子どもがほしくない20代が今増えているといいます。彼らはなぜ子どもをほしがらないのか、今彼らが置かれている状況とはどんなものなのでしょうか。
厚生労働省が発表した「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況」によれば、出生数は9年連続で過去最少を更新し、2024年に初めて70万人を割り込みました。

特に日本の場合、出産は結婚と強い結びつきがあります。婚外子(=法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子ども)が50%近いフランスをはじめ、欧米では結婚と出産は分けて考えられます。

しかし日本の場合、婚外子はわずか2.5%(2023年)程度にとどまっており、結婚と出産の間には相関関係があります。したがって近年の晩婚化、非婚化の影響がそのまま少子化に影響していると考えられます。

株式会社マイナビが2025年4月に、20代から50代の子どもがいない未婚の男女約3000人を対象に行った調査「マイナビ ライフキャリア実態調査 2025年版」でも、その傾向が読み取れます。

例えば「自分にとって結婚は必要だと思う」(必要だと思う+やや必要だと思う)と回答した20代の割合は、2022年では58.6%だったのに対し、2025年は48.0%と、10%以上減少しています。

そして、「子どもが欲しいと思うか」について「子どもが欲しい」(欲しい+できれば欲しい)と回答した20代の割合は、2022年で48.1%、2025年では39.7%と8.4ポイント減っており、結婚観の変化と似たカーブを描いています。

また、この調査では「子どもが欲しくない理由」も尋ねており、20代の答えた理由は多い順に下記のような結果になっています。

・「子どもを育てるのにお金がかかるから(41.4%)」
・「育てる自信がない(40.7%)」
・「未婚(パートナーがいない)だから(38.3%)」
・「子どもが生まれるのにお金がかかるから(36.2%)」

経済的な負担を懸念する声が強いようですが、実際にはどうなのでしょうか? 私の主宰する「恋人・夫婦仲相談所」に訪れる20代の皆さんにホンネを聞いてみました。

まずは、20代男性4人に話を聞きました(以下、全て仮名)。

■「将来に希望がない」アツシさんの場合(28歳・既婚)
「日本の将来に希望が持てないのが一番の理由です。
これからどんどん人口は減るし、高齢者ばかりになってわれわれの負担が増えるじゃないですか。今、すでに給料からいろいろ天引きされていますけど、自分たちが高齢になる前に絶対に健康保険も年金も破綻していると思います。

そうすると自己責任でお金をためなきゃいけないから、自分と嫁さんが生きていくだけで、きっと精いっぱい。子どもにお金をかけている余裕はないです。

ネットニュースにも子どもの体験格差とか悲しい記事が出てるし。自分の世代でも格差がすごいのに、子どもはもっと格差に苦しむのかなって。

今、勤めている会社だって、業績があまりよくなくて、いつ倒産するか分からない。どうやっても明るい未来は描けません。自分自身が『将来に希望がない』って思っているのに、勝手に子どもを作ってそんな暗い未来に送り出すのは、無責任じゃないかなって」

■「まだ20代だからなんとかなる」カイトさんの場合(25歳・未婚)
「もうね、子どもがほしいとかそんなこと以前に、俺みたいな派遣の低所得者はそもそも結婚できないっすよ。アプリでいろいろ出会いのチャンスがあっても、結局女性がチェックしているのは男性の年収でしょ? もうそれだけで、負け確定。

結婚している知り合いが、インスタとかで幸せそうな嫁や子どもとの写真をアップしてたりすると、マウントとられてる感があって、イラっとするけど、『お前にはもうない自由が俺にはあるぜ』って、思えばいいんすよ。まだ20代なんだから、なんとかなるっしょ」

■「稼いだお金は自分で使いたい」リュウジさんの場合(26歳・未婚)
「結婚も子どもも、はっきり言って必要を感じていません。
自分が稼いだお金は自分で全部使いたいです。僕の夢は高級車を買うことなんで、貯金しないといけないんです。今の若いやつはクルマをほしがらないって言われてるけど、僕は子どもより車ほしい。できればバイクも。

老後ですか? そりゃあ心配じゃないと言えばうそになりますが、今から老後のことを気にしてもしょうがない。だって、もしかしたら30代で地震で死んじゃうかもしれませんし。危ない感染症がまたやってくるかもです。とにかくお金をガッチリためておけば何とかなるんじゃないですか。

投資の動画も観てます。まだ金は増えてないけど。動画は無料でいろんなことを教えてくれる。AIが作った赤ちゃん癒し動画はかわいいから観るけど、実際の子育ては大変そう」

■「育休後の会社に居場所あるのかな」コウキさんの場合(29歳・既婚)
「妻も働いているので、結婚当初から家事を全部洗いだした上で、分担をしっかり決めて、家事時間が平等になるように頑張っています。
でも、僕の会社は定時で帰れる日なんてほとんどないので、今の状態での家事が結構しんどいです。

