カーオーディオなどの「JVCケンウッド」無線システム事業でハイブリッド領域へ本格参入

カーオーディオや無線機、プロジェクターなどを手がけるJVCケンウッド<6632>は、無線システム事業でハイブリッド領域に本格参入する。 

2026年7月2日、北米でIP無線(4G・5G、衛星通信、Wi-Fiなどの通信網を使う通信サービス)事業を展開する米国のSan Luis Aviation, Inc.(カリフォルニア州、SLA)を完全子会社化した。

これを機に、従来から手がける業務用無線と、買収によって取り込むIP無線を組み合わせてハイブリッド化し、無線システム事業の成長につなげる。

同社の沿革によると、企業買収は2018年にドイツの映像システムソリューションを手がけるRein Medical GmbHを子会社化して以来となる。

2026年5月に公表した新中期経営計画では、無線システム事業を成長牽引事業と位置付け、同事業で積極的にM&Aを実施する方針を打ち出しており、今後、同分野でM&Aが本格化する局面に入りそうだ。

M&Aを含む戦略投資枠を設定

JVCケンウッドは、前中期経営計画「VISION2025」で無線システム事業を成長牽引事業に位置付けていた。

2031年3月期を最終年とする5年間の新中期経営計画では、前中期経営計画と同様に無線システム事業を成長牽引事業に位置付けるとともに、M&Aを含む積極投資を行い、さらなる成長を目指す方針を示した。

前中期経営計画には盛り込んでいなかったM&A投資についても、効率改善や構造改革などの事業強化策、株主還元と合わせた戦略投資として、総額900億円以上の枠を設けた。

SLAの子会社化については、前中期経営計画期間中の2025年10月に決定し、2026年3月の実施を予定していたが、関係当局の許認可を含む手続きが2026年7月2日までに完了したことから、同日付で子会社化した。

すでに新製品を投入

SLAは、4G・5Gなどの携帯電話網に加え、Wi-Fiや衛星通信でも利用できるIP無線サービス「ESChat」を提供しており、JVCケンウッドは、これまで複数のシステム案件でSLAと協業してきた。

SLAを傘下に収めることで、IP無線サービス「ESChat」を既存の無線端末やシステムに組み入れ、機器から通信サービスまでを一括提供できる体制を整える。

これにより、従来の業務用無線と新たに取り込むIP無線を組み合わせたハイブリッド領域で事業を拡大する。

JVCケンウッドは、ハイブリッド領域では、音声通話だけでなく、画像・動画の送受信や利用者の位置情報の確認などにも対応できることから、警察・消防などの公共安全分野をはじめ、民間企業での利用拡大も見込まれるとみる。

すでにSLAの子会社化に先立ち、2026年3月からSLAの技術を組み込み、業務用無線と4G・5Gなどのブロードバンド通信を自動で切り替えられる「Viking Connect」の提供を始めた。

今後は、北米の警察・消防・救急などの公共安全市場のほか、学校、電気・水道・ガス事業者、交通機関などの民間市場で受注拡大を目指す。

企業買収は8年ぶり

JVCケンウッドは2008年、日本ビクターとケンウッドが株式移転により共同持株会社JVC・ケンウッド・ホールディングスを設立したことで発足した。

その後、事業ポートフォリオの見直しに合わせて買収と売却を進めてきた。



同社の2026年3月期の有価証券報告書の沿革によると、2013年には香港の車載機器会社Shinwa International Holdings(現 JVCKENWOOD Hong Kong Holdings Limited)を連結子会社化し、翌2014年には北米向け業務用無線システムを手がけるEF Johnson Technologies, Inc.を買収した。

2015年には欧州の車載部品会社ASK Industries S.p.A.を傘下に収め、2018年にはイタリアの中継器などの開発・販売を手がけるRadio Activity S.r.l.と、ドイツのRein Medical GmbHを相次いで買収した。

一方、事業の選択と集中も進め、2021年には米国の通信指令・管理システム・機器の開発・生産・販売を手がけるZetron, Inc.を売却した。

2024年には中国の生産子会社Shanghai Kenwood Electronics Co., Ltd.を譲渡し、2026年にはヘルスケア事業から撤退して、ドイツのRein Medical GmbHを売却した。

今回のSLAの子会社化は、2018年のRein Medical GmbH以来、8年ぶりの企業買収となる。

カーオーディオなどの「JVCケンウッド」無線システム事業でハイブリッド領域へ本格参入
JVCケンウッドの主なM&A

北米以外の市場も視野に

JVCケンウッドの2026年3月期は、売上収益3568億6500万円(前年度比3.6%減)、営業利益205億4000万円(同5.7%減)の減収減益だった。

無線システム事業で部品不足の影響により生産・販売が減少したことや、カーオーディオ、カーナビなどの事業が米国の関税措置の影響を受けたことなどが響いた。

同期の売上収益構成比は、モビリティ&テレマティクス分野(カーオーディオ、カーナビなど)が全体の54.9%、セーフティ&セキュリティ分野(業務用無線機器、アマチュア無線機器など)が26.5%、エンタテインメントソリューションズ分野(プロジェクター、ヘッドホンなど)が15.9%となった。

JVCケンウッドは無線システム事業について、巨大市場である北米の公共安全市場でのシェア拡大とともに、欧州、中国、アジア地域などの市場も視野に成長投資を行うとしている。

今後、こうした北米以外の地域でM&Aに乗り出す可能性もある。

カーオーディオなどの「JVCケンウッド」無線システム事業でハイブリッド領域へ本格参入
JVCケンウッドの売上収益構成比

文:M&A Online記者 松本亮一

カーオーディオなどの「JVCケンウッド」無線システム事業でハイブリッド領域へ本格参入
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