十三人の少年少女による群像劇を通して、壮大な物語を展開。そして、機兵に乗り込み、強大な敵を相手取るシミュレーションバトルも待ち構えている『十三機兵防衛圏』が、もうじき発売日を迎えます。


『十三機兵防衛圏』は、発表当時から大きな注目を集めてきましたが、それはビジュアルや設定が魅力的であったのと同時に、開発をヴァニラウェアが担当していたという点も影響しています。

ゲームクリエイター・神谷盛治氏が率いる「ヴァニラウェア有限会社」は、2002年2月8日の設立以来、様々な作品を手がけてきました。美麗かつ個性的なビジュアルを持つゲームタイトルも多く、一目見て「ヴァニラウェアのゲームだ!」と分かるほど。また、ユーザーを引き込む高いゲーム性を備えており、刺激的な体験を提供してくれるという信頼感もあります。そのため、作品単体だけではなく、ヴァニラウェア自体のファンだと自認する方も少なくありません。

最新作『十三機兵防衛圏』の発売が近づいており、ヴァニラウェアへの注目が更に集まっていますが、(当たり前の話ですが)『十三機兵防衛圏』だけがヴァニラウェアの作品ではありません! ・・・という想いを込め、関心が寄せられているこのタイミングに合わせ、ヴァニラウェアの歴代作を一挙紹介したいと思います。


◆『プリンセスクラウン』が『十三機兵防衛圏』の先着特典になった縁とは

『十三機兵防衛圏』の先着購入特典として当初発表されていたのは、デジタル・アートワークスのみでした。ですが後日、トークイベント参加応募券やPS4テーマ、そしてPS4版『プリンセスクラウン 復刻版』(DLC)の追加が決定。「ゲームを買ったらもう1本ゲームがついてくる」という、嬉しい状況となりました。

ちなみに、なぜ『プリンセスクラウン』がチョイスされたのかといえば、ヴァニラウェアが作ったから・・・ではありません。『プリンセスクラウン』が発売されたのは、1997年12月。ヴァニラウェアの設立前なので、同社が開発するのは物理的に不可能です。


しかし、『プリンセスクラウン』とヴァニラウェアは全くの無関係ではありません。同社の代表取締役を務める神谷氏が当時、ディレクターとして『プリンセスクラウン』を生み出したのです。神谷氏のオリジナリティが存分に詰まった本作は、「アトラス×ヴァニラウェアの原点」とも称されており、最新作である『十三機兵防衛圏』の特典として登場するに相応しい縁を持っている作品と言えるでしょう。

今回『#十三機兵防衛圏』の先着特典DLCとなった『プリンセスクラウン』は、97年にセガサターンで発売された元祖「セガ×アトラス」の共同開発タイトル。ディレクターは現・ヴァニラウェアの神谷社長で、アトラス×ヴァニラウェアの原点とも言える作品です!プレイ動画⇒https://t.co/Ckyb6BCCFx pic.twitter.com/I8ClxbgA6V— セガ公式アカウント??新サクラ体験版配信中 (@SEGA_OFFICIAL) 2019年10月25日
わずか13歳で母の跡を継ぎ、女王となった主人公・グラドリエル。国を守るべく奮闘する彼女の姿を美しく描くと共に、戦闘時にはダイナミックなアクションを披露する『プリンセスクラウン』は、リソースの管理や立ち回りも重要で、ゲームとしての歯応えがたっぷり。
独自性も高く評価され、長い間愛され続けました。

ちなみに、『十三機兵防衛圏』先着購入特典としてもらえるのは、PSP向けに登場した『プリンセスクラウン』の移植版。『プリンセスクラウン 復刻版』を確実にゲットしたい方は、早めの購入がお勧めです。

新たな挑戦を続けてきたヴァニラウェアの幕開けは「リアルタイムストラテジー」─名作『オーディンスフィア』も外せない!

