Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね【第1279回】

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。

日比谷・銀座・有楽町エリアを拠点に、10月27日から11月5日まで開催された「第38回東京国際映画祭」。

私は毎年、司会者として映画祭をサポートさせていただいています。

2025年の今年、東京国際映画祭で上映された作品の本数は184本。国内外の映画人や映画ファンが新たな才能と感動に出会い、交流する場として盛り上がりました。

そこで今回は、八雲ふみねならではの視点から「第38回東京国際映画祭」を振り返ります。

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華やかな映画人たちの競演!レッドカーペットイベント

「第38回東京国際映画祭」開幕初日となった10月27日に行われた、レッドカーペットイベント。東京ミッドタウン日比谷のステップ広場から日比谷仲通りにかけて敷かれた162mの赤絨毯に、約270人のゲストが顔を揃えました。

華やかなコスチュームに身を包む人気俳優はもちろん、ニッポン放送にゆかりある方々も多数登場。そのほんの一部をご紹介します。

映画は言葉と文化を超えて、人々の心をつなぐ! 第38回東京国際映画祭特集

(C)2025 TIFF

トップバッターは、オープニング作品『てっぺんの向こうにあなたがいる』から吉永小百合さん、のんさん、阪本順治監督。

吉永さんの帯には、映画のモデルとなった女性登山家・田部井淳子さんの姿が。

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(C)2025 TIFF

『みらいのうた』から、THE YELLOW MONKEYのボーカル吉井和哉さん。

本作は、吉井さんが闘病を経てステージに復活するまでの3年間を記録した、濃密なドキュメンタリー映画。レッドカーペットに姿を見せると、一際大きな歓声が響き渡りました。

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(C)2025 TIFF

自身初の海外映画出演作となった『ダブルハピネス』を引っ提げての参加となった、吉岡里帆さん。漆黒のドレス姿が素敵です!

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(C)2025 TIFF

日本独自の学校教育の場を舞台に、生徒が起こした「集団金髪デモ」に振り回される中学校教師の姿を描いた『金髪』。

主演の岩田剛典さんは、金髪に黒スーツ、リムレスメガネ姿で観客の視線を釘付けに。

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(C)2025 TIFF

スタイリッシュなイケオジが登場すると、場内が騒然とした雰囲気に。誰かと思ったら、なんと元プロ野球選手で巨人のコーチも務めた元木大介さん。

映画『藍反射』にご出演。すっかり俳優の顔になってます!?

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(C)2025 TIFF

『ナイトフラワー』でシングルマザー役を体当たりで演じた北川景子さん。クールビューティーぶりに会場の視線が集中していましたよ。

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(C)2025 TIFF

『栄光のバックホーム』から、鈴木京香さん。レッドカーペット上は整然とした様子に見えますが、観客エリアから見ると……。

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「京香さ~~~~~ん!!!!!」と、悲鳴にも近い歓声が上がり、オーディエンスは大興奮! 熱量の高さが伝わってきます。

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(C)2025 TIFF

そんな鈴木京香さんも出演する『栄光のバックホーム』は、21歳で脳腫瘍を発症して引退を余儀なくされた元プロ野球選手・横田慎太郎さんの軌跡を映画化した感動作。

主演・松谷鷹也さんと秋山純監督が手にしているのは、横田選手のユニフォームとグローブ。横田選手も『栄光のバックホーム』チームの一員として、レッドカーペットに参加されていたんですね。

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(C)2025 TIFF

『兄を持ち運べるサイズに』『ホウセンカ』の2作品とともに登場したのが、満島ひかりさん。ひとりひとり丁寧にサインする真摯な姿に、お人柄が滲み出ています。

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(C)2025 TIFF

『スキャンダルイブ』から、柴咲コウさんと川口春奈さん。ハートポーズがキュート!

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(C)2025 TIFF

そして、フェスティバルナビゲーターの瀧内公美さん。この笑顔、癒されます。

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※写真は、左上から『藍反射』『強くなるとき』『私はネヴェンカ』『万事快調 オール・グリーンズ』。

「第38回東京国際映画祭」八雲ふみね雑感

例年以上にイベントやシンポジウムが数多く開催された「第38回東京国際映画祭」。毎年ジャンルを超えて様々な作品の司会を務めさせていただいている私ですが、今年度は、「ウィメンズ・エンパワーメント部門」や「Nippon Cinema Now部門」を中心に、女性の生き方をテーマにした映画を担当。会期中は、映画祭に訪れたゲストの皆さんと一緒に映画トークを展開。有意義な時間を過ごさせていただきました。

そんな中から、私が特に印象に残った作品は……。

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※写真は、右から粉川なつみ(Elles Films代表)、松葉美佐(AIWFFアシスタント・プロデューサー)、渡辺英津子(AIWFFエグゼクティブ・プロデューサー)、司会・八雲ふみね。

