そう思っている父親は、決して少数派ではありません。
実際、育休を取得する男性は年々増え、保育園の送迎や休日のワンオペ育児も、以前ほど珍しい光景ではなくなりました。
それでもなお、家庭内では「やっているつもりの父親」と「全く足りないと感じている母親」の間に溝が生まれてしまう……。このギャップはなぜ起きるのでしょうか。
一般社団法人 Daddy Support協会の理事であり、3児の父でもある中西さんは、こう話します。
「この問題は、どうしても『やる気があるかないか』『意識が高いか低いか』といった話にされがちなのですが、そこに原因を求めると夫婦関係がしんどくなると思います」
中西さんが指摘するのは、個人の姿勢ではなく、家事育児の“構造”そのもの。
「多くの家庭で起きているのは、役割のかみ合わなさなんですよね」
■家事育児は「共同経営」――パパが陥りがちな勘違い
父親の話を聞くと、よく出てくるのが「(妻に)言われたことはちゃんとやっている」という言葉です。ゴミ出しもしているし、食器洗いもする。お風呂だって頼まれれば入れる。それなのに、なぜ評価されないのか分からない――そんな戸惑いです。
「やっているのに認められない」と感じると、誰でも心が折れそうになります。しかし中西さんは、「『言われたことはやっている』という感覚自体は、決して悪いわけではありません」と前置きした上で、こう続けます。
「ただ、家事育児って、そもそも“言われてやる仕事”ではないですよね」
例えばミルク。「作って飲ませたら終わり」ではありません。
「こういう“前後の調整”まで含めて、ようやく1つの仕事なんです」
父親が一部分だけを担うと、その調整役は自動的に母親に回ります。中西さんはこれを、「母親が経営者で、父親が“よく働くアルバイト”になっている状態」と表現します。
「アルバイトって、与えられた仕事は一生懸命やるんです。でも、店全体をどう回すかまでは考えないですよね」
もちろん、父親が怠けているという意味ではありません。ただ、役割の設計がそうなってしまっている家庭が多いのです。家事育児を分担するとは、作業量を半分にすることではありません。“考える役割”を共有できているかどうかが、決定的な分かれ目になります。
■なぜ父親は孤立しやすいのか
父親の多くは、実は手探り状態で家事・育児をしています。しかし、その不安や迷いを口に出すことは、あまりありません。
「男性は、家庭の悩みを外に出しにくい傾向があると思います。
さらに、「身近にロールモデルがいないことも大きい」と、中西さんは言います。
「自分たちの父親世代は、家事・育児をやってこなかったケースが多いため、誰を参考にすればいいのかわからないのです」
加えて、子育て支援の場が、長年「母親前提」で設計されてきた影響もあります。支援センターや講座に行っても、参加者の多くは母親。そこにポツンと父親がいると、「自分は場違いなのではないか」と感じてしまう人も少なくありません。
近年は夫婦向け・父親向けの取り組みも増えつつありますが、まだ過渡期です。自治体や支援機関の側も、父親の立場や困りごとをどう捉えるか、アップデートしていく必要があります。
父親の孤立は、本人の性格や努力不足の問題ではありません。これまで社会や制度が「父親が子育てに関わること」を前提に作られてこなかった、その結果、関わろうとする父親が、今も迷いやすく、孤立しやすい状況が生まれているのです。
■夫婦のギャップ解消のスタートは「妊娠期」
夫婦の家事育児ギャップを減らす上で、意外と知られていないのが「妊娠期の重要性」です。なかでも妊娠中期は、中西さんが「最大の対話チャンス」と呼ぶタイミングです。
「出産後は、とにかく余裕がありません。睡眠不足で体もきつい。
だからこそ、余白のある妊娠期に話すことが大切だといいます。妊婦健診に同行して妻の体調の変化を知ること。育休を取るかどうかだけでなく、復職後の働き方や、家事・育児をどう回していくかまで言葉にしておくこと。
この時期に“家庭をどう経営するか”をすり合わせておくと、産後のスタートラインが全く違ってきます。その上で、産後は、時期によって役割の重心を切り分けることが大切です。
