「教え方が上手じゃない先生に当たった……」そんな不運が、子どもの知的好奇心を奪っているとしたら。『バカ親につけるクスリ』(堀江貴文著)は、実業家・堀江貴文氏が現在の硬直した学校教育制度に鋭く切り込み、パーソナライズされた現代社会の中で本当に必要な教育とは何かを“バカ親”に問いかける一冊。今回は本書から一部抜粋し、多くの子どもたちが直面する「教師ガチャ」の問題点と、その根本的な解決策となり得る「オンライン授業」の大きな可能性について解説する。■「教師ガチャ」が生む学習意欲の低下オンライン授業のメリットとして、教えるのが上手な教師の「いい授業」を、1クラスの範囲を超えて広く届けることができるという点が挙げられる。各教科において誰の授業を受けるのかを選べるようにすれば、教え方が絶望的に悪い教師は淘汰(とうた)される。こうすれば、ハズレの教師に当たってしまうという「教師ガチャ」から子どもたちは解放される上に、近年の教師不足という学校側の問題も解消される。これが、オンライン授業の2つ目と3つ目のメリットである。教師不足だからといって、一部に動きがあるように教員採用選考試験のハードルを下げるのは論外だ。力不足の教師を増やしてしまっては、「教師ガチャ」でハズレを引く不幸な子どもが増えるだけで、何の解決にもならないばかりか害悪である。ある科目を嫌いになった理由としてよく挙げられるのは、「教え方が悪い先生に当たってしまったから」ではないだろうか?本来、新たなことを学び知識を身につけるというのは、誰にとっても楽しくわくわくすることのはずだ。にもかかわらず、子どもが特定の科目、ひいては勉強そのものが嫌いになるのは、ほとんどの場合子ども自身のせいではなく、教え方の下手な教師のせいだ。子どもの知的好奇心は、考える力やクリエイティビティの基盤であり、長じてからの独創性や生産性に直結する。子どもの知的好奇心を削いではならない。だからこそ、教師の質を保つことは非常に重要なのだ。■オンライン授業が教育格差をなくすオンライン授業を導入すれば、教師不足問題など即解決できる上に、教師の質の低下まで解決できる。オンライン授業は、1人1台端末を使って、子どもたちが各自の自宅で受ける。オンライン授業は、基本的に録画とする。つまり子どもたちは、好きな時間に好きな場所で授業を受けられる。教師は、一度自分の都合のいい時間に授業の動画を撮影してしまえば、同じ内容の授業を何度も繰り返すような無駄が省ける。その結果、授業の準備にかける時間、授業そのものにかける時間が大幅にカットでき、労働時間を短縮できる。教室に毎日何十人もの生徒が集まることもなくなるため、教師は大勢の生徒を一度に見なくてはいけない労力からも解放される。オンライン授業を受けるだけでは学力を伸ばせない子どもたちに関しては、先述のように、登校してチューター役を務める教師からの個別サポートを受ければよい。■全国どこでも最高の授業を受けられる未来学校に生徒が集まらない結果として、学校に必要な教師の絶対数も格段に減る。教師不足はつまり、教師を増やすことではなく、必要数を減らすことで解決される。オンライン授業ならすべての教科で、教え方が抜群にうまい先生の授業を、全国津々浦々平等に届けることができる。文部科学省が学習指導要領の策定などを通じて行き届かせようとしている「一定水準の教育」も、簡単に叶ってしまう。オンライン授業が当たり前になれば、いつでもどこでもいい授業を受けられる。教師ガチャどころか、学校ガチャ、さらには地域ガチャすらも解消されるわけだ。まずは過疎地や離島から導入して、効果のほどを確かめるのもいいだろう。 堀江 貴文(ほりえ たかふみ)プロフィール1972年福岡県生まれ。91年東京大学入学、のち中退。96年、有限会社オン・ザ・エッヂ設立。02年、旧ライブドアから営業権を取得。04年、社名を株式会社ライブドアに変更し、代表取締役SEOとなる。06年1月、証券取引法違反で逮捕。11年4月懲役2年6ヶ月の実刑判決が確定。13年3月に仮出所。著書に『拝金』ほか多数。