◆当時まだ珍しかった「リアルタイムストラテジー」に挑んだ『グリムグリモア』

ヴァニラウェア以前のタイトル紹介から始めてしまいましたが、ここからはヴァニラウェア公式サイトにある開発商品情報に記載されているものを順次紹介させていただきます。まずは、2007年4月12日に発売されたPS2ソフト『グリムグリモア』です。

原点とも言える『プリンセスクラウン』のみならず、以降のタイトルにもアクション性を含むものが多いため、「ヴァニラウェア=名作アクションの会社」というイメージを持っている方も少なくありません。
ですが、この『グリムグリモア』のジャンルはリアルタイムストラテジー。今でこそ一般的に知られるようになりましたが、2007年のコンシューマ市場では珍しいジャンルでした。

ジャンルの知名度の低さは、ユーザーのプレイ意欲にも直結しやすい問題です。ヴァニラウェアが黎明期に選ぶジャンルとしては、勇気のある決断だったように思います。その勇気の源がどこにあるのかは推察する他ありませんが、ヴァニラウェアが歩んだ道のりを振り返ると、「作りたいものを作る」という強い意志があるように思います。この姿勢は無論、『グリムグリモア』からも感じられました。


同社が得意とするグラフィック面は、当時からその魅力を惜しみなく発揮しており、絵本のように描かれた美しい世界にユーザーの目は釘付け。また、魔法学校で繰り返される5日間を通して描かれる物語は、先が気になる訴求力を伴っており、ついついプレイを続けてしまう魔力を放っていました。

戦闘もRTSの楽しさや刺激的な要素が押さえられており、初めてこのジャンルを遊んだ方でもその醍醐味がしっかりと味わえる出来映え。難易度設定も用意されており、RTSが苦手な方でも遊びやすい作品でした。

ちなみに、最新作の『十三機兵防衛圏』のバトルパートも(コマンド選択中は全体の動きが止まりますが)RTS的な要素もあり、リアルタイムに進行してくる敵に対して、どのような対応をするのかが問われます。その意味では、『十三機兵防衛圏』の原点のひとつは、この『グリムグリモア』なのかもしれません。


『グリムグリモア』はPS2ソフトですが、2014年12月17日にゲームアーカイブス化。今ならば、このダウンロード版がPS3でプレイできるので、現在の環境で遊ぶならばこちらがお勧めです。

◆壮大な物語を、美しいタッチと魅力的なアクションで描く『オーディンスフィア』

神谷氏の存在を知らしめた作品のひとつが『プリンセスクラウン』ならば、『プリンセスクラウン』の魅力を受け継ぎ、ヴァニラウェアの名を大きく広めたのが『オーディンスフィア』と称しても過言ではありません。

美麗で繊細なタッチで描かれた世界、魅力的で愛らしいキャラクターたち、横スクロールで展開するステージと爽快なアクション・・・ヴァニラウェアがこれまで培った数々の要素とその進化を、2007年5月17日に発売されたPS2ソフト『オーディンスフィア』で、多くの方が味わいました。

『プリンセスクラウン』では4人のキャラクターが操作できましたが、『オーディンスフィア』では、魔王オーダインの娘にしてワルキューレの「グウェンドリン」、彼女との出会いで運命が大きく変わった剣士「オズワルド」、妖精の国を受け継ぐ姫「メルセデス」、プーカと呼ばれる別の種族の姿に変えられてしまった王子「コルネリウス」、滅ぼされた国の王女「ベルベット」の5人が主人公となり、破滅に向かう世界を舞台に、それぞれの物語を紡ぎます。

5人の主人公は、それぞれ別の主人公たちと深く関わっていき、群像劇としての側面も見せながら、『オーディンスフィア』の壮大な物語を描いていきます。この物語の見せ方は『十三機兵防衛圏』とも共通しており、ヴァニラウェアの歴史を振り返ることで最新作に至るまでの歩みが窺えます。

そしてこの『オーディンスフィア』は後に生まれ変わり、2016年1月14日にPS4/PS3/PS Vitaソフト『オーディンスフィア レイヴスラシル』として装いも新たに再登場。ビジュアルが更に美しくなったのはもちろん、ゲーム性もより爽快感のある方向に昇華されました。

オリジナル版となる『オーディンスフィア』は、今遊んでも充分楽しい完成度を誇っていますが、プレイ環境なども考慮に入れると、様々なハードでプレイできる『オーディンスフィア レイヴスラシル』が最適と言えます。「ヴァニラウェアと言えばアクション!」というイメージの片翼を担っている名作を、プレイ予定に加えてみてはいかがでしょうか。

初の和風世界を描く『朧村正』。そして、まさかの擬人化作品も!?

