沖縄県のある島々では、人がゴンドラに入り、クレーンで吊り上げられて船から港へ上陸するというワイルドな方法が採られています。日本でここだけという方法は、なぜ生まれたのでしょうか。
沖縄県のある島々では、大きな箱のような搬器(ゴンドラ)に人を乗せ、その搬器ごとクレーンで吊り上げてフェリー甲板と港とのあいだを運ぶという、なんともワイルドな上陸あるいは乗船が行われています。
南大東島におけるフェリーからの「クレーン上陸」。天井のないゴンドラはおもに晴天時に使われる(画像:南大東村観光協会)。そこは沖縄本島から約350km東に海を隔てた南大東島(沖縄県南大東村)、そしてそこから約10km北に浮かぶ北大東島(同・北大東村)です。
沖縄本島と両島を結ぶフェリーを運航する大東海運(同・那覇市)の担当者も、「日本でも両島だけ」というこの上陸/乗船方法は、なぜ生まれたのでしょうか。大東海運に聞きました。
――船からクレーンで上陸というのは、具体的にどうやっているのですか。
岸壁から5mくらいの海上に船を係留し、港のクレーンを操作して、人が乗るゴンドラを運びます。ゴンドラには天井のないタイプと、天井がついたタイプの2種類があります。まず旅客を下ろしたのち、手荷物や郵便、コンテナ、車両などを、すべてクレーンで吊り上げて荷役します。
――なぜそのようなことをしているのですか?
南北両島とも断崖絶壁に囲まれ、フェリーが接岸できる船着き場がないためです。各島にみっつずつある港すべてで同様です。
――漁船など、ほかの船はどうしているのですか?
漁船は係留していません。漁に出る際は、クレーンで吊り上げて海上へと下ろします。近年になって南北両島に漁船が接岸可能な漁港が整備されましたが、そこでも基本的に係留はせず、クレーンを利用しています。なお、当社船のような大型船は漁港に入れません。
――運航スケジュールについて教えてください。
那覇港と南北大東島のあいだを1航海4日かけて往復しますので、各港を出航するのはおよそ5日に1回の頻度です。那覇港からは17時に出航し、翌朝8時に南北どちらかの島に到着します。その入港順は通常、南北で平等になるよう交互に変え、先に着いた島で1時間以内に荷役を終えて出港し、次の島に向かいます。ただ、海域はしけやすいうえ、南北大東島周辺は「台風銀座」であることもあり、出港できない日が2週間ほど続くこともあります。
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大東海運におけるクレーン乗下船の背景には、担当者いわく「劣悪な港湾事情」がありました。

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