『男色の民俗学』(批評社)著者:礫川 全次Amazon |honto |その他の書店
江戸川乱歩、南方熊楠、稲垣足穂。彼らは揃って男色に尋常ならざる関心を抱いていた。
そして、この三人と因縁浅からぬ岩田準一の『本朝男色考 男色文献書志』こそ、この分野に興味をもつ者すべてが出発点におくべき書物だが、岩田は在野の研究者だった。 日本は世界に稀(まれ)な男色に寛大な国だとよくいわれるが、男色研究に日本のアカデミズムは寛大ではない。そこで岩田のような在野の人の努力が貴重になる。 本書の編者も在野の精力的な研究者である。岩田の筆は室町時代でとまっているが、本書は、明治から昭和までの文献を集めている。 男娼の実態、明治の学生の男色(森鴎外も被害にあった!)、若衆歌舞伎、陰間茶屋から、犯罪や「秘技」に至るまで論点は多岐におよぶが、序論でオウム教団と男色との関係を報じた「東京スポーツ」の記事から論じはじめるなど、編者の柔軟な姿勢のおかげで、じつに読んで面白い本になった。脚注も親切で有益だ。

【書き手】
中条 省平
学習院大学文学部教授。1981年学習院大学フランス文学科卒業。フランス政府給費留学生として、パリ大学に学ぶ。1987年パリ大学文学博士号取得。1988年東京大学大学院フランス文学専攻博士課程単位取得修了。
1988年学習院大学フランス文学科専任講師着任。現在学習院大学フランス語圏文化学科教授。主な著書、『反‐近代文学史』『文章読本』(以上、中公文庫)『小説の解剖学』『小説家になる!』『クリント・イーストウッド』(以上、ちくま文庫)、『フランス映画史の誘惑』(集英社新書)ほか多数。翻訳:ジュネ『花のノートルダム』、ラディゲ『肉体の悪魔』、バタイユ『マダム・エドワルダ目玉の話』(以上、光文社古典新訳文庫)など。朝日新聞で書評委員(2003~07)。現在、手塚治虫文化賞選考委員(2009~)。

【初出メディア】
朝日新聞 2004年2月8日

【書誌情報】
男色の民俗学著者:礫川 全次
出版社:批評社
装丁:単行本(311ページ)
発売日:2003-12-01
ISBN-10:4826503830
ISBN-13:978-4826503839
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