老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。
そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。

今回は、特別支給の老齢厚生年金についての質問です。

■Q:61歳で年金を繰り上げ受給した場合、63歳からの「特別支給の老齢厚生年金」はもうもらえないのですか?
「1962年10月生まれの女性です。61歳で老齢基礎年金と老齢厚生年金の繰り上げ受給し始めました。この場合、63歳時点で本来受け取れるはずだった『特別支給の老齢厚生年金』は、すでに繰り上げを選択しているため受給できないのでしょうか?」(Mさん)

■A:繰り上げ請求をしていれば、特別支給の老齢厚生年金もすでに繰り上げられて支給されています
Mさんのように、61歳で老齢年金の繰り上げ請求をした場合は、老齢基礎年金とともに、本来63歳から受け取れるはずだった「特別支給の老齢厚生年金」も同時に繰り上げされて支給開始されています。

本来、老齢基礎年金と老齢厚生年金は65歳からの受給ですが、一定の生年月日・加入要件を満たす人に対しては、60代前半から厚生年金の報酬比例部分を受け取れる「特別支給の老齢厚生年金」という制度があります。

Mさんのように1962年(昭和37年)10月生まれの女性であれば、厚生年金の加入期間が1年以上あるなどの受給要件を満たしていれば、本来は63歳から特別支給の老齢厚生年金の受給対象となる世代です。

ただし、Mさんは61歳で年金を繰り上げ受給した場合、その際に老齢基礎年金だけでなく、将来的に支給予定だった特別支給の老齢厚生年金も繰り上げの対象となります。

具体的には、老齢基礎年金は65歳より48カ月前の受給開始となるため、0.4%×48カ月=19.2%の減額。特別支給の老齢厚生年金は63歳より24カ月前から受給となるため、0.4%×24カ月=9.6%の減額。

このように、将来の受給予定分を早く受け取る代わりに、減額された状態での支給がすでに始まっているということになります。

繰り上げ請求をすると、老齢基礎年金とともに、特別支給の老齢厚生年金(該当する場合)もまとめて前倒し支給されます。
そのため、63歳になった時点であらためて特別支給の老齢厚生年金が支給されることはありません。

繰り上げ請求をした場合の年金の内訳や金額の詳細は、人によって異なりますので、気になる場合は最寄りの年金事務所などで確認してみるとよいでしょう。

監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー)

都市銀行や保険会社、保険代理店での業務経験を通じて、CFP、証券外務員の資格を取得。相談業務やマネーセミナーの講師、資格本の編集等に従事。日本FP協会の埼玉支部においてFP活動を行っている。
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