2015年にバンダイナムコエンターテインメントから発表されたProject Aces開発のPS4向けシリーズ最新作『エースコンバット7』。本稿では、人気フライトシューティングシリーズ『エースコンバット』の歴代シリーズを、アーケード作品も含めて一挙に紹介し、最新作がどのような立ち位置にあるのかを解説します。


『エースコンバット』のナンバリングタイトルは、基本的に我々が生きる地球とは別の架空世界(ストレンジリアルワールド)を舞台にしています。また現実の地球をテーマにしたタイトルも存在しており、『エースコンバット アサルト・ホライゾン』と『エースコンバットX2』、『エースコンバット インフィニティ』の3タイトルがそれに当たります。

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■『エースコンバット』

1995年6月にPlayStationでリリースされたシリーズ第1作目。あらすじは、テロリスト集団によって軍部の一部がクーデターを起こしたため、傭兵集団がクーデター軍を鎮圧するために協力するというもの。登場機体は当時の最新鋭機であったF-22とYF-23を含めた全23機が収録。独特なカラーリングも特徴的です。
架空機的な超巨大空中要塞や、渓谷飛行などシリーズの特徴(新谷かおるの戦闘機漫画『エリア88』的な影響も随所に見られる)を揃えている作品です。

■『エースコンバット2』

『エースコンバット2』は1997年5月にPlayStationでリリースされたタイトル。プログラマの努力により多くのポリゴンが使用可能となった他にも、厚木における航空ショーの取材から得られた資料がフライトモデルに反映されています。グラフィックが大きな進化を遂げ遠景や海面までテクスチャで描写。F-14などの可変翼やエアブレーキなどがアニメーションすることが新要素です。実機のF-22やF-14、Su-35や、架空機のXFA-27を含む合計24機を収録。
またエース機的な存在のコマンド機Z.O.E.やEDGEことケイ・ナガセ、架空機のADF-01、USEA(ユナイテッド・ステイツ・ユーロ・アジア)大陸の原型も初登場しています。

■『エースコンバット3 エレクトロスフィア』

1999年5月にPlayStationで発売された3作品目。シナリオや舞台設定が大幅に強化され、5つのルートと全52ミッションを備えたマルチエンディングが特徴のSF色が強いタイトル(脚本は佐藤大)です。あらすじは、2040年のUSEA大陸を舞台に治安維持部隊UPEOの特別航空隊SARFに所属する“NEMO”(名前は任意に変更可能)が、国家の枠組みさえも崩壊させた超巨大企業ゼネラル・リソースと、彼らから離反した先進企業ニューコムにおける紛争の間で生まれた陰謀やクーデターに巻き込まれていくというもの。

現実の戦闘機を基に未来的なフォルムを持たせた機体や、独特なシルエットを持つRナンバー戦闘機があります。テキスト情報の他にも、カットシーンや状況を伝えるニュースなどがアニメで表現されていることも特徴的です(アニメ制作はProduction I.G)。
またエリック(CV: 保志総一朗)の「レナはフランカーに乗れていいよな」や、キース(CV: 中村大樹)の「挟まっちまった」など名台詞も多いです。

※次ページ:PS2/PSP/Xbox 360でリリースされた人気の高い5タイトルを解説!

■『エースコンバット04 シャッタードスカイ』

2001年9月13日にPlayStation 2で発売されたシリーズ4作品目。前作のSF展開から大きく変わり、ユリシーズ災害後に発生したUSEA大陸におけるエルジアとISAF(独立国家連合軍)との戦争を舞台にしたタイトルです。あらすじは、1999年に落下した小惑星ユリシーズ(1994XF04)による災害から4年後にエルジアが、諸外国との様々な対立や問題から中立国のサンサルバシオンへ侵攻し大陸戦争が始まるというもの。エルジアは、隕石対空砲ストーンヘンジを用いたことで優位性を発揮し、USEA大陸全土を手中に収めようとするべく各所へ侵攻します。ISAFが次々と領土を失うなかプレイヤーは、パイロット“メビウス1”となりISAFによる反抗作戦に参加します。


AWACSの通信や敵味方による無線セリフの入り交じる事が初実装となった他にも、映画『ラ・ジュテ』風の止め絵と片渕須直監督によるサイドストーリーが盛り込まれています(イラスト制作はSTUDIO 4°C)。登場機体的には日本とアメリカの共同開発による国産機F-2が初めて収録された作品です。ゲームシステムに大きな変化はありませんでした(特殊兵装といった別種のミサイルや爆弾を追加出来るようになった)が、グラフィックが向上し60fpsでの動作に加え、翼に発生する雲など飛行機が動くことで生まれる大気の現象も表現しています。

