老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。
そんな年金初心者の方の疑問に、専門家が回答します。

今回は、月収75万円で老齢厚生年金が支給停止された方からのご相談です。

■Q:66歳会社員。月収75万円で老齢厚生年金がカットされました。どうすればいいですか?
「66歳会社員です。月収75万円で老齢厚生年金がカットされたのですが、どうすればいいのでしょうか? 70歳になるまでは会社員を続けるつもりです」(匿名)

■A:老齢厚生年金をカットされないようにするのであれば、給与などと老齢厚生年金の基本月額の合計が51万円(令和7年度)を超えないような働き方を検討してみるといいでしょう
60歳以上の人が厚生年金に加入しながら給与収入があり、かつ老齢厚生年金をもらっている場合、老齢厚生年金の基本月額(年額の老齢厚生年金の報酬比例部分を12で割ったもの)と、総報酬月額相当額(※)に応じて、老齢厚生年金の一部または全額が支給停止となることがあります。これを在職老齢年金制度と言います。

※総報酬月額相当額とは、毎月の賃金(標準報酬月額)+1年間の賞与(標準賞与額)を12で割った額

相談者の年金額がカットされた理由は、この在職老齢年金制度によるものです。老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計が51万円(令和7年度)を超えなければ、老齢厚生年金は減らされることなく全額受給できます。

しかし51万円を超えると、老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額に応じた計算式で計算され、毎月の老齢厚生年金額が減額されることがあります。

支給停止される年金額は、次のように計算できます。

(1)基本月額と総報酬月額相当額の合計額が51万円以下のとき
・支給停止額=0円(全額支給)

(2)基本月額と総報酬月額相当額の合計額が51万円を超えるとき
・支給停止額=(基本月額+総報酬月額相当額-51万円)×1/2×12

例えば、相談者の老齢厚生年金額が216万円(基本月額18万円)、総報酬月額相当額が75万円と仮定した場合、在職老齢年金制度による支給停止額は次のように計算します。


・基本月額18万円+総報酬月額相当額75万円=93万円

よって支給停止の基準額(51万円)を超えますので、(2)に該当します。

・支給停止額=(75万円+18万円-51万円)×1/2×12=252万円(月額21万円)
・老齢厚生年金額=216万円-252万円=▲36万円

したがって、老齢厚生年金は全額支給停止になります。

65歳になると老齢厚生年金に加えて、老齢基礎年金を受け取れますが、老齢基礎年金は在職老齢年金の支給停止の対象ではありません。老齢厚生年金のみが支給停止の対象になります。

老齢厚生年金をカットされないようにするのであれば、給与などと老齢厚生年金の基本月額の合計が51万円を超えないような働き方を検討してみるといいでしょう。

監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー)

都市銀行や保険会社、保険代理店での業務経験を通じて、CFP、証券外務員の資格を取得。相談業務やマネーセミナーの講師、資格本の編集等に従事。日本FP協会の埼玉支部においてFP活動を行っている。
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