◆まさかこのタイトルをヴァニラウェアが? でも、こだわりぶりを見れば納得! つい見とれてしまう『くまたんち』

「ヴァニラウェア=アクション」の印象が強い方ほど、こちらのタイトルは意外な存在だと感じるかもしれません。2008年9月25日に発売された『くまたんち』は、これまでのヴァニラウェアの路線とは、見た目もジャンルも大きく異なります。

パッケージやゲーム画面を見れば一目で分かる通り、本作のキャラクターたちは可愛らしく擬人化されており、タイトルにもなっている「くまたん」もその一人。キャラクターをデフォルメする手法はこれまでの作品にもありましたが、ポップでアニメテイストな色使いはこれまでにない印象を与えます。

ですが、キャラクターを美麗に描き、魅力溢れる動きを表現してきたヴァニラウェアの真髄は、「くまたんち」にも引き継がれています。ドットで描かれたアニメパターンは数百種類に及んでおり、力の入れようが伝わってきます。

ゲームの内容は、クマを擬人化したキャラ「くまたん」と一緒に暮らしながら、コミュニケーションを図ったり部屋をリフォームしたりと、スローライフな2週間を過ごすシミュレーションゲームです。

本作の特徴的な点は、「くまたん」はリアルタイムに活動しているという点。ゲームをプレイしていない間も「くまたん」は活動しているので、「その時間をどのように過ごしてもらうか」もゲームを進める上で重要なポイント。昨今のジャンルで説明するならば、放置系ゲームの要素と言えるかもしれません。

そして本作のもうひとつの特徴は、前述したアニメパターンの多さ。ドット絵とは思えないほど、「くまたん」の表情や仕草、動きは多彩で滑らか。その様子を眺めているだけで、時間があっという間に過ぎてしまいます。

一見した範囲ではヴァニラウェアらしさをあまり感じないかもしれませんが、職人芸とも言えるグラフィックの作り込みや、ゲームとしての面白さを提案する姿勢に触れると、「やはりヴァニラウェアだ」と実感させてくれます。

ちなみに、ドットアニメ全般を手がけたのは、ヴァニラウェアに席を置くシガタケ氏。しかも、ディレクション、キャラクターデザイン、グラフィックも兼任しており、どれだけの仕事量を抱えた作品だったのか、想像を絶するほど。ヴァニラウェアの層の厚さには、改めて驚かされます。

そんな本作の、最大の難点を挙げるとすれば──プレイ機会の少なさに尽きます。『くまたんち』はニンテンドーDSソフトですが、このオリジナル版以外でプレイできる環境は皆無。中古市場を探すしかありません。ニンテンドースイッチ向けに、是非リメイクして欲しいところです。

◆爽快アクションを突き詰めた『朧村正』! 初の和風世界も美しい・・・

ヴァニラウェアと聞いてアクションを連想する方は、『オーディンスフィア』か、こちらで紹介する『朧村正』の印象が色濃いのだと思います。しかもアクションのテンポは、『朧村正』で更に跳ね上がっており、怒濤の連撃で押し寄せる敵を次々と両断。その爽快感は、アクションRPG全般を見渡しても、指折りの部類に入る心地よさです。

戦いに使用する「太刀」と「大太刀」にはそれぞれ霊力があり、奥義の発動だけでなく、防御することでも霊力を消費。このゲージが0になると折れてしまい、一定時間使用できなくなります。

といっても、刀は同時に3つ装備でき、その場で切り替えも可能。折れることを前提にどう立ち回るか、それを見越した戦略性もアツい要素です。また、「刀が折れたら次々に持ち替え、戦い続ける」という状況そのものが痺れるシチュエーションなので、その点も含めて実に魅力的なシステムです。

アクションの手応えは「まさにヴァニラウェア」といった感触ですが、意外だったのはその世界観。これまで、西洋ファンタジー要素の強い作品が多かったのですが、本作は元禄の世が舞台。日本各地を巡り、妖怪どもと死闘を繰り広げる華麗剣戟アクションを展開します。

一転して和風の世界を描いた『朧村正』ですが、グラフィックに関するこだわりぶりは不変。主人公の「鬼助」と「百姫」の見た目はもちろん、その動きもダイナミックかつ鮮やかに描かれました。また、美しい自然や妖怪のおどろおどろしさなども存分に表現されており、見る者の目を奪う魅力は『朧村正』にも引き継がれています。

本作はWii向けにデビュー(2009年4月9日)し、約4年後の2013年3月28日にPS Vita版が登場しました。更にこのPS Vita版では、DLCとして4つの物語を展開。しかも各DLCには、それぞれオリジナルの主人公が用意され、攻撃方法も全員異なるという徹底ぶり。

DLCでも手を抜かない・・・どころか、力を入れすぎるヴァニラウェア、実にお見事です。『朧村正』を今遊ぶならば、DLCという選択肢もあるPS Vita版がベストでしょう。

最後は、シミュレーションRPGとベルトスクロールアクションを紹介!