■『エースコンバット5 ジ・アンサング・ウォー』

USEA大陸から舞台をオーシア大陸とベルーサ大陸に移し2004年10月にPlayStation 2で発売されたシリーズ5作目。あらすじは、プレイヤーはオーシア連邦サンド島のウォードッグ隊に所属する空軍パイロット“ブレイズ”となり、2010年に勃発したユークトバニア連邦共和国との環太平洋戦争に飲み込まれていきます。

脚本は片渕須直監督が続投され、英雄譚な物語が展開します。
ツリー構造による機体のアンロックや4機による部隊運用、英語と日本語音声切り替え機能、『AC04』の後日談となるカティーナ作戦を描く「アーケードモード」も収録したタイトルです。またキャンペーンは、シリーズ最長となる27ミッション(分岐も含めると32)が収録されています。

■『エースコンバットZERO ザ・ベルカン・ウォー』

前作『エースコンバット5』で言及された1995年のベルカ戦争を題材としたシリーズ第6作目。本作は、シリーズだけでなくフライトシューティングゲームとしても原点回帰を目指したタイトル(そのため名前も「ゼロ」が含まれている)で、スタッフも従来作に参加していた者ではなく、新しい人員を迎え入れています。ベルカ戦争当時を回想するドキュメンタリー風の実写映像とラテン風な音楽も含め、『AC5』とは別方向のベクトルで高い人気を持っています。

プレイヤーはウスティオ空軍に所属する傭兵パイロットの“サイファー”となり、相棒の同空軍所属のパイロット“ピクシー(本名: ラリー・フォルク、通称: 片羽の妖精)”と共に、様々なエースと対決を繰り広げていきます。
前作では英雄譚的な展開が多かったのですが、今作では戦争の闇や個人と個人のぶつかり合いに焦点を定めており、熱い展開が繰り広げられることも特徴的です。また国産機F-1も初めて導入されたタイトルです。

■『エースコンバットX スカイズ・オブ・デセプション』

2006年にPSPで発売されたアクセスゲームズ開発のシリーズ第7作目。舞台を南国のオーレリア連邦共和国に移し、プレイヤーは“グリフィス1”となりレサス共和国が占領した領土を解放し、戦争終結までを目指します。サイドストーリーでは、『AC5』で登場した記者のアルベール・ジュネットが再び登場し、止め絵演出を用いて戦争の細部についての調査を進めます。特徴としては悲劇でもなければ英雄譚とも一味違う、ノリの軽いストーリーや、『エースコンバット3』並に架空機が登場することです。なお2009年にはシリーズ第9作目となる前日譚の『エースコンバットXi スカイズ・オブ・インカージョン』が、iOS向けにリリースされていましたが現在は配信を終了しています。

■『エースコンバット6 解放への戦火』

2007年にXbox 360で発売されたシリーズ第8作目。舞台を2015年のベルーサ大陸北方にあるアネア大陸に移し、プレイヤーはパイロットの“ガルーダ1”となり突如侵攻してきたエストバキア連邦の攻撃から祖国のエメリア共和国を奪還するというもの。初めてオンラインマルチプレイヤーが実装された事に加え、DLCによる機体展開も実施されタイトルでした。コックピット視点の視野角が広がり、パイロットの膝あたりまで見えるようになりましたが、本作以降は再びHUD寄りの視野角に戻っています。

PS2で展開された3部作は止め絵や実写、そしてフルCGのプリレンダリングでカットシーンが表現されていましたが、今作で初のリアルタイムレンダリングを実現しています。グラフィックやフライトモデルは大きく向上。しかしながらフレームレートが30fpsへと半分になってしまった事に加え(当時は30fps動作になったことから、PS2での60fpsとプレイ感覚が違ってしまうことでも話題となった)、ゲームプレイも広大なフィールドで初期配置された大量の敵を制圧していくという進行感覚の違いや、ボム的存在の「支援要請」機能が議論を呼びました。

※次ページ: シリーズの方向性の変化を現実世界と架空世界(ストレンジリアルワールド)で表現した3タイトルを解説!

