

モスフードサービスの2026年3月期業績は売上高6.8%増の1027億円、営業利益25.6%増の65億円。売上高は初めて1000億円を突破し、各段階の利益も過去最高となった。

3カ年の中計では最終の2028年3月期に売上高1080億円、営業利益63億円を掲げるが、営業利益は初年度で目標を前倒しで達成。国内モスバーガー事業の増収効果がコスト増加分を吸収したほか、販売管理費のコントロールの徹底などが奏功した。

売上高についてはビー・ワイ・オーの子会社化で200億円程度押し上げられることになる。このため今後、中計を組み替える必要が出てきそうだ。

足元の2027年3月期は売上高7%増の1100億円、営業利益11%減の57億5000万円を見込む(5月発表時点)。

【モスフードサービス】M&Aで「和食」業態に進出、ハンバーガー事業に続く第2 の柱に
※2027年3月期予想(5月発表時点)

“一本足打法”からの脱却へ

セグメント別の売上構成(2026年3月期)をみると、国内モスバーガー事業82%、海外モスバーガー事業15%、その他事業3%。モスバーガー事業が国内、海外を合わせて97%を占める。

こうした“一本足打法”状態の打開に向けて求められるのが大型の新業態の獲得・育成。今回、ビー・ワイ・オーの子会社化により同社の売上構成比はグループ全体の15%を占め、モスバーガー事業に次ぐ柱がひとまず確立する形だ。

もちろん、これまで新業態の開発に手をこまぬいていたわけではない。アメリカンワッフルが楽しめる「マザーリーフ」、ミスタードーナツ(ダスキン)とのコラボ店舗「モスド」、玄米定食の「玄米食堂あえん」などを展開している。

ただ、店舗数は合わせて20店強(いずれも直営店)にとどまる。

過去にはラーメン事業から撤退

実は、かつてラーメン業態を手がけたこともある。「ちりめん亭」というラーメンブランドを立ち上げ、チェーン展開に乗り出したのは1986年。店舗数は1990年代後半の最盛期に180店を超えまでになった。

ところが、その後、競争激化などで業績低迷。2014年1月、「ちりめん亭」を運営する子会社のトモスを、中華料理・中華総菜のケンコー(現ケンコーホールディングス。横浜市)に売却した。

当時、店舗数はピーク時の5分の1程度に減少。2期連続の営業赤字で、グループ業績の重荷になっていた。こうした中、基幹のハンバーガー事業に経営資源を集中させるためとし、30年近くに及んだラーメン事業にピリオドを打ったのだ。

それから12年ぶりにM&Aに取り組んだのがビー・ワイ・オーを対象とした今回の一件。前回は売り手だったが、今度は買い手となった。

台湾など6カ国・地域に海外出店

モスフードサービスは1972年6月、「モスバーガー」を東京・成増(板橋区)にオープンしたことに始まる。前年7月、マクドナルドが銀座に1号店を出店し、日本上陸を果たした翌年のことだ。

【モスフードサービス】M&Aで「和食」業態に進出、ハンバーガー事業に続く第2 の柱に
モスフードサービスが本社を置くビル(東京・大崎)

日本生まれのハンバーガーチェーンとして、味噌と醤油を使った「テリヤキバーガー」、コメをベースとした「ライスバーガー」などのヒット商品を生み出し、国内に店舗網を広げた。

1991年には台湾に「モスバーガー」を初出店し、海外事業を開始。シンガポール、香港、タイ、韓国、フィリピンを含めてアジア6カ国・地域に現在407店舗(うち台湾297店)を展開する。

ひと頃、インドネシア、中国、オーストラリアにも店舗を構えたが、撤退に追い込まれている。

グローバル化加速へ海外M&Aは?

海外事業は現行中計で「基盤強化期」と位置付け、日本ブランド訴求や店舗改装などを中心に既存進出国・地域の事業再構築に注力中。続く2029年3月期からの次期中計を「戦略実行期」とし、新規市場開拓を含めたグローバル化の加速を見据える。

人口減少を背景に国内市場が縮小に向かう中、外食大手の間では海外に成長の軸足を移す動きが広がっている。

モスフードサービスにおいても今回の国内に続き、海外でもM&A投資を繰り出すことになるのか、要注目となる。

【モスフードサービス】M&Aで「和食」業態に進出、ハンバーガー事業に続く第2 の柱に

文:M&A Online

【モスフードサービス】M&Aで「和食」業態に進出、ハンバーガー事業に続く第2 の柱に
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