■債権の種類ごとに
貸倒引当金ですが、この引当の金額はその債権の種類によって2種類に区分されます。一つ目は、一括評価金銭債権といわれる債権のグループです。この金銭債権は、回収の不安がない正常な債権など、普通の債権です。
もう一つは、個別評価金銭債権です。これは債務者が更生手続き申立てをした場合など、回収に疑義が生じた一定の債権を意味します。これらの債権は、より多くの貸倒引当金を計上することができます。
貸倒引当金の計算上、まず両者を分けて計算しなければなりません。
■一括評価金銭債権
実務で一般的な一括評価金銭債権の貸倒引当金について解説しますが、この場合の引当金の計上額は、実積率と法定繰入率のいずれかで計算します。前者の実積率は、過去3年の金銭債権のうち、どれだけが貸し倒れたのか、その実績で計算する方法です。
実務では、法定繰入率がほとんどです。これは業種ごとに定められている繰入率をもとに貸倒引当金を計算する方法です。具体的には、以下のとおりとされています。
卸売業及び小売業(飲食店業及び料理店業を含みます。
10 / 1000
製造業
8 / 1000
金融業及び保険業
3 / 1000
割賦販売小売業並びに包括信用購入あっせん業及び個別信用購入あっせん業
13 / 1000
その他
6/1000
■雀の涙しか認められないが
ご覧いただくとわかる通り、法定繰入率は最大でも1.3%ですから、雀の涙程度しか計上することができません。このため、あえて計上しない会社もありますが、節税が限られている昨今、このような処理は数少ない節税ですので、税理士と相談しながら適用を考えるべきと考えられます。
■専門家プロフィール
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。