印刷大手「大日本印刷」医薬品事業を拡大 キリン傘下の協和ファーマケミカルを子会社化へ

印刷業界2強の一角である大日本印刷<7912>は、創薬支援から医薬品の製造までを担うメディカル・ヘルスケア事業を新たな注力事業と位置付け、M&Aで強化する。

同社は2026年10月に、キリンホールディングス傘下の協和発酵バイオから、原薬製造などを手がける協和ファーマケミカル(富山県高岡市)の全株式を取得し、子会社化する。

大日本印刷グループが保有する研究開発と原薬、製剤、包装の開発・製造基盤に、協和ファーマケミカルの原薬開発・製造技術を組み合わせ、原薬から製剤、包装まで一貫して対応できるCDMO(医薬品開発・製造受託機関)を目指す計画だ。

協和ファーマケミカル買収で新薬原薬を補完

大日本印刷は2026年5月に策定した2029年3月期を最終年とする3年間の中期経営計画に、注力事業への積極投資による事業拡大と、新たな価値の創出や構造改革による収益性強化を盛り込んだ。

電池用部材や自動車部品、医薬品受託製剤などを手がける「ライフ&ヘルスケア」部門では、新たな注力事業の育成策として、2023年に子会社化したシミックCMOとの相乗効果を生かし、原薬、製剤、包装まで一貫して対応する事業を展開する方針を明記した。

今回の協和ファーマケミカルの子会社化は、既存の原薬、製剤、包装の各機能に、新薬向け原薬の開発・製造技術を加える位置付けとなる。

大日本印刷は2026年7月15日、協和ファーマケミカルの子会社化に向け、株主の協和発酵バイオ、その親会社のキリンホールディングスと株式譲渡契約を締結した。

2026年10月に協和ファーマケミカルの全株式を取得し、子会社化後に同社の社名をDNPファーマケミカルに変更する。

大日本印刷によると、医薬品業界では、安定供給や創薬の高度化を背景に、原薬から製剤まで一貫して開発・製造するCDMOの需要が高まっているという。

同社では、グループ会社であるDNPファインケミカル宇都宮がジェネリック医薬品の原薬を、シミックCMOが製剤を開発・製造している。

一方、協和ファーマケミカルは、高度な有機合成技術や製造設備、人材を持ち、新薬の原薬製造を手がける。

協和ファーマケミカルのグループ入り後は、開発初期段階から各工程を連携させ、製薬企業の創薬プロセスの効率化や開発期間の短縮、安定供給体制の強化につなげる。

注力事業に2000億円規模を投資

大日本印刷は、印刷や出版などの「スマートコミュニケーション」部門が、売上高全体の49.5%を占める。

残る売上高は、「ライフ&ヘルスケア」部門が33.9%、ディスプレイ用光学フィルムや半導体製造用フォトマスクなどの「エレクトロニクス」部門が16.6%で構成される。

今後、「ライフ&ヘルスケア」部門では、CDMOビジネスの拡大のほか、自動車関連部材を国内外で拡大し、バッテリー部品の次世代電池向け展開や太陽電池関連製品の増産、機能性フィルムの用途拡大を進める。

主力の「スマートコミュニケーション」部門では、本人認証やID管理などの情報セキュリティー事業を海外で拡大し、写真プリント関連では世界各地の生産・供給体制を強化するとともに、新興国市場を開拓する。

「エレクトロニクス」部門では、有機ELディスプレー製造用の大型メタルマスクの生産能力を高め、大型パネル向け光学フィルムの生産を拡大するほか、半導体用フォトマスクの市場成長に応じて生産体制を強化する。

同社は、2027年3月期から2029年3月期までの3年間に3000億円の設備投資を計画し、このうち2000億円規模をこうした注力事業などに投じる。

M&Aも積極的に展開する方針で、2000億円規模の成長投資とは別に、M&A投資を実施する。

近年のM&Aでは、シミックCMOのほか、2025年にHKホールディング(自動車向け成型部品、産業機器向け加飾・表示部品の製造など)、レゾナック・パッケージング(二次電池向け外装材、包装・容器などの製造・販売など)、Rubicon SEZC(政府向けID認証サービスなど)を傘下に収めている。

印刷大手「大日本印刷」医薬品事業を拡大 キリン傘下の協和ファーマケミカルを子会社化へ
大日本印刷の売上高構成比
売上高は億円未満を切り捨て

印刷技術を起点に事業領域を拡大

大日本印刷は、自社の強みが情報処理技術、微細加工技術、精密塗工技術、後加工技術で構成される高度な印刷技術にあると分析する。

研究開発体制、特許競争力、生産設備の自社開発による高い参入障壁を組み合わせ、印刷の枠を超えた事業領域への展開を進めてきた。

医薬品分野では、印刷技術を起点に発展させた精密有機合成技術を活用し、医薬品の原薬事業を展開している。

2026年3月期は、売上高1兆5125億7100万円(前年度比3.8%増)、営業利益1010億3900万円(同7.9%増)と、3期連続の増収、営業増益だった。

2027年3月期は「スマートコミュニケーション」部門がマイナス成長となるものの、「ライフ&ヘルスケア」「エレクトロニクス」の両部門が伸びるため、4期連続の増収、営業増益を見込む。

大日本印刷は、中期経営計画で積極化の方針を打ち出したM&Aについて、事業戦略上の位置付け、成長性、シナジーなどを精査し、機動的に実施するとしている。

一方で、具体的なM&A投資枠は示さなかった。このことから、案件の規模や時期を限定せず、戦略上必要な買収に柔軟に資金を投じる姿勢がうかがえる。

文:M&A Online記者 松本亮一

印刷大手「大日本印刷」医薬品事業を拡大 キリン傘下の協和ファーマケミカルを子会社化へ
M&Aが生み出すビジネス革新
編集部おすすめ