総務省が発表した2024年の家計調査によると、二人以上の世帯における月平均のファッションにかける費用(被服及び履物)は9985円だという。およそ1万円がファッション代になっているわけだ。


■そんな余裕はない
「うちは夫婦二人暮らしですが、洋服なんてもう何カ月も買ってませんね、二人とも」

生活が苦しいと訴えているのはミズキさん(42歳)だ。2年前、職場で知り合って友達関係を続けていた3歳年上の男性と結婚した。

「うちは私が若いころから母が病気がちだったんです。大学を卒業して、とりあえずは就職できたんですが、仕事が面白くなってきた5年後、父が病気で急逝して。ちょうど弟が交通事故にあったこともあり、私が母と弟の面倒を見なければならなくなった。仕事を辞めたくなかったのですが、私が動かないと病人たちのケアが進まない。会社を休みがちで申し訳なくて、半年後、ついに辞めました」

いくばくかの貯金で食いつないでいたが、その後、弟が亡くなり、母との二人暮らしになった。ミズキさんは早朝と昼間のアルバイトを掛け持ちしたが、暮らしは楽にならず、ついに家を売却し、アパート暮らしをすることに。

「土地が借地だったからたいしたお金にはならなかった。それでもないよりはマシという状況。もうちょっといろいろな人に相談すればよかったんですが、常に切羽詰まっていたから安易に売ってしまったんですよね」

■正社員の道を探ったものの
アパート暮らしが合わなかったのか、無理に越したのがいけなかったのか、母は彼女が35歳のときに亡くなった。

「家族のためにケアばかりする人生だったから、やっと一人になったような気もしたし、むしろやるべきことがなくなって自分が無価値にも思ったし。
それでも生きていかなくてはいけないので、なんとか正社員の道を探りました」

ところが仕事を辞めて8年もたっていたし、アルバイトばかりの人生に採用者は冷たかった。必死に働くつもりだと訴えても、面接にさえこぎつけないことも多かった。

ハローワークに通い詰め、ようやく契約社員としての働き口を見つけた。

■一人より二人と思ったが
職場で出会った3歳年上の彼は、仕事ができるタイプに見えた。20代のころ、職場に憧れの先輩がいたのだが、その人に面差しが似ていた。

「同じ部署だったのでいろいろ話すようになりました。彼は正社員だと思っていたけど、私と同じ契約社員だった。それでも部署の人たちと居酒屋に行くときは、よく隣に座って話し込みました。恋愛感情というよりは友情でしたね。正社員の人たちは二次会でカラオケとか行ってましたが、私は節約のために一次会で帰りました。彼もそうだった」

そんなことが続いて、二人はだんだんと親しくなっていった。数年後、彼から「実はずっと好きだった」と言われて、ミズキさんにも恋愛感情が生まれた。
彼自身も、家族のケアばかりしていた人生だった。今は親が残した持ち家に住んでいると聞いて、「今より暮らしが楽になるかもと、少しだけ期待してしまったの」と振り返る。

そして40歳のときに結婚。二人とも子どもは望まなかった。一人より二人、少しでも余裕のある生活がほしかった。だが結婚したとたん、彼が契約満了となってしまった。

「彼は夜勤のバイトをするようになりました。私は家賃が必要なくなったのですが、彼の持ち家はかなり古くて、雨漏りもする。地域のツテでなんとか安く直してもらいましたが、持ち家は維持費がかかります。夜勤のバイトになった彼は心身ともに疲弊するようになって、新婚なのに全然、楽しいとは思えない」

■なんとか這い上がりたい
なんとか生活はしていける。だが、たまには映画館で映画を観たいと思っても怯んでしまう。ネット配信のドラマや映画を楽しむのがせいぜいだ。


「ぜいたくはできないけど、月に1度くらいは外食しようと安い店を探し出して、なんとか二人で楽しめることを探し出して2年たちました。ただ、“一人より二人”という考え方は間違っていたのかもしれないと最近、思うようになった。私の家事負担の方が重いし、彼は両親の墓参りとか遠い親戚との付き合いなどをけっこう大事にするタイプで、費用もそれなりにかかる。

生活費を完全に分ければよかったんですが、今は彼のための費用が私の収入に食い込んでくることもある。それなら一人でボロアパートに暮らしていた方がマシだったかもと、ふと思うんですよね」

一人の寂しさはないが、二人になることでより家計が圧迫される。いつもお金のことばかり考えているような生活は心身によくないとミズキさんは「情けない話ですけど」と少し笑った。

「せめてどちらかが正社員になれればと思うけど、若いころにチャンスをつかめないと2度と浮上できないのかもしれない。投資などで儲けるくらい才覚があればよかったんでしょうけど。ただまじめに働いているだけでは這い上がれないんですよね」

それでも、あと何十年生きるか分からないけど、なんとかしなくちゃ、なんとか這い上がりたいと彼女は言った。

<参考>
・「家計調査年報(家計収支編)2024年(令和6年)」(総務省)
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