繁華街での番組収録ロケに、通行人がシラけた反応を示していた。9月19日の夜、キャバクラやガールズバーが立ち並ぶ東京・町田の繁華街で記者が遭遇したのは、日曜昼の情報番組『噂の東京マガジン』(TBS)のワンコーナー「平成の常識 やって!TRY」の収録現場だった。

このコーナーは通行人をつかまえてその場で料理を作らせ、失敗する様を面白おかしく取り上げるもので、この日は若い女性にロールキャベツを依頼していた。

 しかし、現場は水商売に携わる従業員が慌ただしく行き交い、酔客も多く混雑。場違いな番組ロケに「なんでこんな場所で」と迷惑そうな顔をする者が続出。さらに見物に足を止めた男性のもとに客引きのキャッチが現れ、「キャバクラ、どうですか?」と誘い始めるなど、なんとも妙な空気が出来上がっていた。そのうちに、このキャッチの勧誘が原因で、大声が飛び交い始めた。

「おまえ、この前はひとり3,000円って言ったけど、案内された店は金額がぜんぜん違ったじゃねえか!」

 酔った男性は以前、キャッチの誘いに乗って「ぼったくり」被害に遭ったと主張。
これにキャッチは反論して「誰かと間違えてるでしょ。俺が言ったという証拠を出せよ」と乱暴に言い返して、一触即発。これにはロケの見物人たちが収録風景そっちのけで気を取られ始め、その場にいた女性2人組からは「ヤラセ番組より、こっちの方がリアル」という声が上がって、周囲が失笑した。

 番組で料理をさせられた女性は学生で、後で話を聞いたところでは「町田に遊びに来ていたら声をかけられ、いきなり料理をさせられた」とヤラセではなく“ガチ”を証言。ただ、同コーナーは視聴者の間から疑わしい番組作りが指摘されていたことでも有名だ。

「いかにも料理のできなそうなタイプを選んでいるように見える」
「上手にできると放送されないから、出演者がわざと大げさに失敗している感じがする」
「派手に失敗したものだけを笑い者にするのはひどい」
「最近の若い女性が料理もできないということを強調したい悪意がありすぎ」

 そんな声がネット上でも聞かれるが、ジャーナリストの片岡亮氏はこれは「テレビでは昔からよくある手法」だという。


「テレビ番組は結論ありきで企画が進められることが多いので、面白い失敗があることを前提に作るものが少なくありません。10年以上前、テレビ東京がやっていた『クイズ赤恥青恥』では、街行く人に常識問題を出して、大ハズレなものだけを集めて放送していたことがありました。収録現場を見ると、ディレクターが回答者に『もっと面白い答えを言って』と何度も答えさせ、正解から一番かけ離れたものだけを切り取って放送していたんです」(片岡氏)

 そんなテレビ側の意図的な番組作りに冷めた見方があるからか、この日は「すぐそこにあるリアルなもめごと」の方が注目を集めていた。

 キャッチに怒鳴っていた男性は、最後には「テレビ収録に足を止めたせいで、余計にもめたじゃないか」と不満を言って去っていき、この様子を見ていた飲食店の従業員らしき男性は「夜の街を歩く若い女性は料理ができなそうってことで、この場所を選んだのかな」と話した。

 放送では上手に編集されるのだろうが、収録スタッフが気の毒なぐらい、現場では歓迎されていない様子だった。
(文=鈴木雅久)