体制に都合の悪い宗教を“邪教”として認定し、迫害している中国だが、異論を挟む余地のない正真正銘の邪教も存在する。

 自らを釈迦の生まれ変わりと信者に騙り、洗脳した女性信者に性的暴行を繰り返していた新興宗教「華藏宗門」の教祖、呉沢衡と教団関係者が、広東省珠海市で逮捕された(「人民網」7月15日付)。



 5年前から信者数を急激に伸ばし、国内外に数千人の信者がいたとされる同教団。教祖として絶対的な存在だった呉容疑者は、複数の女性信者に自らとの性行為を強要し、少なくとも6人の子どもを出産させていたという。

 20代の元信者の女性によると、呉容疑者は「男女が一つになることで仏教の悟りが開け、最高の力を手に入れることができる」と詭弁を弄し、多くの女性信者に関係を迫っていたという。

 その言葉を信じてしまったこの女性は、呉容疑者の子どもを3回にわたって妊娠。しかし、呉容疑者からもらった「神の水」を飲むと、流産してしまったという。神の水の正体は、中国の薬局で市販されている堕胎薬だとみられている。


 また、当局の調べによると、この呉容疑者は弟子をカモにした詐欺も行っていたようだ。新しい信者を獲得すると、入会費、献上費、グッズ購入、僧衣購入、数珠購入などの名目で金銭を巻き上げていた。さらに、2011年の東日本大地震の直後には、「地震除け」と称して、400円以下で市販されている携帯用の仏具グッズを、約2万円で販売していた。

 強姦と詐欺の容疑で逮捕された呉容疑者の元からは、1億4,000万円相当の現金や、信者から巻き上げたとみられるマンションの権利書などが見つかったという。

 中国ではここ数年、新興宗教絡みの犯罪が多発している。14年5月28日には、山東省のファストフード店内で、新規の信者獲得のため勧誘をしていたカルト教団「全能神」の信者が、店内の一般客と口論となり、この客を殺害するというショッキングな事件が起きたことも記憶に新しい。


 中国では、極度の競争社会にさらされる若年層や、一向に縮まらない格差に悶える貧困層を中心に、心の拠りどころとして宗教を求める人々が増えている。そんな社会的弱者をターゲットにした、カルト教団やインチキ宗教が跋扈しているのだ。

 また、一部のカルト教団は、潤沢な資金をもとに、日本にも進出しているともいわれており、日本人も対岸の火事ではいられない。