中西さんはこうアドバイスします。
「産後しばらくは母体の回復を最優先にし、父親は支援役に徹する。その後、生活が落ち着いてきた段階で、育児・家事・仕事をどう回していくかを再設計していくとよいでしょう」
■家事育児ギャップを減らす5つのヒント
中西さんは、家事育児のギャップを考える際、「まずは“誰もが思い込み(バイアス)を持っている”という前提に立つことが大切」だと話します。
「自分は正しくて、相手がズレている」と考え始めると、対話はそこで止まってしまいます。まずは、自分たちがどんな前提や思い込みを持っているのかを“知って共有していく”ことが、ギャップ解消の出発点になります。
その上で中西さんが挙げるのが、日常の中で実践できる次の5つのヒントです。
▼1. 家事育児は「切り出しタスク」ではなく「流れ」で考える家事育児を巡るすれ違いの多くは、「どこからどこまでが1つの仕事なのか」という認識の違いから生まれます。
▼2. 単独育児は「3時間」から段階的に経験する単独育児は経験値がものを言うため、最初から高いハードルを設定する必要はありません。まずは3時間程度、次に半日、慣れてきたら夜またぎ、そして1日、2日へ。段階的に経験を積むことで、子どもの生活リズムや突発的なトラブルにも対応できるようになります。
この“段階制”は、父親の自信につながるだけでなく、母親側の安心感にも直結します。任せても大丈夫という信頼は、時間と経験の積み重ねからしか生まれません。
▼3. 「手伝おうか?」を「今日は自分が回すね」に言い換える一見、気遣いの言葉に聞こえる「手伝おうか?」。しかしこの一言が、母親のモヤモヤの原因になることがあります。
「“手伝う”って、主体はあくまで相手なんですよね」と中西さん。家事育児の責任者は母親で、父親は補助的立場だという前提が含まれてしまいます。代わりに、「今日は自分が回すね」「ここから先は任せて」と伝える。
▼4. 完璧を目指さず「生きていければOK」を合言葉にする家事育児の分担が進まない理由の1つに、理想の水準が高すぎるという問題があります。きれいに畳まれた洗濯物、毎食手作りの食事、整った部屋。それを毎日維持するのは、誰にとっても大変です。
「『洗濯物は畳まなくても死なない』が、我が家の合言葉です」と、中西さんは笑います。完璧を目指すよりも、「今日はこれで回ったからOK」と基準を下げることがうまくいくコツだそう。
▼5. 夫婦の「外」にある「別のやり方」に触れてみる夫婦だけで話し合っていると、どうしても行き詰まってしまうことがあります。そんなときに有効なのが、知り合いなどの家庭を訪問し、その家庭のやり方に触れてみること。
「この家ではパパが料理担当なんだ」「家事代行をうまく使っているんだ」など具体的な事例を知ることで、「じゃあ、うちはどうしたい?」と柔軟に考え直すきっかけが生まれます。
家事・育児のギャップは、一方の努力や我慢で埋めるものではありません。大切なのは、「どう分担するか」以前に、どう回していくかを一緒に考えること。役割、言葉、タイミング、そして前提となる思い込みを、少しずつすり合わせていくことで、家事・育児は“手伝い合い”から“共同経営”へと変わっていきます。
「完璧じゃなくていい。今日が回ればOK」そんな合意を重ねながら、夫婦が同じチームとして並んで立てたとき、父親の家事・育児参加は、無理なく、自然に増えていくはずです。
▼中西信介さんプロフィール早稲田大学卒業後、国家公務員・豆腐の引き売り士などを経て、都内を中心に保育園を運営する企業に勤務。3度(合計3年)の育休経験を経て、父親育児の孤立、課題に関心を持つようになり、地元・東京都立川市で「パパママ子育て応援部Hiタッチ!!」を運営する他、育休&共働きコミュニティikumadoの仲間と『なぜパパは10日間の育休が取れないのか』を執筆。NPO法人manmaの「家族留学プログラム」の受け入れ家庭。東京都の育業(育休の愛称)の名付け親でもある。









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