書籍『東京ポッド許可局~文系芸人が行間を、裏を、未来を読む~』には第1回から第100回の放送の中からセレクトされ、加筆・再編集された10編が収録されている。いずれも「文字として読むことを前提に改編された、生まれ変わった本編」だという。

前編はこちら)

ーー書籍に収録する放送回はどのように決められたんですか。

タツオ 最初の時点で「メディア論」でいきましょうというコンセプトでご提案いただいてたんですよね。
マキタ どの回にするかは基本的に新書館の担当編集者、村沢さんにお任せ。
タツオ もともと結構なヘビーリスナーだったらしいんです。しかも、編集者としてのバランス感覚もある。「自分たちで選んでください」って言われていたら、感情移入しすぎて選べなかったかもしれない。
内容に関しても、バッサリ削除したところもあれば、大幅に加筆したところもあります。注釈はすべて鹿島さんの書き下ろし。
マキタ 日本初の“注釈芸人”の誕生ですよ。
鹿島 “おもしろ注釈”ですでにおなじみの吉田豪さんにも献本しましたから。
マキタ アハハハハ。
鹿島 今夏の思い出は「注釈」ですよ。
7月中旬にみち局長の家に集まって合宿をしたときに僕は注釈を担当したんですが、ひとりになってから読み返したら、どうも違う。結局、一から全部書き直しました。あの合宿に意味はなかったですね。
タツオ 全員でゲラ読みしましたね。最初はマキタさんご自慢のMacBook Proでやっていたけれど、最初の1本終えるのに5~6時間。
マキタ 買ったばかりだったからね。
まずは、起動させてしばらくうっとり。ボタンがたくさんあるから、これを押すのがまた勇気がいる。
タツオ ボタンって!
マキタ ああ、キーボードだっけ。それからおもむろにYouTubeを見ちゃったりして。
鹿島 ゲラチェックは面白かったよね。自分たちがしゃべった話なんだけど、活字で見るとまた違った面白さがある。

タツオ 改めて読むと、新しい発見がありましたね。

ーーとくに印象に残っている箇所を教えてください。

マキタ 「ピン芸人=素数論」の中で、伊東四朗のモノマネをしているくだりが出てくるんですよ。活字なのに。
鹿島 あった。
マキタ しかも、全然似ていなくて、「伊東五朗ぐらいだ」「ハハハハ」と乾いた笑いになっている。
なぜ、ここを残したのか(笑)
タツオ 「排泄映画論」の田中邦衛問題もアツいですよ。
鹿島 「ウル」という言葉が誕生した回だね。あれは盛り上がった。
マキタ 完全にイチャイチャしてますね。
タツオ ガールズトークならぬ、ボーイズトークのノリなんですよね。
マキタ 「おすそわけガム論」に出てくる「鹿島局員は田舎ではバナナの子なの?」「うん。
バナナとリンゴの子」から始まる一連の会話も凄いよ。
鹿島 「要するにフルーツっておじいちゃんの家に行くと盛りだくさんだからね」と続けているんだけど、何が「要するに」なのかさっぱりわからない。
マキタ なのに、僕が「仏壇もあるしね」と受けて、さらにタツオが「お年寄りのフルーツ信仰ってすごいですからね」とたたみかける。どうして、そんなにしみじみしちゃったのか。
タツオ イリュージョンみたいな会話になっている。
マキタ タツオが長年研究してきた「手数論」が活字になったことも意義深いね。
タツオ “屁理屈芸”の本懐は、みんながモヤモヤしていたり、うっすら気づいていることを言語化することだと思うんですよ。「東京ポッド許可局」は、それを意識的にやっている。「前からオレも思ってた!」「同時多発的な現象」と思って貰えれば、試みとしては成功。だから盗用もされる、と。
マキタ 極めていい加減なセッションの中から生まれてきた「真っ赤なスポーツカー現象」や「ウル」、「悪性のエンターテインメント」といった言葉が、ある程度の普遍性を獲得し、便利な言葉として使われるようになったらいいよね。
鹿島 みんなM-1グランプリをマジメに見ているんだなという発見もありました。そう考えると、僕らがやってることはホント、時代に合ってますね。M-1ありがとう!

ーー手弁当でスタートした“実験の場”からアーカイブの有料化、そして書籍発売。では、今後の「東京ポッド許可局」が目指すところは……?

マキタ マツコ・デラックス化し、バラエティに進出するのか、「周辺」から語り続けるのか。大きく分けると二つの選択肢があります。
タツオ マツコ・デラックスはもともと、ナンシー関の後釜的存在だったんですよ。つまり、出発点は我々と同じ、評論芸。ところが、最近ではバラエティ番組のいじられ役としてメディアの表舞台に進出している。
マキタ マツコ・デラックスを先行例としてとらえるならば、来年僕らは誰かがオカマになってるかもしれません。オカマという刀はよく切れますから……。
鹿島 万能ナイフだよね。
タツオ 僕自身は次のステージはなくてもいいと思ってます。このポッドキャストに関して言えば、いい意味でマンネリズムがあってもいいかなと。あらすじは同じでも、演者や時代が変わることでまったく違う趣きが生まれる古典落語のように、3人のアレンジ力だけで毎週、毎回楽しんで貰う。
鹿島 そろそろ大物業界関係者の耳にも入る頃だと思うんですよ。その中の誰がいちばん先に声をあげるのかによって、変わるような気がします。「お前ら、面白いな」と褒められるのか、それとも「いいかげんにしろ」と怒られるのか……。無名の芸人がはじめたポッドキャスティングがどこまでいくのかがちょっと楽しみ。
タツオ 無料で配信していたコンテンツが、どこまでビジネスモデルとして成立しうるのかというひとつの実験でもあるでしょうね。
マキタ そのビジネスモデルで特許をとって、そのノウハウを後進に有料で委譲する“梁山泊”みたいなものをつくるという第三の選択肢も見えてきたな。
タツオ・鹿島 それ、ねずみ講ですから!


ポッドキャストを聞き、書籍を読み、イベントに足を運べば、一粒で3つ美味しい「東京ポッド許可局」。11月には本書発売とマキタ学級のNewミニアルバム「電動式マキタ」発売を記念した合同リリースツアーが大阪と名古屋で開催されます(残席わずかのため、予約はお早めに)。

そして、最後に著者サイン付きの書籍『東京ポッド許可局~文系芸人が行間を、裏を、未来を読む~』本を3名の方にプレゼント! 応募方法についてはコチラをご覧ください。(島影真奈美)