「朝から晩まで堺雅人を見た」『VIVANT』過剰な番宣に疑問の声も… 初回の視聴率から見えた“テレビドラマ”の勝ち方
「朝から晩まで堺雅人を見た」『VIVANT』過剰な番宣に疑問の声も… 初回の視聴率から見えた“テレビドラマ”の勝ち方

テレビはまだまだトガっている。心に“刺さった”番組を語るリレー連載「今週のトガりテレビ」。

今回は、ついに放送が始まった超大型ドラマ『VIVANT』の放送戦略について考える。

「こんなに番宣してて世界観ブチ壊しで正直怖い」

TBS日曜劇場『VIVANT』が、いきなりとんでもない数字を叩き出した。

7月26日に放送された第2シーズン初回の平均世帯視聴率は18.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)。7月期の民放連続ドラマでは7月27日時点でトップのスタートとなり、2023年に放送された前作最終回の19.6%にも迫る好発進となった。

今の連ドラでこの数字は、かなり異例だ。配信や録画視聴が当たり前になり、「リアルタイムでドラマを見る」こと自体が昔ほど当然ではなくなっている。そのなかで18.8%。さすが『VIVANT』というべき数字だろう。

第2シーズンは、前作の続きとなる第11話としてスタートした。テントへの潜入作戦に参加していた別班員5人が何者かに拉致され、乃木たちがその行方を追ってキプロスへ向かう。さらに声優高山みなみ、パリ五輪柔道女子48キロ級金メダリストの角田夏実がサプライズ出演するなど、初回からネット上でも大きな話題になった。

ただ、今回の『VIVANT』で注目されたのは、ドラマ本編だけではない。放送前からの“番宣攻勢”も、かなりすごかった。

TBSは初回放送に向けて、局全体で『VIVANT』を盛り上げていた。堺雅人をはじめ、出演者たちは情報番組やバラエティー番組に次々と出演。ネット上でも「金曜から出続けてる」「朝から晩まで堺雅人を見た」といった声が上がるほどだった。堺は3日間で13番組に出演し、番宣を行なったという。

さらに放送直前にはバラエティー番組で番宣を行い、生放送特番も組まれた。まさに、TBSが局を挙げて送り出した大型ドラマである。

一方で、そのやり方に戸惑う声もあった。SNS上では、一部の視聴者から否定的な声も見られた。

「こんなに番宣してて世界観ブチ壊しで正直怖い」
「堺雅人を番宣に出させすぎで、ドラマの世界観が壊れるのでは」
「主演俳優の素の姿を見すぎると、シリアスな演技に入り込めなくなる」
「作品の世界観と別の『地』が見えてしまうのは、放送直前には悪手だと思うんだよね」

この感覚は、たしかにわかる。

前作は初回視聴率に「爆死」の声も…

『VIVANT』は、世界観にどっぷり浸かって楽しむタイプのドラマだ。主人公・乃木憂助という人物の謎、人物全員に裏の顔があるのではないかと見せる作り、命のやり取りをする緊張感。その空気に入り込みたい人にとって、放送直前に俳優本人の“素”を見すぎると、少しノイズになることはある。

堺雅人がバラエティーで楽しそうに撮影について話している姿を見た直後に、乃木のシリアスな表情を見る。

『VIVANT』のような濃い作品では、そこに引っかかる人がいても不思議ではない。

しかも前作の『VIVANT』は、かなり情報を伏せた状態で始まった。何のドラマなのか、誰が何者なのか、序盤は視聴者も手探りだった。ドラムのような個性的なキャラクターも、放送後に話題となり、SNSで広がっていった。

つまり前作は、「見てから驚く」ドラマだった。

それに対して今回は、「放送前から絶対に見てください!」と全力で呼びかけるドラマになっていた。内容こそある程度伏せているが、出演者は番宣をしまくる。局を挙げて関連特番や振り返り企画を展開し、ドラマの考察までして、初回前から大きな祭りを作っていく。前作とはかなり違う戦い方である。

ただ、結果だけ見れば、このやり方は大成功だった。

前作の初回視聴率は11.5%。もちろん、これでも十分に高い数字だ。

しかし、あれだけの超大型ドラマとしては低いほうで、一部メディアには「爆死」とまで評されていた。

『VIVANT』は、放送を重ねるごとに口コミと考察で盛り上がり、最終回で19.6%まで伸ばした作品だったのだ。

そう考えると、第2シーズンの初回18.8%はすごい。前作最終回の熱を、ほぼそのまま続編初回に持ち込んだ数字と言っていい。

ここで考えたいのは、「世界観が壊れる」という批判は、本当に『VIVANT』にとって致命的なのか、ということだ。

最近は、Netflixなどの配信ドラマが人気を集めている。硬派で重厚な作りのオリジナル作品も多く、一気見によって作品世界にじっくり没入する楽しみがある。もちろん、それはそれで魅力的だ。

そんな中で『VIVANT』は、あくまでテレビの延長線上にある“テレビドラマ”だということを押し出しているように見えた。放送前から情報番組やバラエティーで盛り上げ、初回放送前後に特番を組み、次回までの1週間もニュースや関連番組で熱をつないでいく。

それも、今回は2クールだ。おそらくTBSは、この先も毎週毎週『VIVANT』の空気を積み重ねていくだろう。

タイパの時代を制した『VIVANT』の戦略

世界観が壊れる。番宣が多すぎる。そう感じる人がいるのもわかる。だが、キャスト本人が番宣に出て、CMにも登場し、局全体で祭りを作っていく。その騒がしさや情緒のなさまで含めて、これはテレビドラマなのだという感じがする。

重厚な世界観にひたすら浸りたいなら、配信ドラマを見ればいい。だが、毎週日曜夜にみんなで同じものを見て、翌日、ああだこうだ言う。テレビに出ているタレントたちもドラマの話で盛り上がり、キャストにあれこれ質問する。

その楽しさは、やはりテレビだからこそ作れるものだ。

今は、いい作品を作れば自然に見てもらえる時代ではない。どれだけお金をかけても、どれだけ面白いものを作っても、初回を見逃されてしまえば、その熱は広がりにくい。

しかもタイパの時代、時間を無駄にしたくないから、みんな「いいもの」しか見たくない。

「評判のいいもの」しか見ないという空気がある。

だからこそTBSは、世界観を守ることよりも、まず「これは超大作ですよ!」「見ないと損ですよ!」「初回を見逃せないですよ!」という空気を作ることを選んだ。その賭けには、ひとまず勝ったと言えるだろう。

『VIVANT』は、重厚で硬派なドラマではない。局全体を巻き込み、キャストを番宣に出し、キャストが登場するおちゃらけたCMも挟み、過剰なまでにはやし立てて盛り上げる。

これこそがテレビドラマ。今の地上波ドラマの勝ち方なのかもしれない。

文/ライター神山

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