30回目を迎えた「あいち国際女性映画祭」とTIFFの連携により実現した「あいち国際女性映画祭 in Tokyo」。特別上映作品『強くなるとき』のトークイベントでは、東京国際映画祭で上映されることになった経緯から始まり、映画祭から劇場上映へと作品を広めていく活動など、今後の展開についてもじっくりとお話を伺いました。

引退したK-POPアイドル3人が出かけた済州島での旅を通じて、虚像ではない自分を取り戻していく姿を映し出したヒューマンドラマ。是非、多くの人に観てほしい一作です。

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※写真は右からコルド・スアスア(プロデューサー)、イサ・カンポ(脚本家)、アンドリヤナ・ツヴェトコビッチ(シニア・プログラマー)、司会・八雲ふみね。

昨年からスタートした「ウィメンズ・エンパワーメント」部門に選出された中から、2作品をご紹介。

まずは『私はネヴェンカ』。2000年にスペイン北部で起こったセクシャルハラスメント事件を映画化した本作の上映終了後のQ&Aセッションでは、観客から質問が殺到。

実在の出来事を映画にするにあたっての苦労。この事件後のスペインでのハラスメント対策について。質問の内容は多岐にわたり、闊達な意見交換の場となりました。

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※写真は『藍反射』舞台挨拶、Q&Aの模様。野本梢監督、道田里羽、平川はる香、定本楓馬、滝澤エリカ、中山来未、井上拓哉、千種ゆり子(プロデューサー)、稲村久美子(エグゼクティブプロデューサー)が登壇。

26歳で難治性不妊症と診断された気象キャスター・千種ゆり子さんの実体験をもとに、女性ならではの悩みをテーマとした映画『藍反射』。2日にわたって舞台挨拶とQ&Aセッションが行われ、多くの観客から注目を集めました。

若年層の不妊治療や妊娠。誰にも言えずに抱える身体や心の不安、そのひとつひとつにそっと寄り添いながら、決して他人事ではないということを気づかせてくれる本作。

Q&Aセッションでは、女性だけでなく男性からも多くの質問が投げかけられ、誰もがこの映画を“自分ごと”と捉えて観ていることが伝わってきました。

そして、『藍反射』上映で思わぬ出来事が。

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客席に、なんと新宿タイガーさんの姿を発見。新宿タイガーさんは、ドキュメンタリー映画のモチーフになったこともある新宿の名物人間。演歌を流しながら、新宿三丁目エリアを自転車で駆け抜ける姿を見かけた人も多いのではないでしょうか。

タイガーさんは大の映画好き。

私も新宿の映画館でイベントの司会を務める時、客席で見かけたことが何度もあるのですが、まさか日比谷でお会い出来るとは。

映画祭って毎年、意外な人と出会える貴重な場だなぁ~と、改めて実感した出来事でした。

映画は言葉と文化を超えて、人々の心をつなぐ! 第38回東京国際映画祭特集

※写真は右から、児山隆監督、司会・八雲ふみね。

南沙良、出口夏希、羽村仁成など、いまもっとも注目を集める若手俳優たちが集結した異色の青春ムービー『万事快調 オール・グリーンズ』。Q&Aセッションでは、お客様から「元気が出ました!」という感想が多く聞かれました。

キャスティングの決め手や出演俳優に求めることなど、ひとつひとつの質問に丁寧に答える児山隆監督。その言葉を聞き漏らすまいと耳を傾ける観客の様子が印象的なひと時でした。

『万事快調 オール・グリーンズ』は、2026年1月16日から全国ロードショーです。

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(C)2025 TIFF

※写真は右から、山本又一朗(製作)、ポール・シュレイダー監督、アラン・プール(アソシエイト・プロデューサー)

2025年は、三島由紀夫生誕100周年。作家・劇作家の三島由紀夫が割腹自殺を遂げた最期の日を舞台に、三島の過去をたどる回想と、3つの劇中劇を交えて展開する映画『MISHIMA』。1985年にカンヌ国際映画祭で世界初上映され、芸術貢献賞を受賞したものの、日本ではいまだ公開されず、長年“幻の映画”とされてきました。

そんな『MISHIMA』が東京国際映画祭での上映が発表されると、チケットは即完。

これは何がなんでも観たい! と、私もスケジュールの合間を縫って参戦しました。

歴史的瞬間に立ち会う人々の異様な熱気の中、ポール・シュレイダー監督、山本又一朗さん(製作)、アラン・プールさん(アソシエイト・プロデューサー)によるトークショーが行われました。お三方からは今だからこそ語れる思いが溢れ出し、まるで40年という長い長い封印を解くかのよう。

そして大きなスクリーンで観た『MISHIMA』は、いま観ても色褪せない。いやむしろ、時代の先を行き過ぎた作風にようやく時代が追いついた感がある斬新なものでした。

上映後は、圧巻の映像美に酔いしれた観客からスタンディング・オベーションが。それに応えるかのように、右手を大きく挙げて会場を後にするポール・シュレイダー監督の姿が、いまも瞼に焼き付いています。

