退職金は、何十年も働き続けたご褒美のようなお金です。

「まとまった金額を手にするのは人生で初めて」という方も多く、つい気が緩んでしまうこともあるでしょう。


しかし、退職金は「老後の生活を支える大切な資金」でもあります。うっかり無計画に使ってしまうと、老後資金が不足し、セカンドライフを不安なものにしてしまう恐れも……。

今回は、退職金の「危ない使い道」について5つご紹介します。

■退職金が入ると気が緩みやすい理由
何十年も働き続けた自分へのご褒美として、一度にまとまった退職金を受け取ると、心のどこかで「少しくらい、ぜいたくしてもいいかな」という気持ちが芽生えるのは自然なことです。

しかし、退職金は老後の生活を支える貴重な資金です。年金収入だけで生活するのは想像以上に大変なこともあり、手元にあるまとまった資金は本来、計画的に使うべきもの。

「これぐらいなら」「あとで取り戻せばいいかも」と油断して使い始めると、あっという間に目減りしてしまう危険があります。

まずは、退職金は「未来の自分を支えるためのお金」という意識をしっかり持つことが大切です。

■退職金の「危ない使い道」5選
次は、退職金の危ない使い道を5つご紹介します。

▼1:高額な買い物を勢いでしてしまう退職後、時間に余裕ができると「ずっと欲しかった車を買おう」「高級家具をそろえよう」と一気に大きな買い物をしてしまいがちです。

一度大きな金額を使うと、「どうせなら」と財布のひもが緩み、歯止めがきかなくなることも。高額な支出は本当に必要か、一度冷静に考えましょう。


▼2:子どもや孫に過剰に援助してしまう子どもや孫のためにお金を出してあげたい気持ちは自然なことです。

しかし思いの外、頼りにされてしまうと自分の生活を圧迫してしまうケースもあります。援助するときは「どこまで」と線引きをして、自分の老後資金を最優先に考えましょう。

▼3:無計画な住宅リフォームに手を出す「老後は快適に過ごしたい」との思いから、住宅のリフォームにまとまったお金を使う人もいます。

ただ、リフォーム費用は予定より高くなることが多く、生活に直接必要のない部分にお金をかけてしまうと後悔することも。優先順位をつけた計画的なリフォームを心掛けましょう。

▼4:急に投資にチャレンジして失敗する「退職金で資産運用を」と考える人もいますが、投資経験が浅いまま高リスクの商品に手を出すのは危険です。特に、自分で十分に判断できないまま、知人や金融機関の営業担当者からすすめられるままに商品を選んでしまうと、損失を抱えたり、資金を減らしたりする危険も。

老後資金は、減らさないことを第一に考え、無理なく理解できる範囲で運用することが大切です。

▼5:豪華な海外旅行やぜいたくな趣味に散財する長年の仕事を終えて「やっと自由に楽しめる!」と、海外旅行や趣味にお金を使いたくなる気持ちは分かります。

しかし、最初に使い過ぎると、その後の生活に必要な資金が足りなくなる恐れも。メリハリをつけて楽しむことが、長く安心して趣味を続けるコツです。


■退職金を守るために大切なこと
退職金は、これからの生活を支える大切な資金です。まとまったお金が手に入ると、つい気が大きくなり、予定外の支出が増えてしまうこともあります。そうならないためにも、「減らさないこと」を意識して大切に扱いましょう。

まず、すぐに使わず、いったん定期預金など安全な場所に預け、落ち着いて考えることが第一歩。

その間に、老後の生活費、医療費、介護費用などの「将来、必要になる支出」を優先的に確保し、別枠で管理するようにしましょう。

また、リスクの高い話や、他人任せの投資に飛びつかないことも重要です。分からないまま始めると、大切な退職金を減らしてしまうリスクが高まります。

とはいえ、せっかくの退職金、「少しは楽しみに使いたい」と思う気持ちも自然なことです。その場合は、「ご褒美使い用の予算」をあらかじめ決めておき、その範囲で楽しむようにしましょう。

計画的に使う意識を持つことで、退職金を守りながら、自分らしく安心してセカンドライフを楽しめます。

文:舟本 美子(ファイナンシャルプランナー)

会計事務所、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として勤務後、FPとして独立。人と比較しない自分に合ったお金との付き合い方を発信。
3匹の保護猫と暮らす。All About おひとりさまのお金・ペットのお金ガイド。
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