
「冬場にとれる幻のキノコがあるんです。
冬にキノコとは、ちょっと不思議な気もするが、このキノコは「ブクリョウ」、別名「マツホド」といわれるサルノコシカケ科のキノコでなんと地中で生育しているのだという。マツホドという名前がついているように、このキノコは松の伐採後や立ち枯れてから4〜5年を経た枯れ株やその近くの根に付着して、地下3〜10センチくらいのところで育つのだそうだ。
実物を見せていただいたが、コンニャク芋のようなサトイモのお化けのような形で「これがキノコ?」と思わず首をかしげたくなる風情である。大きさはだいたい1キロくらいとのことだが、大きいものでは20キロから30キロにまでなるものもあるそうだ。
ブクリョウは、地中にあるので、目印となる松の枯れ株や伐採後を探すのに葉が落ちて地表が見やすい冬の時期が「ブクリョウ狩り」、もとい「ブクリョウ掘り」には最適な季節なのだという。
実はこのブクリョウは、利尿やめまい、鎮静に薬効があって、漢方薬の原料として欠かせないもので、何と百種類以上の漢方薬に使われているのだ。
それにしても、そんな素晴らしいキノコが国内にあるというのに、マツタケや他のキノコ狩りのようにブームにならないのは何故だろう。
ブクリョウの第一人者と言われる横浜のキノコ研究家の古谷敏夫先生(68)に話をうかがった。実家が漢方薬問屋だったという古谷先生は、お父さんと一緒に山に行っていた経験からキノコに興味を持つようになったのだそうだ。
「現在、日本で漢方薬の原料として使われているブクリョウは、中国からの輸入品なんです。昔は、農家の方々が冬の農閑期に副業としてブクリョウとりをしていたんです。
古谷先生によると、ブクリョウ掘りはまず生育しているであろう場所を探すこと、目印となる松の立ち枯れ株などを探すことから始まるので、山の植生を知らなければならないという。ここまでは、他のキノコ狩りと同じである。普通のキノコであれば、生えているかどうかは一目瞭然、すぐ分かるがブクリョウは違う。土の中にいるのである。ここからがブクリョウ掘りの面白いところで、ブクリョウがあるかどうかは、土に10センチほど棒を差し込んでいくのである。何千回、何万回とただただひたすら周辺の土を棒でさして探していくのだそうだ。ブクリョウがあればコツンと何かにぶつかった感じがするのですぐわかるとのこと。それにしても気が遠くなりそうな作業だ。
実は古谷先生、このブクリョウ掘りの道具もキノコ仲間の方々と試行錯誤の上作ってしまったという。
「他のキノコのように景色を眺めながら目で見て探すわけではないんで地味ですけど、これが意外とクセになるんですよ。私はブクリョウのある場所はだいたい分かるので、1日歩いて採れないということはまずないですね。掘り当てたブクリョウは皮をむいてスライスして焼酎漬けにして飲んだり、粉末にしたりしてそのまま食べてもいいんですよ。健康づくりのためのキノコを探すのもまた健康づくりになりますし。一度やると楽しいですよぉ。フフフ」
と古谷先生。
古谷先生は、一人でも多くの人にブクリョウ掘りの楽しさと、そのノウハウを伝えたいということで、ブクリョウ掘りツアーも実施している。
2月25日(土)、3月25日(土)に古谷先生同行の「八ヶ岳周辺で幻のきのこ“ブクリョウ”を掘る」という日帰りバスツアー(クラブツーリズム(株)主催)があるとのことなのでブクリョウに興味を持たれた方は、是非この機会に参加されてみてはいかがだろうか。(こや)
クラブツーリズム(株):旅の文化カレッジ
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