「入学式のあと、保護者は『PTAのクラス役員決め』が終わるまで帰れないって、ホント? 体育館の扉が閉め切られて、出してもらえないって聞いたけど……」
そう、毎年この時期、多くの学校ではPTAの委員や係を決める「クラス役員決め」が行われてきました。新入学生の保護者は、これまでこのように体育館に閉じ込められることがよくあったのです。
在校生の保護者も、この時期に役員決めをします。年度末、または年度初めの学級懇談会のときに行われるのが常でした。
そもそもPTAは任意で入る団体のはずなのに、入会するかどうかも聞かれずに、クラス役員決めに参加するのはなぜなのか? 疑問を感じつつ、なすすべもなく新学期を迎えてきた人は多いでしょう。
でも実は、こういった新学期の保護者の風景は、次第に変わりつつあります。地域や学校によってはPTA改革が進み、「クラス役員決めがない春」を迎える保護者も増えてきました。背景には「PTAは本来、任意で参加する団体だ」という理解の広がりがあります。
役員決めがない新学期って、どんな感じなのでしょうか? 今回は、改革が進んだPTAの春の様子をお伝えします。
■軟禁される入学式がなくなり「本当にうれしい」
「入学式という喜ばしい日なのに、体育館に“軟禁”されて、役員が決まるまで出してもらえない、あの雰囲気がとても嫌でした。今年からそれがなくなったと聞いて、本当ににうれしい」
「仕事の関係で役員をすることが難しく、どのタイミングでやるのがベストか悩んでいました。でも今回からその悩みがなくなって、ホッとしています。
「(役員決めがなくなって)懇談会は過去最高の出席率でした。普段は10人くらいなのに、30人以上来ていた。先生が子どもたちの話をしてくださり、短時間で終わりました」
昨年(2025年)、N県のある小学校のPTAに寄せられた保護者の声です。このPTAでは新型コロナ明けの2022年度から3年かけて見直しを進め、2025年春からクラス役員決めをやめることにしました。
以前はやはり、入学式後や学級懇談会のときに役員決めをしており、同PTAの副会長・マリエさん(仮名)は「とても重苦しい雰囲気だった」と振り返ります。
「2025年度からは、入会手続きをするときに役員の立候補を募る形に変えました。数名が手を挙げてくれたので、そのメンバーで可能な範囲のクラスレクのみ行いました。強制的な役員選出がなくなったので、お母さん方の反応はかなりよいです」(マリエさん)
マリエさんが住む地域ではPTA改革がまだ珍しく、校長先生や教育委員会はかなり厳しい反応だったとか。
でも、近隣の市や町のPTAからは「改革のやり方を教えてほしい」という問い合わせが、今も会長さんのもとに多く寄せられているといいます。
■義務じゃない? 想像と違った「これならPTAに入ります」
S県の小学校でPTA会長をしてきたココヨさん(仮名)からも、こんな話を聞きました。
「入学前の保護者説明会のとき、PTAへの加入は任意であること、役員も義務ではないことを伝えたら、ある保護者の方が『上の子のときにホントにつらい思いをした。PTAをこんなふうに変えてくれて、ありがたい』って言いにきてくれて。
以前はこのPTAでも、クラス役員決めが始まると「空気が一変して、みんな下を向いていた」そう。すでに役員をやった保護者が他の人に「まだやってないよね?」などと言ってプレッシャーをかける光景も見られたといいます。
2022年度に役員決めをやめてからはムードが変わり、保護者から「あと1年早くしてくれれば(役員を)やらなくて済んだのに」と嘆かれたこともあったとか。
「小学校に入る前、園の保護者同士で『PTAはキツそうだから入るのやめよう』って相談していた、という方が、『想像と違った。こんなPTAだったら私は入ります!』って言ってくれたこともありました。印象深い思い出です」(ココヨさん)
■「やりたいことをやる」ポジティブマインドへの変化
クラス役員決めがなくなったことによる「意外な結果」を教えてくれたのは、I県の小学校のPTA副部長のサホさん(仮名)です。
1つは、懇談会に出る人が減ったこと。先ほどのマリエさんは「出席率が上がった」と話していましたが、サホさんの学校では逆だったそう。
以前は「役員決めに出ないと後で大変なことになる」という不安から出席していた人も多かったのでしょうか。「学校の話を聞く方が大事では」と、サホさんは首をひねります。
もう1つ、任意加入を前提に入会届を配り始めたところ、「大ベテランの先生が入会しなかった」ことにも衝撃を受けたそう。その先生は一見、PTA活動に積極的だったそうですが、本当は何かしら活動内容に賛同しかねる部分もあったのでしょうか。
「アンケートを取ると『改革ありがとう』という声が出ますし、新年度のぎすぎすした雰囲気がなくなったとも思います。今の役員は『毎年やってたからという理由で続ける必要はないよね』という考えの人ばかり。『決められたことをするんじゃなくて、やりたいことをすればいい。自分たちで自分たちのことを決めていいんだ』っていう、ポジティブなマインドになっていますね」(サホさん)
■自分のPTAを、自分たちの手で変えてもいい
いかがでしょうか。「こんな春だったらいいな」「こんなPTAだったらいいな」と思った方は、多いのではないでしょうか。
今はまだ、クラス役員決めを続けているPTAもたくさんあるでしょうが、絶対に変えられないわけではありません。別のやり方もあるのです。
「体育館に軟禁される春」がないPTAは、誰かが変えたから実現したものです。その「誰か」になってみるのも、悪くないかもしれません。
この記事の執筆者:大塚 玲子 プロフィール
ノンフィクションライター。主なテーマは「PTAなど保護者と学校の関係」と「いろんな形の家族」。









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