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世界の映画界に貢献した映画人、映画界の未来を託していきたい映画人に贈られる「黒澤明映画賞」。今年度は『国宝』の李相日監督と、最新作『ハムネット』が本映画祭クロージング作品として上映されたクロエ・ジャオ監督に贈られました。

映画は言葉と文化を超えて、人々の心をつなぐ! 第38回東京国際映画祭特集

※写真は右から、クロエ・ジャオ監督、李相日監督。

「今年初めて、生で歌舞伎を観たんです」と無邪気に語るジャオ監督に、「クロエさんの演出力には驚かされるばかり」と絶賛する李監督。お互いの作品の印象を語るなど、和やかな雰囲気に包まれた受賞記者会見でした。

また授賞式には、『国宝』で主演を務めた吉沢亮さんがサプライズ登壇。お祝いの席に花を添えました。

映画は言葉と文化を超えて、人々の心をつなぐ! 第38回東京国際映画祭特集

今年の東京グランプリ/東京都知事賞に輝いたのは、アンマリー・ジャシル監督による『パレスチナ36』。本作は、英国委任統治時代のパレスチナで実際に起こった反乱を描いた意欲作。現在のパレスチナ問題にもつながっていく作品ということで、審査員満場一致で選ばれました。

振り返ってみると、今年上映された映画は、多様性に満ちたものが多かったように思います。

価値観や思想は、人それぞれ違うもの。それでもひとつの作品を同じ時、同じ場所で共に観るという映画体験が、平和な未来への架け橋となる可能性があるということを、私もまた東京国際映画祭に参加する度に気付かされているのです。

映画には、言葉や文化を超える力がある。それが、互いの心を繋いでいくきっかけになる。

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<作品情報>
強くなるとき
第38回東京国際映画祭「あいち国際女性映画祭 in Tokyo」にて上映

出演:チェ・ソンウン ヒョン・ウソク ハ・ソユン
監督:ナムグン・ソン

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(C)2024 KOWALSKI FILMS S.L., FEELGOOD MEDIA S.L., NVA PELI A.I.E.

<作品情報>
私はネヴェンカ
第38回東京国際映画祭「ウィメンズ・エンパワーメント部門」にて選出

出演:ミレイア・オリオール ウルコ・オラサバル

監督・脚本:イシアル・ボジャイン
脚本:イサ・カンポ
プロデューサー:フアン・モレノ
プロデューサー:コルド・スアスア
プロデューサー:ギレルモ・センペレ
音楽:シャビ・フォン
撮影監督:グリス・ホルダーナ
ライン・プロデューサー:グアダルーペ・バラゲール
編集:ナチョ・ルイス=カピヤス
音響ミキサー:エバ・バリニョ
(C)2024 KOWALSKI FILMS S.L., FEELGOOD MEDIA S.L., NVA PELI A.I.E.

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(C)2026「万事快調」製作委員会

<作品情報>
万事快調 オール・グリーンズ
第38回東京国際映画祭「Nippon Cinema Now部門」にて選出
2026年1月16日(金)から全国ロードショー

出演:南 沙良 出口夏希 吉田美月喜 羽村仁成 金子大地

監督・脚本・編集:児山 隆
原作:波木 銅(文春文庫)
主題歌:NIKO NIKO TAN TAN「Stranger」 (ビクターエンタテインメント/Getting Better)
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
(C)2026「万事快調」製作委員会

映画は言葉と文化を超えて、人々の心をつなぐ! 第38回東京国際映画祭特集

(C)RANHANSHA

<作品情報>
藍反射
第38回東京国際映画祭「ウィメンズ・エンパワーメント部門」にて選出

出演:道田里羽 滝澤エリカ 熊谷真実 井上拓哉 平川はる香 中山来未 定本楓馬

監督・脚本:野本 梢
プロデューサー:千種ゆり子
エグゼクティブ・プロデューサー:稲村久美子
配給:キノパトス
(C)RANHANSHA

映画は言葉と文化を超えて、人々の心をつなぐ! 第38回東京国際映画祭特集

(C)1985 The M Film Company

<作品情報>
MISHIMA
第38回東京国際映画祭「日本映画クラシックス 生誕100年 三島由紀夫特集」にて特別上映

出演:緒形 拳 坂東八十助 沢田研二

監督・脚本:ポール・シュレイダー
エグゼクティブ・プロデューサー:フランシス・フォード・コッポラ ジョージ・ルーカス
製作:山本又一朗
製作:トム・ラディ
脚本・アソシエイト・プロデューサー:レナード・シュレイダー
アソシエイト・プロデューサー:アラン・プール
(C)1985 The M Film Company

連載情報

映画は言葉と文化を超えて、人々の心をつなぐ! 第38回東京国際映画祭特集

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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