日本中にファンがいる動物園が、福島県二本松市に存在する。その動物園、東北サファリパークは、ユーモラスなツイート内容から注目を集めて、地方の動物園にもかかわらず、全国区の認知度に。いまや県外からの来場者も少なくないという。一体どのようにTwitterを運用しているのか? 東北サファリパークのスタッフに、その心構えを聞いてみた。

連日のように数千、数万リツイートされる


東北サファリパークに聞く“Twitter運用”「イベント申し込みない」自虐から大逆転
ペンギンの“出川さん”

東北サファリパークの公式Twitterアカウントが話題になったのは、昨年12月のことだった。同動物園では、クリスマスイベントの一環として、「サプライズお手伝い企画」を初めて実施。誕生日や記念日のお祝い、プロポーズのためのサプライズを、アシカやサルたちが手伝うというもので、貸し切りプランまで用意するという気合の入れようだったのだが、スタッフの予想に反して、申し込み状況は芳しいものではなかった……。

そこで東北サファリパークの公式Twitterアカウントは、自虐ネタを連発。ペンギンの“出川さん”の画像も交えて、「サプライズ企画お申し込みの電話が鳴らないことで悲しみに暮れるスタッフN」や「今日も電話は鳴りませんでした」、「もはや出川さんの可愛いさを利用することに躊躇はなくなってきた私たち…私たちは諦めない」などと嘆くツイートが話題をよび、連日のようにツイートが数千、数万リツイートされる状況となった。







サプライズ企画が成功して、約3カ月経った現在も、ツイートが数千ふぁぼを集めることは少なくない。自虐ツイートをチェックするうちに、その中で紹介される“出川さん”を始めとした動物たちに愛着が湧いた人々が多かったということだろうか。すっかり固定ファンがついているようだ。

東北サファリパークに聞く“Twitter運用”「イベント申し込みない」自虐から大逆転
ペンギンの“出川さん”


はるばる九州から来た来園者も


多くの企業アカウントが「本当はこうなりたい。しかし、それが難しい……」と夢見る理想的なコースを、東北サファリパークの公式Twitterアカウントは完璧にたどっていると言っても過言ではないだろう。一体どのようにTwitterを運用しているのか? 当該アカウントの更新をメインで担当している藤井さんに話を聞いてみた。

藤井さんは、昨年のクリスマス企画について「Twitterで話題にならなければ、お申し込みをいただけていなかったのではと思います……。おかげさまでクリスマスイベント中は、昨年以上に多くのお客様にご来園いただき、盛り上がりをみせました」と振り返る。Twitterから興味を持った人も多く、なんと九州からはるばる来園してくれた人もいたそう。Twitterが来園者数に確実につながっている実感を得ている。

Twitterを始めたのは、「当園の魅力を伝えたい」という一心だった。とくにルールらしいルールは設けず、複数のスタッフが自由に投稿する形でTwitterを運用しているが、自由ゆえに投稿頻度に差が生まれてしまう。そのため全体のバランスを鑑みて、「写真をください」と声をかけるようにしている。また、クリスマス企画の宣伝のように、流れをトータルで考えている場合は、他の動物を載せてもらうタイミングなども相談しているそうだ。

ちなみに、アシカやペンギンの登場回数が多いのは、藤井さんの担当する動物たちだからだとか。「うちの子一番なので、圧倒的にペンギンたちが多いです(笑)」と茶目っ気たっぷりに明かしてくれた。

Twitterの運用で難しさを感じている部分や、今後の課題は何かあるのだろうか?

「思いがけないものがヒットしたりしますし、逆に自信あるツイートがいまいちだったり……。そういったところに難しさは感じます。自分たちで言うのも悲しいですが、まだまだ『東北サファリパーク』の知名度は低いです。なので、もっともっと魅力を伝え、幅広く多くの方に知っていただけるように、Twitterには力を入れていきたいです。そのためにも、ツイートに創意工夫をしていければと思います」

「動物たちの魅力を伝える」、シンプルな目標


正直なところ、Twitterでのブレークぶりと裏腹に、想像していたよりもゆるい運用をされているようだという驚きがまずあった。しかし、細かなルール設定よりも、「東北サファリパークにいる動物たちの魅力を伝える」というシンプルなゴールに向かっていく、ブレない歩みが結果につながったということなのだろう。SNSから情報発信をしようとしているが、なかなか上手くいかない……と悩んでいる人は、今一度、「そのアカウントを通じて何をしようとしているのか」という目標を再考してみるのがいいかもしれない。今後も東北サファリパークには、楽しいツイートを続けてほしい!

(原田イチボ@HEW)