朝になると「お腹が痛い」「頭が痛い」と言って学校に行きたがらないわが子。理由を聞いても本人もよくわからない様子で、どう対応すればいいのかわからない——そんな悩み。


「無理やり行かせるべき?」「このまま見守っていていいの?」と迷いながらも、つい「学校に行かないの?」と問い詰めてしまい、親子関係がギクシャクしてしまうことも……。

子どもが自然に学びたくなる環境をつくる「戦略的ほったらかし教育」を提唱する家庭教育コンサルタント・岩田かおりさんの、行きしぶりの悩みに対する回答をご紹介します。

この教育法に取り組んでいるご家庭では、子どもだけでなく親自身にも予想以上の変化が現れることがわかってきました。

一体どのような考え方や接し方が、親子の関係をいい方向に導いているのでしょうか。岩田さんの新刊『自分から学べる子になる 戦略的ほったらかし教育』から、実際の体験談とともに、そのヒントを探ってみましょう。

■【質問】学校への行きしぶりにどう接していいかわからない
最近、小学2年生の娘が、学校への行きしぶりをする日があります。それとなく理由を尋ねましたが、本人もまだよくわかっていない(言語化できていない)ようです。担任の先生にも相談していますが、学校に行けた日は変わった様子はないとのこと。どう接していくとよいでしょうか?

■【回答】自宅は、子どもがたっぷり充電できる環境にする
行きしぶりや不登校のお子さんのお悩みを抱えている親は年々増えています。理由はさまざまですが、子どもが「エネルギー不足」の状態に陥っていることが非常に多いです。

「学校にちょっかいを出してくる子がいて嫌なんだ」と思ったり、「運動会の練習で整列するのがすごく疲れるんだよな」と感じたりすることは誰でもありますよね。ただ、学校でクタクタになったとしても、家がきちんと休める場所になっていれば心身の充電ができて、「明日もがんばろう」と思えるようになります。


一方で、家にいる間もスケジュールがみっちり決められて管理されていたら、子どもの心は休まりません。

親ができるのは、家庭ではゆったり過ごせるようにして、エネルギーを補給する時間をつくっていくことです。エネルギーがたまっていない状態で、「学校に行かないの?」と子どもに詰め寄ってもなかなか答えは出せません。

まずは少しずつ充電できる環境をつくってみてください。

■戦略的ほったらかし教育は親も変化する
「戦略的ほったらかし教育」とは、子どもが自然に学びたくなる家庭環境を親が戦略的につくったうえで子どもを放任し、「自分でなんとかする力」を育てる教育法です。

単なる「ほったらかし」ではなく、家庭に学びの仕掛けをちりばめながら、子どもの選択や意思決定を大切にすることがポイント。親が先回りして管理するのではなく、子ども自身が考えて行動できるよう環境を整えることで、結果的に子どもの自立心や探究心が育まれていきます。

実践していくと、子どもの変化はもちろんですが、親も大きく変わっていきます。ここからは、「親の変化」にフォーカスした体験談をいくつかご紹介しましょう。

▼親体験談1. 「お母さんに確認して! 」を手放すことができた子どもには「すべてお母さんに確認してからやりなさい」と言って聞かせていました。今振り返ると、子どもが判断することよりも、親が判断することのほうが正しいと思い込んでいたのです。

子どもに「確認しなさい」と言い続けていると、「ドライヤーで乾かしていい?」「これ、飲んでいい?」「トイレに行っていい?」とあらゆることを私に確認するようになりました。
でも、最初は違和感がなかったんです。子どもの行動を確認しておけば間違いはないと思っていました。

でも、あるとき「このまま育っていくと、この子は誰かに許可を得ないと動けなくなっていくのかな……」と急に不安になりました。

そんなとき、戦略的ほったらかし教育と出会い、「確認しなくていいよ」「自分で考えてみて」と伝えていくと、子どもが次第に自分で決められるようになり、学校生活においても積極的になっていきました。
 
とくに理由のない「子どもが心配」という気持ちを手放したら、私の心がすっと明るく軽くなりました。

▼親体験談2. 子どもの「できる」に目を向けて、尊敬できるようになった子どものできない部分にばかり目がいって、「あれもできていない」「ここも遅れている」と心配になり、もやもやと考え続けてしまう癖がありました。

戦略的ほったらかし教育を積み重ねていくうちに、少しずつですが、できない部分ではなく「できる部分」に注目することが多くなりました。
 
「天才ノート」を実践している中で、子どもがめきめき歴史に詳しくなり、今では尊敬できる存在になっています。

▼親体験談3. 子どもを信頼することで、細かな管理をやめられた毎日、子どもの時間を細かく管理していました。「もう寝ないと明日起きられないよ」「時間だからご飯食べなさい」といちいち伝えていたのです。

しかし、今では大まかに決めて指示を出し、あとは放っておく方法をとっています。

これまでは「子どもが寝るまでは、自分も寝られない」と思っていたのですが、子どもも高学年になり、私の体調が悪いときには「先に寝るね」と布団に入れるようになりました。
「自分で寝られるだろう」と子どもを信頼し、管理を手放せました。

■ほったらかしが、ちょうどいい親子の距離
紹介したエピソードからも感じ取っていただけたかと思いますが、学びは子どもたちが自分で進めていくものです。

親がそこを心底理解していないと、ついあれこれと手を出したり口を出したり先回りしたくなってしまいます。運転席で子どもがハンドルを握っているのに、助手席からあれこれと口を出したり、しまいにはハンドルに無理やり手を伸ばしたり。実際にそんなことがあれば、危なくて仕方ありません!

探究心を育むことは、子どもが自分で車のハンドルを握り、自分で決めた道を進んでいくことです。助手席に乗る親は、子どもから「行き先はここだからナビに入れて」「ちょっと飴食べたいから袋開けてくれる?」など指示が出たときに手伝ってあげる存在です。

そして、これは決して探究や勉強だけに限った話ではなく、日常生活においても大事なポイントです。気張りすぎず、あまりお金をかけすぎず、ほったらかしにするぐらいで子どもはちょうどいい。

親は子どもの生活する環境にほんの少しの戦略性を挟めばいいのです。そうすれば、子どもも、親も、そして親子も、大きく変わっていくことができますよ。岩田かおりさん プロフィール
家庭教育コンサルタント/株式会社ママプロジェクトJapan代表/全国ワーキングマザーの会副代表。幼児教室勤務を経て、「子どもを勉強好きに育てたい!」の思いから、独自の教育法を開発。
ガミガミ言わず勉強好きで知的な子どもを育てる作戦『かおりメソッド』を全国へ展開中。3人(1男2女)のママ。最新刊『自分から学べる子になる 戦略的ほったらかし教育』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。
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