
持病がなくても、病院に通うことがなくても、医療費控除が受けられる可能性がある「セルフメディケーション税制」。2021年までの時限措置で、医療費控除の特例だ。
実はこの制度、昨年の開始時にさまざまなかたちで告知や紹介がされてきたが、認知度は今一つ。9割もの人がこの制度を知らないそうだ。利用するには、指定された商品を購入した証明となるレシートなどの保管が必要。税金を安くし、還付を受けるには、確定申告が必要だ。
対象薬は約1600品目
「そもそもスイッチOTC医薬品に指定された市販薬がどれかなんて見分けられない」という点が難しく思えるが、実はほとんどの薬局などでは一目で分かる印をつけている。購入時は商品棚、購入後はレシートにマークをつけているドラッグストアがほとんどだ。もし不親切にどちらにも印が付かない薬局を利用してしまった場合、厚生労働省のサイトでも確認できる。対象薬は約1600品目もあり、意外と身近でよく使うであろう薬品も多い。例えば「ロキソニン」や「ボルタレン」などの痛み止め、「新ルルA」などの風邪薬や鼻炎薬、「ガスター10」などの胃腸薬、そのほか軟膏やシップなど、よく聞く名前の薬も対象に含まれている。わかりにくい場合は薬剤師に尋ねると、きちんと教えてくれるだろう。

いくら以上買えば使え、どのくらい税が得になるのか?
よく、「医療費控除は10万円以上から」などといわれるが、セルフメディケーション税制の場合はその年の1月1日から12月31日までの間に買った対象薬の合計が1万2000円を超えると利用できる。
計算式も難しくなく、「対象薬の合計購入金額-12000円」ででた数字が所得から控除される。上限は10万円まで。
通常の医療費控除と併用はできないので、10万円を超える利用をした人や、市販薬と医療費、交通費などを合算すると10万円を軽く超える人などは通常の医療費控除を利用したほうがよい。通常の医療費控除ならスイッチOTC医薬品以外の市販薬や病院の治療費、交通費など該当するものが幅広く、より多くを医療費として含むことができるからだ。「セルフメディケーション税制の対象は、スイッチOTC医薬品のみ」ということを覚えておいてほしい。

このセルフメディケーション税制をつかうと、いくらの恩恵があるのかを考えてみよう。年間10万円の対象市販薬を購入していた場合、控除額は1万2000円を引いた8万8000円。ここに自分の所得税率や住民税率(ほとんどの場合10%)をかけると得する税額が分かる。所得税率10%の人ならば、所得税8800円、住民税8800円の合計1万7600円の税が安くなる(復興所得税含まず)。
「1万2000円以上購入している」だけでは利用できない
この税制は、対象薬を1万2000円以上購入しただけでは実は使えない。健康診断や各種健診、予防接種などの健康管理をしていることが条件。予防したり、注意していても起こる軽い体調不良は、市販薬で治そうという趣旨の制度だからだ。ただ、もしこの制度のせいで病気の人が病院に行かなくなったりしては困るので、健康であり、病気の予防もしているチェックが入るわけだ。
この条件を満たす健康診断などは、
1.特定健康診査(いわゆるメタボ健診)
2.予防接種
3.定期健康診断(事業主健診)
4.健康診査
5.がん検診
であり、どれか一つでも実施していることが条件。
このような制度だが、社会保障費、税金が年々高くなっている今、少しでも税を取り戻すためにはぜひ活用したい制度だ。昨年分の対象商品のレシートが必要なので、今年の確定申告で利用できる人は少ないだろうが、ぜひ今年は意識してレシートを保管し、来年の確定申告で税金を安くしてもらおう。
(横山光昭)