脚本:西田征史 演出:藤並英樹

常子(高畑充希)が会社をクビになる理不尽な場面を、スローモーションで見せて煽る。
不倫が判明した時すぐに辞めさせられた女子社員と同じく、あっという間に退社となるその日、戦犯・かをる(我妻三輪子)はタイピスト部屋にいない。
早乙女(真野恵里菜)「この御時世、まっすぐに生きていても報われないことばかりだと思うの。でも負けないでください。決して」と励ますが、常子の表情は硬い。
「いまのわたしはその言葉を受け止めることができません」と長年勤めたタイピスト部屋を後にする。
親切な給仕・坂田徳之介(斉藤暁)がありったけのキャラメルをくれる。入社したばかりで意地悪されていた時、このひとだけがずっと見守ってくれていて、キャラメルを「ごほうび」にくれた。だが、いまは、キャラメルがどれだけあってももう常子の絶望は埋まらない。こういう無意識な残酷さを意識して描いているとしたらおそるべき感性である。
さて、お寺で気持ちを落ち着けて帰宅した常子は、「会社くびになっちゃったんで」と明るく振る舞う。「意外にへっちゃらでさ」なんて痛々しい。
弱り目にたたり目。
転がり出すと早い早い。突如、深川の商店街の寄合で、森田屋が高崎に移転すると発表、まつ(秋野暢子)が大激怒。森田屋一同による大げさな深刻芝居へと突入だ。
照代(平岩紙)は「家賃すらはらえないんですよ」と姑・まつを説き伏せようとし、小橋家には「皆さんも相談もなしにごめんなさいね」といきなりばっさり。本来優しい照代も自分たち家族を養っていくのでせいいっぱいなのだ。ものすごくてきぱきしゃべってことを進めようとする平岩紙。「一族郎党に裏切られた」と嘆くまつに、照代は、富江(川栄李奈)が「身ごもっているんですよ」とてきぱきと爆弾発言。
相手はまさかの──。
怒濤の展開だ。この1週間で編集者篇に進まないといけないのか、一気に問題を噴出させ、常子たちが動かざるを得ないように力技をてきぱきと繰り出していく西田征史。森田屋がいなくなっても小橋家は青柳家に戻れるからさほど辛くないっていうのもなんだかご都合良過ぎる感じではあるのだが。
(木俣冬)