東京成城の高級老人ホームは入居一次金が最高四・七億円で、入居後も二人で毎月六○万円払うという。
金融資産五億円以上の超富裕層は日本で九万世帯。
どこが高級か。内装が豪華。一流ホテルの料理が三食で余暇の活動も充実。介護つきで医療スタッフが常駐。至れり尽くせりの≪熱帯魚の水槽≫みたいな理想の空間である。
悪質な施設も中にはある。外見だけ豪華で裏は手抜き。ワンマン経営で常に職員不足。料理も雑。入居前に評判をよく調べたほうがよい。
入居者同士のトラブルなど老人ホームあるあるも多い。適度な距離感でつきあいなさい、がヒントだ。
何が「高級」なのか。ある入居者は言う、≪友達ができる環境が揃っている≫ことだな。業界人は言う、≪客を錯覚させるための巧みな演出があるかどうか≫だろ。それに大金を払うのか。引退し年老い、心細いセレブが≪居場所を見つけるための場≫なのかも。拡がる格差を見せつけられるような微妙な読後感が残る、でも無視できない一冊である。
【書き手】
橋爪 大三郎
社会学者。1948年生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。執筆活動を経て、1989年より東工大に勤務。
【初出メディア】
毎日新聞 2025年1月25日
【書誌情報】
ルポ 超高級老人ホーム著者:甚野 博則
出版社:ダイヤモンド社
装丁:単行本(ソフトカバー)(256ページ)
発売日:2024-08-07
ISBN-10:4478119244
ISBN-13:978-4478119242