今の夫婦関係で起きている変化は「修復の放棄」です。かつては不満があればぶつかり合い、雨降って地固まるというプロセスがありましたが、現代は衝突を避けるために期待も干渉もやめてしまう夫婦が急増しています。


「波風が立たない=円満」だと思い込んでいる間に、夫婦の関係は静かに、しかし修復不可能なレベルまで壊れているかもしれません。36年の現場経験から見える「令和の夫婦の危ういリアル」を解説します。

■「沈黙」は安定ではなく、妻からのストライキ
最近の相談で目立つのは、特別な問題はないのに「夫婦として終わっている」と感じているケースです。かつての「仮面夫婦」のように、メモだけで会話を済ませたり、顔を合わせないよう避けて生活したりする人々が増えています。

特に危ういのが、夫側が「妻がうるさく言わなくなって楽になった」と誤解しているパターンです。妻が文句を言わなくなったのは、家庭が安定したからではありません。改善を期待するのをやめ、離婚の決意を固めた「沈黙のストライキ」である可能性が高いのです。

不満をぶつけてくるうちは、まだ関係を直そうとするエネルギーが残っています。しかし、感情が動かなくなり、返事もしない、アドバイスもしないという段階まで進むと、それはもはや“夫婦関係の死”を意味します。

男性側はこのサインを「大人の対応」と履き違えず、手遅れになる前に現状の深刻さに気づかなければなりません。

■昭和的な価値観がもたらすズレ
現代の夫婦を苦しめているもう一つの要因は、社会の激変に「夫婦の対話」が追いついていないことです。昭和的な「察して欲しい」文化と、現代の「言語化」を求める文化が家庭内で混在し、大きなズレを生んでいます。


また、経済的な不安による「こんなはずじゃなかった」という後悔が、そのまま相手へのネガティブな感情に置き換わってしまう傾向も強く感じます。

大切なのは、価値観が違って当たり前だと認め、相手の世界を「探検」するような気持ちで歩み寄ること。AIには代行できない、人間同士の温かい言葉のキャッチボールをもう一度学び直すことが、関係再生の唯一の道となります。

▼岡野 あつこプロフィール夫婦問題研究家、パートナーシップアドバイザー、NPO日本家族問題相談連盟理事長。立命館大学産業社会学部卒業、立教大学大学院 21世紀社会デザイン研究科修了。自らの離婚経験を生かし、離婚カウンセリングという前人未踏の分野を確立。32年間で相談件数3万8000件以上、2200人以上の離婚カウンセラーを創出。著書多数。近著に『夫婦がベストパートナーに変わる77の魔法』。
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