どこにどうお金を費やすか。それが合わないと一緒にいても楽しくない。
家庭をもったら無駄遣いはできないが、有意義な使い方はしたい。そう思う人と、とにかく倹約第一の人とは共に生活していくのは難しいかもしれない。

■ふだんは節約を心掛けているけれど
43歳。小学生の子どもが2人。これからまだまだ学費がかかるし、家のリフォームなどにも備えたい。そう思いながら生活しているフユコさん。結婚して12年になる、2歳年上の夫も同じように考えていると思い込んでいた。

「私がパートで得たお金はほとんど貯金に回しています。夫からの生活費も、けっこう倹約しながら使っていると思う。食材も安いときにまとめ買いして小分けにして冷凍庫へ。

常備菜を作って、夫のお弁当や朝食にしたり。ただ、子どもたちは食べ盛りだから、肉や魚などは必ず食卓に出します。
栄養不良じゃ意味がないので」

食べ足りない思いはさせたくない。だから食費は節約はするけど、大幅には減らさず、食事の質は維持するのがフユコさんの方針だ。

■夫は「肉は豚こまだけでいい」と言うが……
「ところが夫は、肉は豚こまだけでいいという考え方。確かに安いけど、鶏肉だって、時には牛肉だって食べたいじゃないですか。『肉なんて何でも同じだよ』という夫は、食にはあまり興味がないんですよね。

だから牛、豚、鶏の栄養素の違いを書き出して夫に渡しました。いろいろ食べたほうがいいってことを言い添えて。夫は嫌みかよと苦笑いしていましたけど」

食事に関しては口を挟まれたくないとフユコさんは感じている。一方で、衣服などはなるべく倹約したいから、いとこの子のお下がりをもらったりすることもある。

ラッキーなことに、いとこはかなりのお金持ち。二次使用ができるなら「洋服だって喜ぶよ」と言ったら、いとこも、フユコさんの子どもたちも素直に喜んでくれた。

「でも夫はそういうところには見栄を張りたがる。
近所の人が何を言うか分からないって。近所の人にお下がりだなんて分かるはずもないし、分かったところで子どもたちが嫌がっているわけじゃないからかまわないんですけどね。そういう見栄の張り方が私には理解できなくて……」

では文句を言う夫が子どもの洋服を買ってくるのかといえば、そんなことはない。

■旅行先ではケチらないでほしい
フユコさんが一番嫌なのは、「旅先で夫がケチること」だそう。

「この夏も、子どもたちを連れて、そう遠くない海辺に旅行したんです。子どもたちは海を満喫、民宿の庭でスイカ割りをしたり、民宿の近所の子どもたちと遊んだりして大はしゃぎでした。

民宿では通常の食事に加えて、私はふだんは食べられないようなエビの刺身などを頼んでおいたんですが、あとから夫が『なんであんな高いものを』と文句を言い出した。

子どもたちはまだ小さいのだから高級品を食べさせなくていいと夫はいつも言うんですが、私はめったに食べられないものだからこそ、旅先の地のものを少しでも安く食べられればいい、子どもといっても小学生だから味は分かるし覚えているものだよと言いましたが、夫は納得していなかったみたい」

最終日の午後遅く、あとは帰宅というところで、何かおいしいものを食べようとフユコさんは提案した。

■「もったいない」を繰り返す夫
地元で有名なイタリアンの店、和食、中華とフユコさんが挙げていくと、子どもたちはイタリアンがいいという。

「夫は帰ってから食べればいいと言っていましたが、昼食が軽かったので私も空腹だったんですよ。そこでイタリアンに決めました。

夫は『みんなパスタでいいよな』と一番値段の安いパスタを頼もうとしたけど、せっかく来たんだからおいしいもの、好きなものを食べようと私は強く言いました。
ついでにおいしそうなローストビーフも頼んで。

夫はぶすっとした顔をして黙りこくってましたが、子どもたちと私は盛り上がって……。お店の人も明るくて、勧められたものを数点、頼んで楽しみました。最後はデザートもサービスで大盛りにしてくれて。旅先ってそういうコミュニケーションも楽しいじゃないですか」

フユコさんはこれ見よがしに、自分のカードを使って支払いをした。あなたのお金は使ってないからという意思表示だ。

「帰宅してから言ったんですよ。旅先でケチるのはやめてほしいと。別にものすごくぜいたくをしたわけじゃない、ほんの数皿、増えただけだし、あとは日常で節約すれば何とかなる話。

旅先だからこそ、その土地でしか食べられないものとか、その土地でしか経験できないこととか、子どもたちには提供してやりたいと」

夫はそれでも「もったいない」と繰り返した。旅先だからこそもったいないのだという。そのあたりは「相いれないですね。
来年からはどうなることやら」とフユコさんは眉をひそめた。

▼亀山 早苗プロフィール明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
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