かき揚げは15センチ以上! 巨大でも美味い店
高さ15センチ以上ある「かき揚げ丼」。蕎麦もつく。なのに、美味い。もう、どないせーっちゅーんじゃ!
「デカイ」だの「珍しい」だのを売りにしたメニューに、美味いものはほとんどないと思っていた。
でも、高さ15センチ以上もあるかき揚げがのってくる「かき揚げ丼」が、きちんと美味い不思議な店があった。
長野県の姫木平にある「利休庵」だ。

約10種の野菜を使った「かき揚げ丼」(そば付)が、1260円。15種くらいの、高さ15センチをこえる「子天丼」(そば付 1580円)もある。モロヘイヤ、ズッキーニ、モロッコいんげん、春菊など採れたての野菜やエビがこれでもかと盛られている。
「子」でコレなわけだから、フツウの「天丼」を頼んだ日には、そりゃもう大変な事態が待っているわけです(※天丼、子天丼は時間がかかるため、忙しい時間帯はオーダーを断ることも)。

実際に目の前にすると、思わず悲鳴をあげるほどの大迫力だが、食べてみると、どれも野菜がメチャクチャ美味い。
だが、そのボリュームときたら、食べ物を残すのがキライで、かつ大食いの自分でも食べきれないほどなのだ。どんな人を想定してるメニューなのか!? 美味しいのに食べきれないほどデカイのは、むしろ罪ではないのか。
そんな話をおかみさんにしたところ、
「もともと大きくしようと狙ったわけじゃないんですけどね。うちの場合、いろんなものがどんどん育っちゃうんですよ(笑)」
と言う。いろんなものがどんどん育つ不思議な環境とは……。

もともと「天丼」「子天丼」を作っていたが、大きくなってしまい、調理に時間がかかるからということで、3年前に代替案として作ったのが「かき揚げ丼」だった。
だが、このかき揚げ丼も当初は高さ10センチ以内でスタートしたのだとか。
「うちの野菜、美味しいでしょ? 自家製の有機野菜を使ってるんだけど、せっかくだから美味しい野菜をいっぱい食べて欲しくて、『コレも入れちゃおうか』って、やっているうちに、どんどん大きくなっちゃったんですよ(笑)」
で、気づいたら、かき揚げ丼も結局、15センチ超えに! おおらかにもほどがあります。

堆く積み上げられた天ぷらの作り方は、
「企業秘密。試行錯誤を繰り返して、ギリギリの薄さでくっつく濃さを検証した」とのこと。

店の片隅では、ズッキーニやキュウリなど、新鮮な野菜が驚くような安さで売られていたが、それも自家製だ。
「毎日の野菜の収穫だけでもすごく大変なんですよ。
主人は毎朝、農園を走りながら、自分のTシャツのおなかにどんどん放り込んでいくの(笑)。その様子、見せたいくらいですよ」
ところで、これだけデカイ丼に、さらに蕎麦がついてくるのも狂気の沙汰だが、蕎麦もまた、美味い。
「エ!? うちは手打ち蕎麦が自慢の店なんですよ」
デタラメで、サービス満点の店なのだった。
(田幸和歌子)