■『エースコンバットX2 ジョイントアサルト』

2010年にPSPでリリースされたシリーズ第10作目。開発は『X』に引き続きアクセスゲームズが担当しており、現実の地球でストーリーが展開される初めてのタイトルです。あらすじは、21世紀の金融危機の傷跡が残る世界でプレイヤーは、PMCマーティネズセキュリティー所属の飛行隊“アンタレス隊”の1機となり、超巨大な航空機などを操る武装組織ヴァラヒアやその裏に潜む陰謀と戦っていきます。

4人Co-opの“共同攻略作戦”が出来る他にも、架空機だけでなく実在機のカスタムも可能となりゲームプレイに幅が広がっています。また『X』の特徴であるStrategic AI Systemは、ゲーム進行に関わっておりプレイヤーが挑戦するミッションによって今後の展開に影響します。マップは東京や千葉、イギリス、サンフランシスコなどが存在するなど多彩です。また楽曲では歴代シリーズの音楽が使われている他にも、特徴的な人気ボーカル曲「IN THE ZONE」や、『Fallout』シリーズにも参加した作曲家Inon Zur氏の音楽があることも特徴です。

■『エースコンバット アサルト・ホライゾン』

2011年にPS3/Xbox 360で、2013年に海外でPC向けに初めてマルチプラットフォームで開発されたシリーズ第11作目。プロデューサーの河野一聡氏曰く、今までのシリーズの世界観が濃くなり、外部からみるとわけがわからなくなっていた事に加えブランド力の低下から全てを変える“Rebirth”を合言葉にシステムや演出を刷新したタイトルです。

敵機の後ろを迫力ある形で追跡するクロスレンジアサルトシステムや、機体の破断を派手に再現したスティールカーネイジを実装しました。舞台は引き続き2015年における現実世界の地球で、プレイヤーはウォーウルフ隊の米空軍パイロットのウィリアム・ビショップ中佐となり第108タスクフォースの隊員を率いてアフリカやドバイ、欧州などを飛び回ります。

戦闘機以外にも爆撃機や攻撃機、そしてAC-130やAH-64D戦闘ヘリ、ドアガンナーによるゲームプレイも実装し、シリーズで最多の多種多様な機体に乗れるタイトルでもあります。脚本には軍事小説家のジム・デフェリス氏が担当。彼によると中国機も収録するアイデアもありましたが、様々な理由から実現には至らなかったようです。PC版では、60fps動作やマルチモニター、様々なフライトスティックに対応しているため、コンソール版よりも滑らかなフレームレートでのゲームプレイが可能です。なおクロスレンジアサルトシステムは、従来作のゲームシステムから大きく変わってしまったことで、シリーズファンから大きな拒否反応が出てしまいました。そのため現在でもシステムを受け入れられるか是非が問われている作品です。

■『エースコンバット3D クロスランブル』

2012年1月に、3DS向けにリリースされたアクセスゲームズ開発のシリーズ第12作目。初代『エースコンバット』と『エースコンバット2』の内容を含め再構成したといえるタイトルです。ナンバリングタイトルの架空世界を舞台にプレイヤーは、スカーフェイス隊のパイロット“フェニックス”となりクーデター軍を倒します。ステージには、旧作で登場したマップと似たものが存在。『2』で登場した謎の敵機Z.O.E.や敵エース部隊も声付きで現れプレイヤーを翻弄します。

ゲームシステムとしては、敵機にある一定の範囲に居ることでゲージが貯まると発動出来るアタックマニューバや、ミサイル回避のエスケープマニューバを搭載しているため、初心者にもプレイ感覚が掴みやすい事です。機体カスタムシステムも『X2』から大幅に緩和され、初期機体であるF-16をカスタムし続けることでゲーム後半でも通用するのが特徴です。また2015年にはNew3DSに対応した『クロスランブル+』が発売され、廉価版も2017年6月からリリースされています。

※次ページ: 初のF2P展開となる作品とシリーズ最新作の2タイトルを紹介!

■『エースコンバット インフィニティ』

2014年にPS3でリリースされた、シリーズ初のF2Pとなる第13作品目。現実世界の地球を舞台に、小惑星1986VG1ユリシーズに他の小惑星がぶつかったことで出来た破片群が、地球に降り注いだ災害「ユリシーズの厄災」にて崩壊した世界で、アローズ社のパイロット“リーパー”となりユージア戦争を戦うことになります。操作体系が従来作品のものに戻っているものの、『ACAH』での破壊表現は引き続き取り入れています。オンラインマルチプレイに焦点を当てており、対戦と協力プレイを軸に様々なモードを取り揃えています。

収録機体ではTRDI(防衛省技術研究本部)から許可を得て、武装を施した架空のATD-X(現在はX-2と名前が変わった)ことATD-0を実装した他にも、他のシリーズで登場した架空機を多数収録しています。またミッションやステージは過去作を現代風にアレンジしたものも多いため、実質的にシリーズの集大成としての側面も持っています。

