話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、4月20日から東京ドームで始まるセ・リーグ首位攻防3連戦・巨人-阪神戦のカギを握る、阪神・近本光司選手・糸原健斗選手にまつわるエピソードを取り上げる。

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【プロ野球阪神対ヤクルト】8回、安打を放つ阪神・近本光司=2021年4月18日 甲子園球場 写真提供:産経新聞社

怒濤の7連勝で、早くも貯金を2ケタの「11」とし、意気上がる首位・阪神。かたや、4月18日のDeNA戦は引き分けたものの6連勝、3ゲーム差で虎の尾を追う巨人。20日からの東京ドーム3連戦は見逃せない頂上決戦になりました。

それにしても、今季(2021年)の阪神の強さには舌を巻く他ありません。何せ「先制した試合は15戦全勝」なのです。先に点を取ったら負けないのは、もちろんリリーフ陣の活躍もありますが、先発投手陣が盤石なことに尽きます。

18日現在で、先発5本柱の成績は、ガンケル→4勝0敗(防御率1.09)、西勇輝→2勝1敗(防御率1.23)、藤浪晋太郎→2勝0敗(防御率1.90)、秋山拓巳→2勝1敗(防御率1.80)、青柳晃洋→2勝0敗(防御率1.35)。全員が2勝以上を挙げ、この5人でトータル12勝2敗。しかも全員が防御率1点台なのです! 近来稀に見る安定ぶりで、この7連勝はすべて先発投手に勝ちが付いています。

これだけ先発陣が充実している上に、打線も当たっているのですから負けないはずです。今季のオーダーは1番から「近本→糸原→マルテ→大山→サンズ→佐藤輝→梅野」でほぼ固定しているのも大きく、唯一固定されていなかった遊撃も、ドラフト6位ルーキー・中野拓夢がポジションを奪いそう。投打ともに絶好調で、矢野監督も笑いが止まらないでしょう。

一方、追う巨人も、新型コロナ禍で丸・中島・ウィーラーらを欠きながら、原監督お得意のやりくりで借金1から6連勝。貯金を5に伸ばし追撃態勢を整えました。この辺り、さすが2連覇中の王者です。

この3連戦、注目の先発投手は、先週雨天中止が2試合あったこともあり、阪神はローテを再編しました。西勇・青柳・秋山を立てる予定で、かたや巨人は、サンチェス・畠・髙橋で臨むとみられています(初戦は予告先発で確定)。

巨人は前回、甲子園での阪神3連戦(4月6日~8日)にこの3人で臨み、高橋は8回途中無失点と好投、白星を挙げましたが、サンチェスは雨で調子を乱し3回途中、6失点で降板。

今季初先発の畠も4回途中を4失点KO。1勝2敗と負け越しただけに、ここは何とかリベンジを果たしたいところ。

投手陣を預かる宮本和知コーチは、決戦を前にこう語っています。

『巨人宮本和知投手チーフコーチが先頭打者の出塁阻止を20日からの首位攻防3連戦の鍵に挙げた。

阪神打線を「当たっている打者が日ごとに変わっている」と分析。「クリーンアップの前に走者を出さない。

近本も当たってきているみたいだから。まあ見ていてください。チャレンジャーですから」と力を込めた。』

~『日刊スポーツ』2021年4月20日配信記事 より

近本を名指しで「要警戒」と言う宮本コーチ。実は、今季の阪神は「近本が初回に得点を挙げた(=ホームを踏んだ)試合は5戦全勝」なのです。開幕時こそ調子が出なかった近本ですが、18日のヤクルト戦では4安打を放ち復調ムード。

斬り込み隊長が塁に出れば、後ろのメンバーが当たっているだけに先制点になるケースが多く「先制すれば全勝」なのですから、初回に近本を塁に出さないことは、巨人先発の3人に課せられた絶対条件なのです。

また、続く2番の糸原も要警戒です。18日現在、打率.373はリーグ2位の成績で、好調の阪神打線を引っ張る要因になっています。18日のヤクルト戦でも2安打の活躍。初回に先制機をつくるヒットを放ち、3回には無死一・二塁の場面で、送りバントではなく、ヤクルト・小川の真っ直ぐを逆方向の左中間に弾き返して、この回の大量点につなげました。

糸原は2018年・2019年と143試合にフル出場していましたが、昨季(2020年)は試合中に右手有鈎骨を骨折し、連続試合出場がストップ。

昨季の出場は63試合にとどまりました。それだけに、今季に賭ける決意には並々ならぬものがあります。

ちなみに、糸原が打点を挙げた試合は、これまた6戦全勝なのです。巨人投手陣が「チカイトコンビ」をどう止めるか、あるいは2人が警戒網をどう突破するか? この首位決戦、初回から目が離せません。