「かわいそうだから」という愛情だけでペットを救えるのか。殺処分を待つ猫たちを引き取った善意が、いつしか飼い主を経済的な破滅へと追い込んでいく……。
多頭飼いがもたらす負担と、回避すべき落とし穴とは。

『人はこんなことで破産してしまうのか! 推し活、ペット、不倫、介護、投資……普通の人でもハマる落とし穴』(永峰英太郎著)では、不運や誤算から多額の負債を抱える実態についてお伝えしています。

今回は本書から一部抜粋し、猫を飼って破産しかけた事例について紹介します。

■猫好きが陥った「多頭飼い」の想定外
東京都杉並区に住む書籍編集者の一人暮らしの女性は、大の猫好き。2匹の猫とともに暮らしていた。今、問題になっている「多頭飼い」については、猫にとっても、自分にとっても、あまりにリスクが高すぎると、飼うならば2匹までと決めていた。

ところが、である。

佐賀県に住む親が他界し、そこで飼っていた7匹の猫が、このままだと保健所に送られてしまう事態となった。

猫を愛してやまない彼女にとって、それはとても受け入れられるものではなかった。その一方で、当然、リスクについても考えた。特に悩んだのは、お金のことであった。

猫を飼うには、健康体であっても、それなりの費用がかかる。


女性が飼っていた猫は、1匹で年間15万円程度かかっていた。9匹となると、単純計算で年間135万円である。

とはいえ、保健所に送られ、殺処分となるのを見過ごすわけにはいかなかった。彼女は「私が稼げばいい!」と、7匹の猫を引き取ることにした。

■高齢猫を襲う病気とケガの連鎖
女性がもともと飼っていた2匹の猫はともに2歳と若く、病気一つしたことがなかった。しかし、親元にいた7匹の猫の平均年齢は、10歳を超えていた。一番上は17歳であった。

リスクヘッジのためにペット保険に入ろうと思ったが、11歳以上になると新規契約はできないと断られてしまう。

ペットフードはシニア向けの高額なものを与えるなど、健康には気を配ったが、想定外のことが次々と起こり始めた。

まず、1匹の猫が釘(くぎ)を誤飲してしまい、開腹手術をすることになり、22万円の費用がかかった。その猫はその後、膀胱結石を患い、さらに15万円の出費となった。

狭い家に9匹の猫が暮らしているため、ストレスで暴れる猫も出てきた。
先住の猫と新参者の猫の間でケンカも絶えず、それらが原因で、2匹が骨折してしまう。骨を手術でつなげる必要があり、計60万円もかかってしまった。

また外出時にはエアコンをつけっぱなしにするため、電気代もかなり増加した。

こうして、9匹と暮らし始めた最初の年、猫にかかった費用は300万円を超えた。

猫は、年々老いていく。その後も糖尿病になったり、乳腺腫瘍になったりと、9匹の猫のうち常に数匹は何らかの病気を患っている状況となった。

そしてもう一つ、予想外のことが起こってしまう。

■一生面倒を見るための経済的覚悟
お金の工面や猫の世話などで、女性自身が疲れて、精神的に病んでしまったのだ。会社も休みがちになったが、それでも猫には愛情を注ぎ込んだ。

現時点では何とかなっている。しかし、もうすぐ貯金はゼロになり、親の遺産の500万円も、数年で使い果たすだろう。

今はまだ、借金はしていないが、このまま9匹の猫を飼い続ければ、遅かれ早かれ、消費者金融に手を出すことは確実だ。


そんなとき、ふと「そろそろ1匹くらい寿命が来ても……」などと、口には出せないような考えが頭をかすめた。そんな自分に嫌気がさしつつも、解決の糸口が見いだせないままでいる。

■破産しないために
まず大前提として、猫や犬を飼えば、当たり前だが飼育費用がかかる。ペット保険を扱うアニコム損害保険の調査(2023年)によると、年間の費用は犬が36万円、猫が16万円となっている。

この費用は、ペットが病気になることで、さらに上乗せされる。「うちの猫は健康だ」と思っていても、この女性の猫のように、突然、糖尿病になったりするものなのだ。

そして、忘れてはならないのは、ペットは一度飼ったら、一生面倒を見るという点だ。現在、猫は20歳まで生きることも、珍しくはない。

20歳まで病気一つしなくても、320万円の費用がかかるのだ。病気を患えば、さらに出費は増える。

こうした現実をしっかり理解し、その上で、飼うかどうかの選択をすることが、何よりも大切になってくる。

■ポイント
・ペットは、意外に飼育費用が高い!
・一度飼ったら、一生面倒を見る必要がある
・多頭飼いは、相当の覚悟を持たないといけない

永峰 英太郎(ながみね・えいたろう)プロフィール
1969年、東京生まれ。
明治大学政治経済学部卒業。業界紙記者、夕刊紙記者、出版社勤務を経て、フリー。企業ルポ、人物ルポなどを得意とする。主な著書に『日本の職人技』『「農業」という生き方』(アスキー新書)、『カメラど素人が、プロのカメラマンに撮影のテクニックを教わってきました。』(技術評論社)などがある。
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