5月に和歌山県高野町高野山の金剛峯寺の奥の院で、地蔵の前に供えられた賽銭(さいせん)10円を盗んだとして、窃盗罪に問われた大阪府和泉市の無職・鶴原正文被告(66)に厳しい判決が出た。
この事件の控訴審の判決公判が12月20日、大阪高裁で開かれた。
弁護側は1審段階から、「賽銭で遊んでいただけ」と無罪を主張。これに対し、的場裁判長は判決理由で「弁解は不合理で信用できない」と窃盗の故意を認定した。
判決によると、鶴原被告は今年5月13日午後、金剛峯寺にある織田信長供養塔で、地蔵の前に供えられていた賽銭の10円玉を盗んだ。
一般的に少額の窃盗では罰金刑で済む例も多い。たった10円の賽銭を盗んで、懲役1年の実刑判決は厳しすぎる気もするが、的場裁判長の言う通り、「10円とはいえ現金」であることに変わりはない。
鶴原被告は逮捕当時、かばんの中に2003円分の硬貨を所持していたが、一貫して、「賽銭遊びで、かばんの中に硬貨を出し入れしていただけ。自分のカネもある」と無罪を主張。ただ、犯行時、同寺の男性職員がかばんに賽銭を入れるところを目撃しており、反省する姿勢がないことも、情状酌量されなかった要因かもしれない。
たとえ、10円であっても、人様のカネに手を付けてはならないということだ。
(蔵元英二)