しかしながら、キャンペーンモードはリリース時に全てを収録しきれていませんでした。後のアップデートで複数追加されたもののミッション8追加以降に新たなシナリオが収録されておらず、現時点においても完結していない物語となってしまっています。そのため現在でも追加のシナリオ配信とストーリーの完結を望む声が絶えないタイトルです。

■『エースコンバット7』

2015年のPSXにて発表されたPC/PS4/Xbox One向けのシリーズ最新作。ゲームエンジンにUnreal Engine 4を採用し、PlayStation VRに対応しています。「空の革新」をテーマにUAVや、王政となったエルジアやオーシア連邦、そして軌道エレベーターが登場。脚本は『エースコンバット04』のサイドストーリーと『エースコンバット5』から片渕須直監督が再び担当します。

対隕石砲とのストーンヘンジやユリシーズ災害でのクレーターが再び姿を現し、航空機搭載レールガンらしき装備や光学兵器のようなポッドが映され、エルジアとオーシアの戦いに潜むものを感じさせます。また多少『3』への関連性もあるようです。本作の新たな特徴としては、大気現象の上昇気流やキャノピーへの氷結(アイシング)現象が再現されたことによって今までと違う空が体験できることになったことです。発売時期は、元々2017年を予定していましたが開発が伸びたことから延期し2018年内を予定しています。また、本作の情報のまとめページやTGS 2017でのプロデューサーインタビュー記事もあるのでこちらもどうぞ。

gamescom 2017でのプロデューサーゲームプレイ
※次ページ: 『エースコンバット』シリーズの基となったアーケードタイトルと近年の新作を紹介!

■『エアーコンバット』

ナムコが1993年にアーケードで稼働した、シリーズ初となるフライトシューティングゲーム。『スターブレード』や『ウイニングラン』で稼働した基盤であるSYSTEM21を採用しており、黎明期の3Dグラフィックが特徴的です。プレイヤーはF-16のパイロット“ファルコン1”となり同機を模したコックピットに座り、一定時間内に敵を撃破します。難易度が初級と中級、そして上級の三種類から選べる他にも、空母への着艦と発艦要素が盛り込まれています。

■『エアーコンバット22』

【ニコニコ動画】エアーコンバット22
1994年に稼働したタイトル。前作より高性能なSYSTEM SUPER 22を採用しており、より高品質になったテクスチャや遠景描写が特徴。ゲームシステムは、前作と同じ一定時間内に敵機を撃墜することで次のステージへと進展します。F-16を模した前作とほぼ同様のコックピット型大型筐体とモニターを持ち合わせています。

■『マッハストーム』

2015年から稼働した、『機動戦士ガンダム 戦場の絆』のドーム型筐体利用のアーケードゲーム。『エースコンバット アサルト・ホライゾン』のゲームシステムを発展した形で採用しており、制限時間内に次々現れる敵機を撃破することでステージをクリア出来る。自機は『エースコンバット6』で登場したCFA-44ノスフェラトで、東京やドバイなど5つのステージをプレイ可能です。現時点で設置店舗がかなり少なくなっているので、プレイするには事前に調べておく必要があります。

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いかがでしたでしょうか?20年以上続く人気シリーズであるため、アニメで語る『エレクトロニクスフィア』や実写ドキュメンタリー風に語る『エースコンバットZERO』、パイロット設定がしっかりと定められた『アサルト・ホライゾン』など個性豊かなタイトルが目白押しです。最新作『エースコンバット7』は、2016年のPSXにて公開された新トレイラーから徐々にその内容が明らかとなっています。

しかしながら過去のシリーズは、初代PSで展開されたタイトルを含め、現世代機に移植されていないため(PSアーカイブとしても配信されていない)過去作の内容を知ることが難しいシリーズでもあります。そのため現在でもシリーズファンからリメイクやリマスターを望む声が多く挙がっているシリーズなのです。

参考文献
・ナムコ(1997)『ナムコ公式ガイドブック エースコンバット2』 144pp
・ナムコ(1999)『エースコンバット3 エレクトロスフィア ミッション&ワールドビュウ』192pp
・キュービスト(2001)『エースコンバット04 シャッタードスカイパーフェクトガイド』 ソフトバンククリエイティブ 207pp
・キュービスト(2004)『エースコンバット5 ジ・アンサング・ウォー パーフェクトガイド』 ソフトバンククリエイティブ 271pp

※UPDATE: (2017/11/07 19:30): 文中の表記や情報を一部修正。据え置き/携帯機でリリースされた全シリーズを再プレイし、確認した情報を基に記事を加筆修正しました