「気圧のせいで不調」「台風が近づくと頭痛がする」「雨の日は体が重くて起きられない」──そんな体調不良に悩まされていませんか? こうした症状は「気象病」や「天気痛」といった名称で知られています。

気圧や天候の変化によって自律神経のバランスが乱れることで、頭痛・倦怠感・めまい・むくみなどが引き起こされるようです。
本記事では、予防医療を専門とする医師が、気圧による体調不良の仕組みと、誰でもできるセルフケアの方法をご紹介します。


■なぜ低気圧で体調が悪くなるのか? 医学的なメカニズム
低気圧になると外気圧が下がり、体内の圧(血管内・内耳など)とのバランスが崩れます。その結果、血管が拡張したり、自律神経(特に交感神経と副交感神経)のバランスが乱れたりして、以下のような症状が出ることがあります。

・頭痛・片頭痛
・首肩こり、関節痛
・めまい、耳鳴り、吐き気
・倦怠感、眠気、気分の落ち込み
・むくみ、食欲不振

自律神経がもともと乱れやすい人や、睡眠不足・ストレス過多の人に、特に起こりやすい傾向があります。


■「生まれつきの体質」だけではない? 気圧への弱さは、後天的な要因も
「気圧に弱いのは生まれつきの体質だから仕方ない」と思っている人もいるかもしれません。確かに、耳の構造や自律神経の感受性など先天的な要素も関与しますが、多くは生活習慣やストレス、運動不足など後天的な要因が主な原因です。

特に女性の場合は、ホルモンバランスの変動やPMS、更年期のタイミングで不調が強まりやすい傾向があります。「体質」と一言で片付けず、自分の変化に目を向けることが第一歩です。

つまり「気象病体質」はある程度“鍛える”(=改善する)ことが可能です。体が敏感な時期ほど、“戦略的予防”が重要になります。


■「気圧=見えないストレス」だからこそ、“ストレス耐性”を高めることが大切
医師の立場から見ると、低気圧は“目に見えないストレス”ともいえます。つまり、日常のストレス対策が、そのまま気象不調の予防にもつながるということです。


・睡眠の質を高め、就寝時間を一定に保つ
・発酵食品や食物繊維で腸内環境を整える
・朝起きたら日光を浴びて、体内時計と自律神経のリズムを整える

一見地味に思えるかもしれませんが、こうした確実な“ストレス耐性の土台づくり”が、台風シーズンを快適に乗り切るカギになります。


■今日からできる! 低気圧不調に効果的な5つの対策法
1. ぬるめのお風呂に入り、副交感神経を優位にする
38~40度の湯に10分ほど浸かると、リラックス効果と血流促進が得られます。入浴は寝る時刻の60~90分前が目安です。

2. 深い呼吸と軽いストレッチを取り入れる
呼吸を深く整えて、肩まわりをゆるめるストレッチを取り入れましょう。自律神経をリセットするのに役立ちます。

3. 寝る前のスマホ断ちをする
就寝前のブルーライトは、自律神経に刺激を与えます。寝る30分前からスマホは手放しましょう。

4. 水分・ミネラルをしっかり補給する
気圧が下がると体がむくみやすくなり、不調の原因になります。こまめな水分補給と塩分・マグネシウムなどの摂取を意識しましょう。

5. ビタミンB2やマグネシウムの補充
低気圧で片頭痛が出やすい場合、片頭痛の発生頻度や症状の程度を抑えてくれるビタミンB2やマグネシウムの補充がおすすめ。マグネシウムは便秘の改善にも効果が期待できます。医師に相談のうえ摂取を検討してください。



■「いつも同じタイミングで不調になる」人は、不調の“予兆パターン”を記録する
低気圧不調には個人差がありますが、実は自分だけの“予兆パターン”が存在します。「台風が来る2日前に頭痛が起きる」など、一定の傾向に気付ければ、前倒しでの対策が可能です。スマホのメモや手帳に症状を記録し、自分だけの“気圧カレンダー”を作っていくことも、1つの戦略です。

これは医学的に「フェーズゼロの予防」ともいわれ、症状が出る前の“兆し”に対応する、最も価値のある予防アプローチといえます。

近年はスマートウォッチやウェアラブル端末を使って、自律神経のバランス指標の1つ「HRV(心拍変動)」を測ることも可能になってきました。こうしたデータは、単なる健康管理ではなく、「いつ不調が起きやすいか」を可視化するツールにもなります。

不調の“予兆”を主観だけでなく“数字”で捉えることができれば、事前に対策する「戦略的予防」の精度はぐっと上がります。


■気象病に悩まない体に! 「気圧不調に強い体」は作れる
変化を予測し、備えるのが“戦略的予防”です。例えば、「台風が来ると不調になる」と分かっているなら、前日から生活を整えたり、休息をとったりするだけでも、かなりの症状が軽減できます。

医学的にも、気象変化に先回りして体調を整える“プレ予防”は効果があるとされています。これはまさに、“病気になる前から整える”という医療の新しいアプローチです。

体調を崩すたびに我慢したり諦めたりするのではなく、天候の影響を“予測して備える”習慣を少しずつ生活に取り入れてみましょう。


特別な薬や治療に頼らなくても、ストレッチや、腸内環境の改善、十分な睡眠といった少しの工夫で、自律神経は整えられ、台風などの気圧の変化に強い体が作れます。本記事が「気圧に弱い自分」から卒業するヒントになれば幸いです。

▼中田 航太郎プロフィール予防医療専門家として活動する起業家医師。「後悔のない人生」をモットーに、戦略的な健康経営と個別化された予防医療サービス『Wellness』を提供。様々な媒体で幅広く情報を発信をしながら、人々が自分らしく生きるための健康をサポートしている。
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