◆時代を先取りし、新たな刺激を提供した『グランナイツヒストリー』

これまで、シミュレーションやアクションの要素が強い作品を展開してきたヴァニラウェアですが、2011年9月1日に発売した『グランナイツヒストリー』では、更に新たなジャンルへと挑みます。

本作のジャンルは、3国の戦争を描いたファンタジーRPGとなります。シミュレーションでバトルといえば『グリムグリモア』がありますが、あちらはRTSが主軸。本作のバトルはターン制なので、プレイ感は大きく異なります。

騎士見習いを立派な騎士へと育てあげ、戦地へと送り出す。育成とターン制バトルが折り重なる本作は、RPGの醍醐味がぎゅっと詰まった作品と言えるでしょう。無論、ヴァニラウェアならではのグラフィックも素晴らしく、戦争を描きながらもどこか寓話的な雰囲気は、本作独特の魅力を放っています。

そして本作を語る上で、ネットワーク上で展開する「戦争パート」の存在は外せません。インターネットに繋げることで、過酷な戦場をプレイヤー間で共有。仲間の騎士団と共に、領土拡大を目指す激戦へと挑むことができます。

サーバと同期しているので、「戦争パート」の詳細はリアルタイムに変化。幾人ものプレイヤーが参加する規模の戦争に、自分の騎士団が影響を及ぼす──その興奮は、オンラインでしか味わえない醍醐味に他なりません。

昨今のスマホゲームではこういったスタイルの作品も見られますが、当時のコンシューマゲームでは珍しい存在でした。しかも、オンラインプレイのハードルが低く、手軽に遊べたのも魅力的。時代を先駆けたPSPソフトと言える1作です。

そんな『グランナイツヒストリー』の最も大きな問題・・・というか残念な点は、ネットワークサービスが既に終了しており、オンラインプレイが楽しめないことでしょう。とはいえ、オンラインサービスはいつか終わるもの。気になるゲームは悔いのないようにプレイした方がいいと、教えてくれるゲームでもありました。

◆ストイックに味わう一人旅も、仲間とワイワイ遊ぶ楽しさも! ベルトスクロールACTに挑んだ『ドラゴンズクラウン』

剣と魔法のファンタジー世界を舞台に、冒険者たちが強敵との戦いに挑むアクション性のあるゲーム。ヴァニラウェアの魅力をこれでもかと詰めこんだような『ドラゴンズクラウン』が、2013年7月25日に発売されました。

同社のアクションゲームは、『オーディンスフィア』や『朧村正』など、いずれも横スクロールタイプでした。しかし『ドラゴンズクラウン』は、ベルトスクロールアクション。同じアクションというジャンルでも、また新たな道を切り開く挑戦へと挑みます。

これまでのアクションと大きく違う点は、多人数協力プレイができること。オンラインプレイのみならず、ローカルでも可能なので、集まってワイワイ遊ぶといった昔ながらのスタイルが楽しめる貴重な作品です。

そのプレイスタイル自体、ベルトスクロール系の特徴とも言えますが、このジャンルの新作は昨今なかなか登場しません。その事情は2013年当時も変わりなかったので、ベルトスクロールACT好きにとっても『ドラゴンズクラウン』は待望のタイトルでした。

TRPGやゲームブックを思わせる語り口調に導かれ、よりよい装備を身につけるハクスラ的な楽しみも味わいつつ、時には仲間と共に、時には己の腕だけを信じてダンジョンへと挑む。この力強い遊びとヴァニラウェアの相性は、非常に良好でした。

その反響に応えてくれたのか、PS4版となる『ドラゴンズクラウン・プロ』が2018年2月8日に登場。最新機種でも遊べるようになり、プレイ環境と手段が更に向上しました。「『ヴァニラウェア』が手がけた最新のアクションが遊びたい!」という方は、この『ドラゴンズクラウン・プロ』をお勧めします。

今回は、ヴァニラウェアが開発に携わった作品群を、駆け足ながら紹介させていただきました。いずれも個性的な作品で、相性が合うジャンルならば腰を据えて遊んでも損のないものばかりです。

とはいえ、まずは『十三機兵防衛圏』のプレイ予定でスケジュールが埋まっていることと思います。そちらのプレイが一段落した暁には、ヴァニラウェアの歴代作に目を向けてみてはいかがでしょうか。

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