7月24日、日経平均株価が一時2,000円超下落し、市場に動揺が走っています。米国テック株の変調やAI投資の先行き不安、地政学的リスクの高まりなど、不安材料は山積みです。
米国株急落の引き金となった「AI投資」の副作用
トウシル編集部(以下、トウシル):現在7月24日の午前ですが、日経平均は2%以上下げている状況です。先週金曜日に続いて、週末リスクオフの様相が強まっています。
原油価格の上昇や円安への不安、そして米国テック株の変調など、懸念材料が重なっています。今日は楽天証券経済研究所のシニアマーケットアナリスト、土信田雅之さんと共に、今の相場環境を読み解いていきます。土信田さん、よろしくお願いします。
土信田雅之シニアマーケットアナリスト(以下、土信田):よろしくお願いします。
トウシル:まずは今日の日本株相場、何が起きているのでしょうか。
土信田:米国株市場の大幅下落を受けた流れが大きいですね。特に注目されていたアルファベット(GOOGL、GOOG)の決算が、業績自体は素晴らしかったものの「設備投資の増額」がネガティブ視されたようです。旺盛なAI需要を背景にデータセンターを増設していく方針ですが、これが市場に不安を与えています。
AI投資の財務的懸念とコモディティー化の波
トウシル:業績はいいのに、お金の使い先が多すぎるということですね。アルファベットの株価が下がり、それが日米の株価を引きずり込んでいるという構図でしょうか。
土信田:そうですね。
トウシル:AIの覇権争いについても話題になっていますね。中国のスタートアップ企業が発表した最新AIモデルが、米国の既存モデルを凌駕(りょうが)する性能を見せ、しかも低価格であるという話もあります。
土信田:そうですね。中国のムーンショットが発表した最新モデルは、米国製よりも高性能かつ低価格という「コスパの良さ」で利用申込みが殺到しました。
ここでのポイントは「AIのコモディティー化」です。安価にAIを利用できる環境が整うことで、これまで巨額投資をしてきた「ハイパースケーラー」と呼ばれる企業群が、収益を上げづらくなるのではないかという懸念が、市場の初期反応として下落につながりました。
「DeepSeekショック」の再来か?今後の見通し
トウシル:これまでテック株に資金が集中していたのは、先行投資が将来の収益に直結すると信じられていたからですよね。2025年1月の「DeepSeekショック」と似た状況を感じますが、今回も同様のショックが続くと考えていいのでしょうか。
土信田:今回の件については、そこまでの大きなインパクトにはならないとみています。理由はいくつかあって、まず、中国側から安いAIモデルが出てくることは、前回の経験上、市場もあらかじめ想定していたからです。
また、前回ショック後に株価が下がった後、結果的に米国テック株の強さが改めて証明されました。
AIモデルそのもので稼ぐことには疑問があっても、普及が進むことでデータセンターのニーズが高まり、結果として収益向上につながる。この構造が評価されている限り、相場が崩れ去るような材料ではないと考えています。
日本の半導体関連株への影響と投資戦略
トウシル:日本の株式市場に目を向けると、半導体製造装置や検査装置の企業が多いですが、アルファベットの決算のように設備投資が続くのであれば、日本の半導体株には追い風ではないでしょうか。
土信田:基本的にはポジティブに捉えて良いと思います。ハイパースケーラー側には投資を続けなければならないプレッシャーがありますが、投資が継続する限り、裾野の広い日本の半導体関連や電子部品・素材メーカーは実需の恩恵を受け続けます。中期のトレンドが崩れない限り、下がったところを丁寧に拾う投資スタイルは有効でしょう。
トウシル:本格的な決算発表シーズンを迎えますが、注目点はどこに置くべきでしょうか。
土信田:まずは「投資に見合ったリターンを得ているか」です。競争が激化する中で、その企業が競争優位性を保てるか、ハイパースケーラーであれば財務リスクを管理できているか。また、AIの発展に伴うさまざまな課題に対し、高い営業利益率を保ちながら解決能力を示せるか。業績のトレンドをしっかり見極める必要があります。
地政学的リスクとテクニカル面からの分析
トウシル:トランプ氏の言動など、政治的な不確実性もマーケットを揺さぶっています。今後、株価の上値は重くなるのでしょうか。
土信田:中長期的な上方向の目線を変える必要はありませんが、これまでのようにグイグイ上がるかというと、慎重になるべきです。
要因は地政学的リスクです。中東情勢は和平に向けた進展が見られず、原油価格の高止まりが懸念されます。これが続けばインフレも金利も下がらず、株式の理論株価を計算する際の割引率が高止まりするため、許容される株価収益率(PER)も下がってしまいます。
当面は様子を見ながら緩やかに上昇するイメージを持つのが現実的ではないでしょうか。
トウシル:最後に、テクニカル面から見た重要なポイントを教えてください。
土信田:ずばり「中期のトレンドが崩れていないか」が最大の鍵です。
日足チャートでは下落トレンド基調ですが、週足チャートで見ると、現在の日経平均は13週移動平均線(6万5,799円※7月23日終値時点)の下あたり、つまり3カ月間の値動きの中心線付近で攻防が繰り広げられています。ここがサポートとして機能し、中長期的な上昇トレンドが維持されているかを確認することが、今後の判断基準になります。
トウシル:波乱の展開ですが、決算内容と設備投資の動向を慎重に見極める必要がありそうですね。
(トウシル編集チーム)

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