部下からパワハラを告発された横浜市の山中竹春市長(53)が8月28日、「いったんけじめを取るということで辞職しなければならない」と表明し市議会議長に辞職届を提出した。
市が設置した第三者委員会から「重大なパワハラ行為」を認定された後も山中市長は続投に意欲を見せていたが、不信任決議採択が確実な情勢になり態度を変えた。
9月議会で可決が確実な情勢になったところで市長は辞めると言い出した
28日に記者会見をした山中市長は冒頭で辞職すると表明したが、理由は分かりにくい。
「今回(第三者委に)認定された言動について、私自身の問題として深く反省を続けてまいります。8月14日には市議会の3つの会派から辞職を求める申し入れをいただきました。これまで市政をともに進めてきた皆様からそのような厳しい判断がなされたことを大変重く受け止めております。
わたくしは、横浜市長の職を辞するという重大な決断をいたしました。昨年(の市長選で)、市民の皆様とお約束させていただいたことがまだ成し得てない一方で、しかし、今回のことにけじめをつけるべきだと考えました」(山中市長)
記者からは最初に「辞める決め手」は何かと質問が出た。市長は「市政の混乱を招いたこと」と即答したが、それはどのタイミングの話かと次の記者がたずねた。
この質問の背景を別の社会部記者が解説する。
「横浜市政の混乱は1月に久保田淳人事部長(現こども青少年局企画部長)が市長のパワハラを顔出しで告発してからずっと続いています。
7月30日に第三者委が告発内容をほぼ認める調査報告書を公表しましたが、市長は8月13、14日の市議会総務委員会で『認定事実を全て受け⼊れます』と言って謝罪しながら、給与を削減すると表明して続投する意思をうかがわせました。
26日までには、市長が辞職する意向を示さなければ、主要3会派が9月議会で不信任決議案を提出する方針を固めたと報じられました。9月議会で可決が確実な情勢になったところで市長は辞めると言い出したのです」(記者)
どのタイミングで市政の混乱を認識したのかとの2番目の質問に市長は「市民の皆様の信頼を損なったと考えたことです」と返答。
「ポンコツ」「人間のクズ」「スペックが低い」…
だが第三者委が認定したパワハラの内容はゾッとするものが並んでいる。
多くの職員からも聞き取りをした第三者委はまず、市長が部下を怒鳴ったり書類を机にたたきつけたりしたほか、説明を聞く最中に突然背を向けて他人と話し始め「透明人間や空気のような存在」として扱った例を確認している。
久保田氏に「裏切ったらこれだからな」と指で銃撃する仕草をしたことや、別の職員を「なんでそんなにコイツにバイト代与えてるの?」とばかにした発言をしたことも事実と認めた。
罵詈雑言はひどい。「ポンコツ」「人間のクズ」「おばさん」「スペックが低い」「頭が悪い」「〇〇(前副市長)の血が流れています。血は争えませんね」「バカ」「アホ」「脳みそが筋肉」「目が死んでる」「55歳以上はみんな頭が固くて駄目」…。録音などの証拠があるものだけでも聞くに堪えない内容だ。
相当数の職員が勤務時間外に電話などで指示を受けたと答えた。深夜や早朝、土日祝日もお構いなしだ。
そして職員を圧迫したのがあからさまな人事の脅しだ。第三者委は「〇〇(部署名)に飛ばしてやる」との発言を見聞きしたとの証言を多数確保したという。
ある部長を挙げ、一定のキャリアを重ねた幹部職員なら到底想定されない部署に送れば「かなり粛清感強いでしょ」と発言したことや、「A(職員)、来年飛ばすからね。B、C、Dは全部どっか飛ばす」「〇〇を上げるってことは、もう生涯ない」と言い放った例も確認。
「市長、怒ってますよっていうことを、これ飛ばされるっていうような恐怖感を与える、人事部からのジャブが与えられないか」と久保田氏にもちかけたりもしていた。
ほかにもハサミのように指を2本立てて「チョキチョキ」と切る仕草を見せていたといい、第三者委は“仕事や人間関係から切り離す”との意味で行なわれたことが多いと判断している。
「市長周辺では再出馬する案が浮上している」
市政に影響が出そうな“嫌がらせ”も事実と認定された。気に障った幹部職員には政策説明をさせない「市長室出入り禁止措置」だ。
市長室に入れる人間が限られ人事にも支障が出ていたこの仕打ちを久保田氏も受けていた。市長を補佐した副市長(退任)のことを「ダチョウ」と呼び、「バカだからおれのアポとか取りたがって。取ってないけど」と言ってのけたという。
約376万人と市町村で最多の人口を抱える自治体が、どこのブラック企業かと見紛う劣悪な労働環境だったことになる。第三者委は「多くの職員が不安や恐怖を感じている。想定を大きく超えた人事異動の対象となったことで精神的な不調や体調不良に陥った、また退職にまで至った例があることが認められる」と報告。
「圧倒的に優位な地位にある市長が、これほど多岐にわたる不適切な言動を日常的に、かつ継続して行なっていたという事実は極めて深刻である」と市長の言動を厳しく批判している。
ここまで言われた山中市長は最近、記者会見に応じず、公の活動も極度に減らしてきた。
やっと出てきた28日の会見で辞任すると言ったため、表明していた給与削減ができなくなる中で退職金はどうするのかと聞かれると「考えが及んでいない」と答え、受け取りを辞退するとは言わない。
そして出直し市長選出馬の有無をたずねる質問にも「今後のことについて考えが及ばないのが本当のところです。私自身、まずはしっかりと反省を続けることが大切だと思います」と答えを避け続けた。
「市長周辺では再出馬する案が浮上している」と8月中旬に報じられており、会見での発言はこの動きに沿ったもののように見える。
「山中市長の言動、人権感覚を持ち法令を遵守したものに改めてほしい」として告発した久保田氏は市長の辞職表明に
「市長に就任されてから様々な方のご忠告に耳を傾けるとともに、ご自身の言動を省みてくださっていれば、このような事態には至らなかったのではないかと残念に思います。
現時点でも私を含む多くの被害者への謝罪や被害の回復はほぼ実行されていません。市政の混乱の収拾やガバナンス体制の再構築等とあわせて、すみやかに進んでいくことを望んでおります」
とのコメントを出し、出直し市長選に若者が投票に行ってほしいと呼びかけた。
劣悪な職場環境の改善を誰が担うのか。巨大政令指定都市のトップを選ぶ出直し選の幕が上がる。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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