これで子どもができたら、きっと『育休ちゃんと取って!』って妻に怒られるでしょうが、今でも結構仕事がパンパンだし、育休なんて無理な気がします。そもそも育休をちゃんと取った社員って、うちにいるのかなあ。みんなせいぜい出産日とそのあと1日ぐらいしか休んでいない。

もっと子育てする夫婦にやさしい社会になれば、子どもがほしいと思えるようになる……かもです。でも休んだら降格されないのかな。育休後に居場所あるのかって、心配になりますよ」

次に、20代女性4人に話を聞きました(以下、全て仮名)。

■「夫婦で働いても稼げない」モモカさんの場合(27歳・既婚)
「『子どもはお金がかかる』ということ。これが最大の理由です。私は中学校から大学まで私立の学校に通わせてもらったし、習い事もスイミングと英語と補習塾に行っていました。子どもを作るなら、せめて私と同じレベルのことをしてあげたいと思うと、めちゃくちゃお金がかかります。そう思うと、うちの親ってすごい。


そのほかには歯並びも矯正したし。車の免許も取った。そういうお金も親が出してくれました。この辺は親がお金を払うべきだと思います。とにかく、産むならちゃんと全部ベストな環境を作ってあげたいのですが、そんなお金は夫婦で働いても稼げない。だから産まない……産めないかな」

■「夫が子どもをほしがらない」ハルナさんの場合(29歳・既婚)
「夫が子どもをほしがらない人です。プロポーズは『僕の人生に子どもは要らないと思っているけど、それでも結婚してくれる?』でした。私自身はすごく子どもがほしいというわけではなかったので、『彼がそれを希望するならあわせよう』と思いました。

30歳に近づいてきて、先に結婚した友人が出産ラッシュなのですが、『子どもが産まれて自分の時間がない』と嘆いていたり、『夫が子育てに対して全く他人ごとで、愛情もすっかり冷めた』とか言っているのを聞くと、なかなか大変そうだなと思います。

子どもを持つことで生き方がガラッと変わっている人が多いので、今の夫婦の関係や自分のライフスタイルを壊さないようにするには、子どもがいないことがいいと思えるようになりました。子どもをほしがらない夫と結婚をしてよかった、と思っています」

■「キャリアが中断してしまう」アヤネさんの場合(28歳・未婚)
「私の母はフルタイムの仕事を続けながら子育てをしていました。私と弟を産休・育休を使いながら、会社を辞めずに育て上げました。
当時は今ほど『男性の育児休暇取得』が騒がれていなかったので、父は育休を取ることもなく、子育てにはあまり関わっていなかったと思います。

そんなワンオペ育児の母の様子を見てきたので、結局、『仕事も家事も子育ても、全部女性がやるもの。働く女性だけが大変な思いをしている』という印象を持っています。

今の私の仕事はアジア出張が多いんですが、昔からやりたかった仕事でもあり、充実しています。たとえどんなに未来の夫や外部のベビーシッターがサポートしてくれても、子どもを産むのは私しかできませんし、その間、私のキャリアは中断します。中断から復帰してもすぐに出産前と同じ働き方をするのは、難しい。

そう考えると、子どもより自分のキャリアの方が私にとっては優先順位が高いです。結婚自体にもあまり興味がないし、マンション買って、一生シングルで過ごそうかな……と思う今日この頃です」

■「母親との関係がトラウマ」カレンさんの場合(27歳・未婚)
「私は中学生のとき、一時不登校になったことがあって。その時に母親との関係が圧倒的に悪くなりました。そのころちょうど母親が再婚したこともあり、学校でも家の中でも居場所がない状態で、私がこんなにつらいのに、うれしそうに再婚して、私にとっては何の関係もない男を家の中に引っ張り込んでる母を、『毒親』だと思って軽蔑していました。

結局、母はガンで50代であっけなくこの世を去ったのですが、『親子関係がうまく築けなかった』というのはずーっと私のトラウマです。だから仮に子どもができたとしても、母親として子どもとよい関係性を築けるかどうか不安しかありません。


『子どもが不登校などにならないように、きちんと育てないと』と思うと、それもプレッシャーです。だから、子どもはいらないという判断は揺るがないです。結婚は、子どもがほしくない人がいればすると思います」

実際の20代の方たちに話を伺ってみると、単純に経済的な理由だけでなく、価値観の多様化が背景にあることを感じました。

今回話を伺ったのは「子どもがほしくない人」たちでしたが、そういう人たちが一定数いることは、現代の社会ではむしろ自然な気がします。それよりも「子どもがほしいけれどできない、つくれない、もっと産みたいけど諦めた」という人をいかに減らしていけるかを考えていかないといけません。

<参考>
・「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況」(厚生労働省)
・「マイナビ ライフキャリア実態調査 2025年版」(株式会社マイナビ)

▼三松 真由美プロフィール男女関係に悩む1万3000名の女性会員が集うコミュニティを展開。セックスレス・ED・女性性機能に詳しく、性を通して男女関係を円滑にするメソッドを考案。講演、メディア出演、著書多数の恋愛・夫婦仲コメンテーター。執筆家。
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