お参りするとタバコが嫌いになる地蔵の謎
中央右の背の高いお地蔵様が「金塚地蔵」
世界規模で禁煙運動が高まっている昨今。「なんだか肩身が狭くなってきたし、そろそろ本気で禁煙しようかな」、と考えている方も多いはず。
そんなあなたにピッタリの「地蔵」があるんです。

新宿区北新宿3−1−1というのが目的の地蔵、「金塚地蔵」の住所。JR大久保駅から徒歩3分といったところ。行ってみると通りに面して建てられたお堂の中に数体のお地蔵さまが奉られていて、右から2番目、一際背の高いお地蔵さまがその金塚地蔵だという。この地蔵にお参りすると「タバコ嫌いになる」という言い伝えがあるのだ。

それにしても、見たところ特に変わったところのないこの「金塚地蔵」になんでまたそんな妙なご利益があると言われているのだろう。気になったので、近所のお店の方に聞いてみたりしたものの「ああ、たしかに禁煙祈願にご利益があるらしいですね。でもそれが何でかは分からないなー」という感じのお答えで、みなさんその由来はあまりご存知でないらしい。

そもそも私がこのお地蔵様の存在を知ったのは以前、取材で行った「新宿歴史博物館」でのこと。何か分かるかも、と問い合わせてみる。お話を伺ってみたが、はっきりしたことは分からないという。ただ、「あくまで推測ですが」、という前置きで興味深いお話を聞くことができた。


金塚地蔵のある場所から通りを一本渡ると「百人町」という地名になる。このちょっと不思議な地名は、江戸時代、この地に「鉄砲組百人隊」が駐屯していたことから発しているという。鉄砲隊がいるということは、当然近くに火縄銃や火薬を保管しておく倉庫などもあったはず。とすれば、少しの火の気で大事故が起こりうるため、辺り一帯が火気厳禁であったということが考えられる。もちろん歩きタバコなどもってのほか。そういう事情がいつしか「金塚地蔵にお参りするとタバコ嫌いになる」という言い伝えに転じたのかもしれないという。歴史博物館の方は「決してあり得ない話ではないと思います」とおっしゃっていたが、確実な資料は残されていないらしく、真相は定かではない。

以上、磨耗が進んでしまっているため、作られた年代も不明だという「金塚地蔵」に隠されたちょっとした歴史ミステリーでした。お参りした私だが、今のところご利益は現われてこない模様。(スズキ ナオ)
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