■Q. 「夏バテと思っていたらがんだった」というケースは、実際にあるのでしょうか?
Q. 「毎年夏になると、食欲が落ちて体がだるくなります。今年も暑さが厳しいせいか、例年以上に夏バテらしき症状が続いており、つらいです。
最近、『夏バテと思って放置していたら、がんだった人がいる』という話を聞き、少し不安に感じています。

実際にそのようなことはあるのでしょうか? ただの夏バテのような症状でも、病院に行くべきですか?」


■A. 判断が難しいですが、夏バテとがんの症状には共通点があることは事実です
夏は冷たい食べ物や飲み物をとる機会が増え、エアコンの効いた室内と暑い屋外との温度差で体が冷えやすくなります。その結果、食欲が落ちたり、胃もたれが続いたりすることがあります。これらは一般的な夏バテの症状です。しかし難しいことに、これらは胃がんの初期症状と重なるものでもあります。

下痢や便秘が続く場合にも注意が必要です。温度差や冷たいもののとり過ぎで、腸の働きが乱れているだけかもしれませんが、大腸がんの初期症状のケースもあります。もしも便に血が混じる、便の形が細くなるといった変化があれば、早めに医師の診察を受けることが大切です。

さらに、何となく体がだるいという症状も、単なる夏の疲れとは限りません。倦怠感が長引く場合には、貧血や肝機能障害、まれに胸水などの疾患の可能性も考えられます。

ただの夏バテか、大きな病気の初期症状かは、残念ながら簡単に判断することができません。いつもと同じような夏バテ症状が出るたびに病院に検査に行くのも、現実的ではないでしょう。


難しいところですが、気になる症状が続くときや、少しでも例年とは違うと感じた場合は、無理をして我慢したり、自己判断で放置したりせず、医師に相談することが健康を守る第一歩となります。

▼狭間 研至プロフィール大阪大学医学部卒。日本外科学会 認定登録医。大阪大学医学部付属病院、大阪府立病院などで外科・呼吸器外科診療に従事した後、現在は地域医療の現場で医師として診療を行う。ファルメディコ株式会社 代表取締役社長。医療法人嘉健会思温病院理事長。外科医、地域医療、薬局運営の豊富な経験から、医療と患者さんの橋渡しとなる分かりやすい医学情報発信を行っている。
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