「リコー」新規M&Aと並行して買収企業のサービスを横展開 シナジー創出が想定より遅れ

リコー<7752>が、M&Aで取得した企業と既存の販売会社との連携を強める。 

これまでに取得した企業が持つ技術やサービスを世界各地の販売網に横展開し、買収効果を引き出す取り組みに力を入れる。

この取り組みの背景の一つには、既存の販売会社と買収企業との連携によるシナジー創出の遅れがあるとみられる。

同社はこれまでデジタルサービスの拡大に向けて欧米などで企業買収を重ねてきており、2027年3月期~2031年3月期の5年間でもM&Aに2500億円を配分する。

今後は、新たな買収とこれまでのM&Aで得た技術やサービスをグループ全体の成長に生かす取り組みが並行して進むことになりそうだ。

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既存販社との連携に課題

リコーは2026年9月8日に発行した「リコーグループ統合報告書2026」で、欧州の重点施策として「買収子会社と既存オペレーションとの販売シナジー創出」を掲げた。

同報告書では、買収先であるドイツのDocuWareとnatif.ai、スイスのAxon Ivyなどが手がける文書管理やAI(人工知能)を活用した文書処理、業務プロセス自動化などのサービスを、各地域で得た知見をもとに横展開する方針を示している。

こうした取り組みを進める理由の一つに、既存の販売会社と買収企業との連携によるシナジー創出が想定より遅れていることがあるとみられる。

同社は2026年3月25日の「中期経営戦略’26」説明会のQ&A資料で、一般的なPMI(M&A後の統合作業)としてのオペレーション統合は順調に進んでいるとした。

その一方で、既存のリコーグループ販売子会社と買収したオフィスサービス分野の子会社が相互に連携して価値提供を行うことによるシナジー創出は「想定に対して遅れている」と説明している。

こうした課題がある中、同社はこれらの買収企業のサービスを各地域に横展開する方針を示した。

M&Aで得たサービスを世界各地へ

リコーが進める横展開では、各地域の販売サービス会社が顧客との接点を生かして提供価値の幅と質を高め、そこで得た成功事例や買収企業のサービスを他地域にも広げる。

横展開によって成長を加速し、収益性を高めるのが狙いだ。

さらに、横展開を支える取り組みとして、組み合わせる商品やサービスを可能な限りグローバルで共通化するとともに、地域を超えて活用できるモジュールの標準化や共有も進める。

すでに複数の買収企業のサービスを組み合わせた事例も出ている。

米国では、Axon Ivyを中核にDocuWareとAIによるデータ抽出・分類機能を組み合わせ、請求書の受領からERP(統合基幹業務システム)との連携までを自動化する基盤を構築した実績がある。

「リコー」新規M&Aと並行して買収企業のサービスを横展開 シナジー創出が想定より遅れ
リコーが横展開する主な買収企業のサービス・技術

新規M&AはWE・PA領域に集中

リコーは既存の買収企業が持つ技術やサービスを活用する一方、新たなM&Aも継続する。

2027年3月期~2031年3月期の5年間に3500億円の成長投資枠を設けており、このうちM&Aに2500億円を配分する計画だ。

重点を置くのは、働く環境の構築・運用を支援するWE(ワークプレイスエクスペリエンス)と、文書処理などの業務プロセスを自動化するPA(プロセスオートメーション)の二つの領域で、各地域の成長戦略に応じて投資の優先順位を決める。

M&Aなどを通じて、顧客の課題を把握して提案につなげる力や、複数の製品やサービスを組み合わせて提供する際の差別化技術、収益性の高い自社IP(独自の知的財産)の獲得を目指す。

M&Aは売上規模の拡大ありきではなく、シナジーを生み出し、キャッシュ創出力と資本効率を高めるために実行する方針だ。

リコーのM&Aでは今後、買収企業の技術やサービスを地域を越えて広げ、既存販社とのシナジーをどこまで引き出せるかが、買収効果を測る重要な要素になりそうだ。

文:M&A Online記者 松本亮一

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